HDDは長年、強力なライバルであるSSDと戦ってきたが、近年は“共存”を目指す動きが活発だ。主要ベンダーは技術の組み合わせの可能性をどうみて、何に取り組んでいるのか。
2021年、保存容量20TBのHDDが登場し、HDD市場に新たな刺激を与えている。それと同時に、ストレージベンダーはHDDとSSDを併用する取り組みに注力する。20TBのHDDのインパクトを探った第2回「HDDがこれからも売れ続ける“これだけの根拠”」に続き、第3回となる本稿は「HDD×SSD」の可能性を考える。
HDDベンダーは過去に、IOPS(1秒当たりのI/O数、I/Oはデータの入出力)やデータ転送速度でSSDと対抗してきた。だが、HDDベンダーはSSDとの競争というよりも、SSDと共存する方法を模索するようになった。専門家は、HDDとSSDとの“コラボレーション”についてどうみているのか。
ストレージベンダーSeagate TechnologyのCTO(最高技術責任者)室シニアディレクターのコリン・プレスリー氏 ストレージのパフォーマンス(IOPSやデータ転送速度)は、どのような使い方をするのかに左右される。複数のデバイスや技術を組み合わせることは、とてもいいことだ。HDDのパフォーマンスの大部分が機械的要因に左右される。それは変えようがない。実際、3.5型のHDDのパフォーマンスは、2000年代初頭からほとんど変化していない。
当社が取り組んできたのは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やキャッシュメモリを活用して書き込みのパフォーマンスの向上を図ることだ。だが実際にはHDDのIOPS数に大きな影響は出ない。HDDのIOPSは、データの読み取りや書き込みを実施する際のアクチュエータ(電気信号を物理的な動きに変換する仕組み)に依存するためだ。
データセンターや複数のクラウドサービスを組み合わせた大規模システムの場合、ユーザー企業は複数のストレージ製品を使用する。そのため1TB当たりのIOPSが重要だ。これは、1人のユーザーが1つのデバイスを使用するノートPCとは違う。
ストレージベンダーWestern Digitalのバイスプレジデント(HDD事業部門担当)兼ゼネラルマネジャーのアシュレイ・ゴラクポワラ氏 当社のほとんどの顧客は、遅延を大幅に減らすといった究極のパフォーマンスをHDDに求めているわけではない。ストレージインタフェース規格「SAS」(Serial Attached SCSI)を使用して「SATA」(Serial ATA)の倍のデータ転送速度を追求する企業もある。一方で、SSDには接続プロトコル「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)やシリアルインタフェース「PCI Express」があり、データをメインメモリやプロセッサに高速転送できる。当社の顧客は、常時使用し、高パフォーマンスが求められるデータを保存するためにSSDを使用することがある。
調査会社IDCのリサーチバイスプレジデント(インフラシステム、プラットフォームおよびテクノロジーグループ部門)、エリック・バーガナー氏 I/O要求を出すたびに20ミリ秒がかかるようなアプリケーションの場合はHDDで問題ない。5~20ミリ秒の範囲内のどこかでは応答できる。80TBのストレージを構築する際、HDDはSSDより安価だ。どのような用途であれ、もう少しパフォーマンスが必要な場合はSSDの方が適する。
IDCのリサーチディレクター(HDDおよびストレージテクノロジー部門)、エドワード・バーンズ氏 企業にとってHDDの読み書き速度はそれほど問題ではない。遅延の影響を受けやすいアプリケーションの場合は、基本的にHDDではなく、SSDが最適だ。
第4回は、2.5型HDDの強みやニーズを考える。
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