現代に至るまでに巨大な市場を作り上げてきた無線LAN。その黎明(れいめい)期は、実は混沌(こんとん)としたものだった。「IEEE 802.11」ができた当時を振り返る。
「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi 6)に至るまで、「IEEE 802.11」の規格群として脈々と発展してきた無線LAN。その“先祖”を紹介した前回に続き、今回は、無線LANがなぜビジネスとして成功したのかを探る。
米国電気電子学会(IEEE)が無線LAN規格としてIEEE 802.11を標準化したのは1997年のことだ。無線ネットワークに関する商業活動は、実はそれ以前からあった。さまざまなベンダーやサービスプロバイダーが、小売業者や物流業者のニーズに応じた無線ネットワークの製品やサービスを市場に投入していた。
1985年に米連邦通信委員会(FCC)は、900MHz、2.4GHz、5GHzの3つの周波数帯に対する免許要件を緩和した。これにより事業者は免許を取得せずに、これらの周波数帯で低出力かつ限られた範囲でのデータ伝送ができるようになった。この決定があるまで、ビジネス向け無線ネットワークの事業が成功する見込みはほとんどなかったのだ。
企業にはさまざまなニーズがあり、無線ネットワーク市場は潜在的に巨大だった。通信事業を提供するAT&TやALE International(Alcatel-Lucent Enterpriseの名称で事業展開)、NCR、Proxim Wirelessといった事業者は、さまざまな用途を想定した製品を発表した。
そうして競合する製品が登場する中、各事業者の製品には相互運用性が欠けていた。そこで米国電気電子学会IEEEの無線ワーキンググループが、IEEE 802.11の初期バージョンをまとめることになった。この初期バージョンの最大データ伝送速度は、2Mbpsだった。
次回(第3回)は、「Wi-Fi」のブランドが立ち上がった歴史を紹介する。
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