病院などの医療機関は無線LANの導入に慎重だったが、状況は変わりつつある。医療現場でさまざまな課題が生じる中で、病院は無線LANをどう活用しているのか。無線LAN導入の主要なニュースを紹介する。
医療現場では人手不足や長時間労働といった課題があり、業務を効率化するIT機器・サービスが求められている。そのための重要なインフラの一つになるのが無線LAN(Wi-Fi)だ。入院患者からも無線LANを使いたいという要請が強くなっている。一方で、病院ではITに詳しい担当者の不足や、医療機器との電波干渉が発生する懸念などがあった。そのため医療機関では無線LANの導入に慎重になる傾向が見られたが、昨今は無線LANの導入が相次いでいる。病院が無線LANを導入したニュースを3本紹介する。
社会福祉法人の聖隷福祉事業団は2023年12月時点で、全国212施設で医療福祉サービスを提供している。同法人は約3年前からタブレットやスマートフォンの業務利用を進めると同時に、各施設の無線化を進めていた。それに伴い、もともと100〜150台程度だった無線LANアクセスポイント(AP)の台数は約800台まで増加。その段階で、無線LANの専門知識のある職員が不足して、新規導入やトラブルシューティングが間に合わなくなっていた。従来は機器の納品から初期設定まで平均して2カ月を必要としてきた。その期間を短縮し、専門知識のない職員でも無線LANをスムーズに導入・運用ができる仕組みが必要だった。そこで同法人はIT製品・サービスベンダー網屋が提供する、クラウドから設定・運用可能な無線LANサービス「Hypersonix」を選定した。網屋がHypersonixを8営業日で納品可能であることと、機器が初期設定済みの状態で届く点を評価した。実際に専門知識がない担当者でも導入・運用ができるようになった。(発表:網屋<2023年12月>)
栃木県の佐野厚生総合病院は1937年に開院した歴史ある病院だ。同院内に無線LANはあったが、院内システムの利用する電波への干渉を防ぐため、利用は一部医師に限られていた。しかしコロナ禍で患者やその家族から、無線LANを利用したいというニーズが強まったことから、患者用の無線LANを構築する必要性が高まった。既存の無線LANはセキュリティ対策のために許可した端末以外アクセスできない仕様だったため、新たに独立した無線LANが別途必要だった。複数の無線LANからコストや納期、使い勝手を検討した中で、無線LANサービスの「ドコモ光ビジネスWi-Fi」を選定した。同サービスはネットワークや機器の監視、修復をNTTコミュニケーションズが担当する。こうした運用面の負担を軽減できることが決め手の一つとなった。導入後、特に無線LANのつながりにくいエリアはなく、トラブルもないという。そのため、無線LANを患者だけでなく職員にも開放。オンライン会議や研修などに利用している。(発表:NTTコミュニケーションズ<2023年9月>)
広島県の県立安芸津病院の院内LANは、2011年に電子カルテを導入した際にセットで整備したもので、ネットワーク機器の老朽化や、接続端末を把握できないなどの課題を抱えていた。同院はネットワーク基盤刷新に当たり、将来的には何も信用しないことを前提にするセキュリティの考え方「ゼロトラスト」を採用することにした。機能の拡張性や機器の信頼性を重視してネットワーク製品を比較した。ネットワーク機器の品質に加えて、医療関係者のユーザーコミュニティを運営している点を評価してベンダーにアライドテレシスを選定。APやスイッチ、管理ツールを同ベンダー製品で統一した。2022年から2023年にかけて、外部と接続する際のセキュリティを確保する手段として、別のコンピュータで実行しているWebブラウザの表示画面だけを端末に転送する「仮想ブラウザ」も導入。ネットワークと合わせて病院職員がインターネット接続を安全に利用できる仕組みを構築した。(発表:アライドテレシス<2024年3月>)
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