電子取引データの保存方法や保存環境については、法令が定める事柄だけではなく、別段の定めがない要素についても具体的に把握しておくと、スムーズに準備を進める助けになる。実務で気を付けたいポイントは。
国税庁の「電子帳簿保存法一問一答」(Q&A)には、「電子取引」におけるデータ保存の法解釈から実務で直面しがちな疑問点まで、詳細にまとまっている。本稿は2022年6月に公開された改訂版のQ&A(電子取引関係)に基づき、電子取引データの「保存環境」に関する要件と、実務で気を付けたいポイントを解説する。
電子取引データ保存環境の要件については、以下のような特徴がある。
利用中のシステムが電磁的記録の検索要件を満たしていない場合、システム改修ではなく何らかの外部機能で補って解決してもよい。ただしどのような検索機能を利用する場合でも、原則として「一課税期間」(1年間)を通じて検索できる状態になっていなければならない点に注意が必要だ。
バックアップデータの保存は要件に含まれていない。しかしデジタルデータは「消滅」「記録状態の劣化」というリスクが常にあることを考慮すると、保存期間中の可視性を確保するためにバックアップデータを保存するのが望ましい。
電磁的記録を保存する場所については特に国内に限定するルールはない。ディスプレイの画面や書面に速やかに出力できるのであれば、クラウドサービスや海外のサーバを利用して保管することは問題ない。
電子的に受け取った請求書や領収書などの国税関係書類は原則としてデータのまま保存しなければならない。その際、保存方法の原則的な要件として、真実性確保の観点から以下のいずれかを満たす必要がある。この点は連載第1回「2022年改正電子帳簿保存法を改正前と比較、『4つの変化』とインパクト」でも解説しているので、併せて参照してほしい。
取引情報をデータとして保存する場合に考えられる保存方法には幾つかの類型がある。具体的には以下の通りだ。クラウドサービスを利用して請求書を受け取っている場合に、確認のためメールでも同一の請求書が届いた場合は、どちらかのデータを保存すれば問題ない。
次回は、実務で見落としやすい状況を例に挙げ、電子取引データの具体的な保存方法を考察する。
本連載は、会計とIT領域の豊富な経験を持つ公認会計士が、2022年1月施行の改正電子帳簿保存法の要点を解説する。「電子取引のデータ保存義務付け」など実務に影響する大きな改正を踏まえて、書面ベースの経理業務からペーパーレスを効率的に進める方法や、必要となる中堅・中小企業向けシステム選定と運用のポイントを紹介する。
公認会計士、公認情報システム監査人(CISA)。監査法人にて会計監査や連結会計業務支援、ITコンサルティング会社にてITを活用した業務改革支援に従事し2007年に独立。「経営に貢献するITとは?」というテーマをそのキャリアの中で一貫して追求し、公認会計士としての専門的知識と会計、IT領域の豊富な経験を生かした支援業務に従事。ベンチャー企業の社外役員としても多くの関与実績があり、コーポレートガバナンスの知識・経験も豊富。著書に『1冊でわかる!経理のテレワーク』(中央経済社)『ITエンジニアとして生き残るための会計の知識』(日経BP)など。
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