企業にとっても、消費者にとっても欠かせない存在になった無線LAN。この便利な通信技術は、どこで、どのように誕生したのか。その発展の歴史から“優秀さ”の鍵を探る。
多彩な技術進化を結集させた無線LAN規格「IEEE 802.11ax」(Wi-Fi 6)が普及しつつある。無線LANは仕事においても、日常においても欠かせない存在になった。この便利な通信技術はいつ、どこで生まれ、どのようにして“超メジャー”な通信技術になるまでに発展してきたのか。
21世紀に企業のITチームに参加したほとんどの人にとって、無線LANはネットワーク接続の手段としては既に“当然の選択肢”になっていた。有線LANを使わない「無線オンリー」の企業が珍しくない昨今は、無線LANは選択肢というよりは、必需品になったと言っていい。
企業にとって無線LANは、現代では「手頃で信頼できる存在」だと言えるが、そうではない時期もあった。そうなるまでに、さまざまな“ターニングポイント”を経てきた。ここから先は無線LANの歴史を、順を追って紹介する。
無線LANの起源は、1970年ごろにハワイ大学で誕生したネットワークシステム「ALOHAnet」に見ることができる。「電波で音声以外のデータを伝送する」という技術的な視点で見れば、その起源はモールス信号(文字や数字を表す符号)を無線で送信する「無線電信」が、19世紀に誕生した時までさかのぼることができる。
ALOHAnetは、パケット(情報を分割して伝送するための単位)化したデータを、ハワイ諸島間で送受信するネットワークシステムだった。その仕組みを基礎として、後に米国電気電子学会(IEEE)がイーサネット規格「IEEE 802.3」を策定した。IEEE 802.3は、有線で接続する通信技術の規格群だ。
その後、IEEEは無線LANの規格として「IEEE 802.11」を策定した。IEEE 802.11は、イーサネットの無線版のような存在であるため、ALOHAnetは無線LANの“先祖”に当たる。
次回(第2回)は、無線LANが企業向けのネットワークとしてどのように発展し始めたのかを説明する。
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