「顧客と直接応対する業務が膨大にある企業ほど、RPAの導入効果が期待できる」とRPAベンダーは口をそろえる。RPAの導入が大きな影響を及ぼした業界の例を紹介する。
RPAベンダーPegasystemsのCTO(最高技術責任者)兼製品戦略・市場担当バイスプレジデントであるドン・シュアマン氏によると、近年は幅広い業種がRPA(ロボティックプロセスオートメーション)に関心を寄せている。特にバックオフィスで膨大な業務を抱えていて、単純作業の効率化を求めている組織ほどRPAへの関心が高いという。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や、世界経済の不安な先行きの影響を受けて、この動向は加速しているとみられる。
「さまざまな顧客と直接応対する業務がある企業は、RPAで大きなメリットを得ることができる」とシュアマン氏は説明する。例えば小売業、サプライチェーン管理、政府機関、通信事業者、保険会社などだ。
結局のところRPAが大きな影響を及ぼすのは、幅広い業務プロセス改革の一環としてRPAを使用するときだ。例えばワークフローの自動化、人工知能(AI)技術による意思決定支援などの技術をRPAに組み合わせることで、反復作業を自動化するだけでなく、顧客応対のプロセス全体を効率化できる。「そうした技術に加えてローコード開発(最小限のソースコード記述による開発)ツールを用意すれば、迅速に成果を達成するだけでなく、将来にわたって拡張性と保守性を確保することもできる」(シュアマン氏)
RPAベンダーLaiyeの欧州・中東・アフリカ(EMEA)担当ゼネラルマネジャーであるニール・パーカー氏も、シュアマン氏と同意見だ。人手不足もあってサービス品質の維持に苦労している旅行業や小売業など、複数の業界でRPAの導入が広がる様子を、同氏は見てきた。
空港では人手不足で管理業務に混乱が生じている。「手荷物管理の単純作業を自動化すれば、問題は簡単に解決できる」とパーカー氏は指摘する。医療業界も同様だ。看護師や医師の時間は、書類を処理したり、同じ問い合わせに何百回も答えたりするのに費やすには、あまりにも貴重だ。
小売業者は、チャットbotの技術で「オンライン販売を促進する魅力的な対話型アシスタント」を導入することで、「インテリジェントオートメーション」(AI技術を用いた高度な業務自動化)のメリットを享受できるようになる。「RPAがあれば、返品の問い合わせを効率的に処理して、顧客の購買体験全体をよりシンプルにできる」とパーカー氏は付け加える。つまずきそうな箇所を減らし、顧客が自信を持ってオンライン購入のプロセスを完了できるようにする――この取り組みはプロセス改善の課題だけでなく、価格設定や企業文化の課題にも通じる話だ。
第4回はRPAの限界と、「持続可能な自動化」を構築するために必要な要素について解説する。
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