DXができない企業は「消えるだけ」の現実と、成功者が知る“実践の知恵”実践事例に学ぶDXの知恵【第1回】

「DXを推進すべき」は世界の流れだが、そもそもDXに取り組む理由は何か。DX をしなければどうなり、“成功するDX”をしたければ何をしないといけないのか。専門家たちの意見を紹介する。

2024年02月02日 05時00分 公開
[George Lawton, Mekhala RoyTechTarget]

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 経済状況が厳しい中にもかかわらず、「デジタルトランスフォーメーション」(DX)の取り組みは世界中で活発化している。コンサルティング企業Boston Consulting Group(BCG)のDX専門家集団「BCG X」が2022年12月に公開した調査レポート「Mind the Tech Gap」によると、対象企業の60%が2023年にDXへの投資額を増やすと答えた。

 ただしDXの成功は簡単なことではない。マーケティングツールベンダーPhraseeの非業務執行取締役であるパリー・マルム氏は「まだDXに着手していない企業にとっては、特に難しい取り組みになる」と話す。どういうことなのか。

DXをしなければ“消える”だけ 実践のための知恵とは?

 マルム氏によると、DXを始めて試行錯誤する中で、問題が生じた際に軌道修正できるだけのリソースを持っている大手企業は利益を上げ続けることができる。中小企業やスタートアップ(設立後間もない企業)は、素早く立ち回って変化を起こす能力で大手企業に対抗し、競い合う。しかし大手企業や新興企業のような強みを持たない中堅企業は、企業間の競争から締め出される恐れがある。「そのような状況を切り抜けるためには、DXを成功に導くための仕組みやプロセスを理解することが不可欠だ」と同氏は指摘する。

 コンサルティング会社PSG Consultingのマネージングディレクター、アントニー・エドワーズ氏は、DXを3つのタイプに分類している。

  • 製品やサービスのデジタル化
  • デジタル技術を使った、顧客との関わり方の変革
  • 社内インフラの変革に伴う、従業員の働き方の変化

 DX支援を手掛けるグローバルサービス企業のGenpactでチーフデジタルストラテジストを務めるサンジェイ・スリバスタバ氏によると、さまざまな業界の企業がDXを通じて以下のようなビジネス課題に取り組む中で、投資利益率(ROI)を達成している。

  • 顧客体験の向上
  • 業務生産性の向上
  • サプライチェーンの最適化

 ITはあくまでもDXを支える一部に過ぎないものの、スリバスタバ氏が今までに見聞きした事例の中で成功したと考える取り組みは、デジタル技術やデータ、AI(人工知能)技術を活用したものだったという。

 調査会社Gartnerのディスティングイッシュトバイスプレジデントアナリストであるクリスティン・モイヤー氏は「DXが成功すればビジネスは最適なものになる」と話す。

 DXの成果としてモイヤー氏が挙げるのが、業務効率の改善や顧客エンゲージメントの向上だ。重視すべきなのは、新しいデジタル製品やサービス、新しいビジネスモデルなど「全く新しい収益」を作り出すことだ、と同氏は説明する。

 DXをロードマップに沿って実行することで、顧客のニーズに応え続けられるようになり、そして顧客がよく利用するチャネルに応じてサービスを展開できるようになる。セキュリティコンサルティング企業RisksilienceのCISO(最高情報セキュリティ責任者)を務めるジェイソン・フルージ氏はこう説明し、「結果として、顧客基盤の拡大につながる」と話す。

 人々はデジタル技術への依存度をますます高めている。スマートフォンやタブレットなどのデバイスを使って企業とつながりを持ちたいと考えている一般消費者も存在する。だからこそ「そのような現実を受け入れDXを実施しなければ、取り残されてしまう恐れがある」とフルージ氏は主張する。

 専門家たちは、DXによってIT部門や開発部門のアジリティー(機敏性)を高められる点についても強調する。社内のITインフラが整い、小規模な変更を短期間のうちに繰り返す「アジャイル」な開発ができるようになり、今までよりもはるかに素早くプロジェクトを進められるようにもなる。


 第2回は、大手企業3社のDX実践例を紹介する。

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