過剰な発熱である「オーバーヒート」により、SSDの性能が悪化することがあるのはなぜなのか。その仕組みを理解するためには、SSDの“中身”を知る必要があるという。どういうことなのか。具体的な仕組みとは。
過剰に発熱する「オーバーヒート」が発生すると、データ読み書き速度や耐久性といったSSDの性能を悪化させる恐れがある。そもそもオーバーヒートは、なぜSSDの性能に影響を及ぼすのか。その仕組みを理解するには、SSDがどのようにデータを保存し、保護しているのかを理解する必要がある。
SSDを構成するNAND型フラッシュメモリは、内部のメモリセル(データを保存する最小単位の要素)に、電荷(物体が帯びている電気量)としてデータを保存する。メモリセル内で、電荷のもととなる電子を蓄えるのが、メモリセルごとにある電荷保持領域だ。
電荷保持領域には、大きく分けて多結晶シリコンの層である「浮遊ゲート」(フローティングゲート)と、シリコン窒化膜の層である「チャージトラップ」(電荷捕獲)膜がある。NAND型フラッシュメモリは、こうした電荷保持領域に電子を蓄えたり、放出したりして電荷を変化させることで、データの書き込みと消去を実現する。
オーバーヒートは、電荷保持領域内にある電子のエネルギーを増大させる。電子のエネルギーが大きくなると、電荷保持領域から電子が逃げやすくなる。そのためビット単位でデータに誤りが生じる「ビットエラー」の発生頻度が高くなり、誤り訂正符号による訂正が不可能な程度になることがある。
SSDベンダー各社は、オーバーヒートによるデータ保持問題の発生を回避するために、発熱を抑制する「サーマルスロットリング」という機構を考案。コンピュータとの接続制御を担う「SSDコントローラー」のファームウェアに広く実装している。NAND型フラッシュメモリが設計上の最高温度(コンシューマー向けの場合は70℃程度)に達すると、SSDはサーマルスロットリングを機能させ、NAND型フラッシュメモリの冷却を可能にするために性能を低下させる。
サーマルスロットリングにより、オーバーヒートの発生を抑制できるものの、性能の低下によりユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー経験価値)が損なわれてしまう。設計が優れたサーマルスロットリングは、冷却効果を確保しつつ、性能低下を最小限に抑えたSSDを実現する。
次回は、SSDの主な冷却方法を整理する。
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