無線LAN「IEEE 802.11」や「Wi-Fi」が人気を呼んだ理由“大成功した無線通信”の歴史と今後【第3回】

「IEEE 802.11」や「Wi-Fi」として広く知られる無線LAN。その黎明(れいめい)期、ベンダーは無線LANを広く普及させるために“ある決断”をした。それは何だったのか。

2023年05月03日 05時00分 公開
[John BurkeTechTarget]

 無線LANとして広く使われる標準規格群「IEEE 802.11」。広く認知される上では「Wi-Fi」のブランドが一役買っている。市場が動き出したきっかけを紹介した前回に続き、今回は、無線LANビジネスが大成功するに至った理由を紹介する。

大人気になる前の「無線LAN」がつまずいた“重大な問題”

 1997年に無線LAN規格「IEEE 802.11」を標準化したのに続き、その2年後の1999年、米国電気電子学会(IEEE)は新バージョンである「IEEE 802.11a」と「IEEE 802.11b」を標準化した。

 IEEE 802.11aが利用する周波数帯は5GHz帯で、データ伝送速度は最大54Mbps。IEEE 802.11bは周波数帯として2.4GHzを使い、データ伝送速度は最大11Mbpsという仕様になった。初期バージョンであるIEEE 802.11のデータ伝送速度は、最大2Mbpsだった。

 こうして標準規格が出そろうのは良かったものの、ある重大な問題が残っていた。標準規格に準拠する製品であっても、相互運用ができないことがあったのだ。そこで各ベンダーが結束して、無線LANの普及促進を図る業界団体WECA(Wireless Ethernet Compatibility Alliance)を結成した。

 企業における無線LAN利用を推進するために、WECAは標準規格への準拠を推し進める他、製品間の相互運用性を実現することに重点を置いた。

 WECAは、相互運用の認証が取れた製品のブランドとして「Wi-Fi」を立ち上げ、このブランドを使った製品販売が始まった。ネットワーク機器ベンダーやPCベンダーはIEEE 802.11bに準拠するとともに、Wi-Fiの認証を取得した製品を提供し始めたのだ。これによって企業における無線LANの導入が進み始めた。

 WECAはWi-Fiのブランドを立ち上げると同時に、2002年に団体の名称を「Wi-Fi Alliance」に変更した。Wi-Fi Allianceは2023年現在も活動を続けており、世界中のさまざまな組織が加盟している。

 IEEE 802.11aとIEEE 802.11bの後も、IEEE 802.11の新バージョンが数年置きに出た。2023年現在は標準化済みの最新規格として「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi 6)が普及している。

 新バージョンの策定において、IEEEは毎回さまざまな技術進化を盛り込んでいる。例えば

  • アンテナの設計や材料の改良
  • データの圧縮技術
  • 半導体製品の改良
  • 電波利用の効率化

などがある。こうした進化の結果として、新バージョンはデータ伝送が高速化するばかりでなく、接続の安定性向上やセキュリティの強化、消費電力の低減など、各種の利点を得られるようになっている。


 次回(第4回)は、普及しつつあるIEEE 802.11axに至るまでの、標準規格の進化を紹介する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品資料 株式会社インターネットイニシアティブ

自治体がMicrosoft 365を利用する際に検討したい、専用回線の導入という選択肢

企業だけではなく自治体でもクラウド活用が進んでいる昨今。中でも業務利用が多いMicrosoft 365には、Microsoft Teamsなど高速かつ安定した回線を必要とするサービスがある。それらを快適に利用するにはどうすればよいのか。

製品資料 パロアルトネットワークス株式会社

従来のSD-WANでは運用負荷が問題、アプリのパフォーマンスをどう高める?

分散環境におけるアプリケーションのパフォーマンスを高めることは多くの企業で課題となっているが、従来のSD-WANによるアプリケーションの識別/回線振り分けは、運用負荷の高さが課題だった。これを解決する、次世代のアプローチとは?

市場調査・トレンド 株式会社インターネットイニシアティブ

ネットワーク担当者への調査で知る、店舗・拠点におけるネットワーク起因の課題

多店舗/多拠点企業のネットワーク担当者216人を対象とした調査により、「SaaSへのアクセスなどネットワーク利用に不便なことや制限が多い」などの課題が浮き彫りになった。これらの課題を解消し、再構築を成功に導く方法を探る。

製品資料 株式会社インターネットイニシアティブ

電子決済のエラーで営業に支障、多店舗/多拠点企業ネットワークのあるある課題

複数の店舗や拠点を擁する企業にとって、電子決済の通信エラー、本部と拠点の間でのWeb会議品質の低下といったネットワーク課題は、事業運営に深刻な問題をもたらしかねない。よくある8つの問題と、その解決策を探る。

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

ファイアウォールとVPN中心のセキュリティアプローチは危険? 4つの理由を解説

代表的なセキュリティツールとして活用されてきたファイアウォールとVPNだが、今では、サイバー攻撃の被害を拡大させる要因となってしまった。その4つの理由を解説するとともに、現状のセキュリティ課題を一掃する方法を解説する。

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

TechTarget郢ァ�ク郢晢ス」郢昜サ」ホヲ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。