SSDはなぜ「熱」で遅くなるのか? その“仕組み”はこれだSSD「オーバーヒート」の原因と対策【第3回】

過剰な発熱である「オーバーヒート」により、SSDの性能が悪化することがあるのはなぜなのか。その仕組みを理解するためには、SSDの“中身”を知る必要があるという。どういうことなのか。具体的な仕組みとは。

2023年04月02日 10時30分 公開
[Rick WangTechTarget]

関連キーワード

SSD | 半導体ストレージ


 過剰に発熱する「オーバーヒート」が発生すると、データ読み書き速度や耐久性といったSSDの性能を悪化させる恐れがある。そもそもオーバーヒートは、なぜSSDの性能に影響を及ぼすのか。その仕組みを理解するには、SSDがどのようにデータを保存し、保護しているのかを理解する必要がある。

「熱」でSSDが遅くなる“仕組み”はこれだ

 SSDを構成するNAND型フラッシュメモリは、内部のメモリセル(データを保存する最小単位の要素)に、電荷(物体が帯びている電気量)としてデータを保存する。メモリセル内で、電荷のもととなる電子を蓄えるのが、メモリセルごとにある電荷保持領域だ。

 電荷保持領域には、大きく分けて多結晶シリコンの層である「浮遊ゲート」(フローティングゲート)と、シリコン窒化膜の層である「チャージトラップ」(電荷捕獲)膜がある。NAND型フラッシュメモリは、こうした電荷保持領域に電子を蓄えたり、放出したりして電荷を変化させることで、データの書き込みと消去を実現する。

 オーバーヒートは、電荷保持領域内にある電子のエネルギーを増大させる。電子のエネルギーが大きくなると、電荷保持領域から電子が逃げやすくなる。そのためビット単位でデータに誤りが生じる「ビットエラー」の発生頻度が高くなり、誤り訂正符号による訂正が不可能な程度になることがある。

意図的に性能を落としてSSDを守る「サーマルスロットリング」

 SSDベンダー各社は、オーバーヒートによるデータ保持問題の発生を回避するために、発熱を抑制する「サーマルスロットリング」という機構を考案。コンピュータとの接続制御を担う「SSDコントローラー」のファームウェアに広く実装している。NAND型フラッシュメモリが設計上の最高温度(コンシューマー向けの場合は70℃程度)に達すると、SSDはサーマルスロットリングを機能させ、NAND型フラッシュメモリの冷却を可能にするために性能を低下させる。

 サーマルスロットリングにより、オーバーヒートの発生を抑制できるものの、性能の低下によりユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー経験価値)が損なわれてしまう。設計が優れたサーマルスロットリングは、冷却効果を確保しつつ、性能低下を最小限に抑えたSSDを実現する。


 次回は、SSDの主な冷却方法を整理する。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

空冷だけではなぜ不十分? データセンターの熱負荷対策をどうする

CPUやGPUの性能向上に伴い、データセンターでは今、発熱量の増加にどう対応するかが課題となっている。特に高密度なサーバ環境では、従来のファンやヒートシンクに頼るだけでは熱管理が難しい。こうした中、企業が採用すべき手段とは?

製品資料 Dropbox Japan株式会社

ファイルサーバをアウトソーシング、「クラウドストレージサービス」の実力

中堅・中小企業の中には、IT担当者が社内に1~3人しかいないという企業も少なくない。そのような状況でも幅広い業務に対応しなければならないIT担当者の負担を減らす上では、ファイルサーバをアウトソーシングすることも有効だ。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。