英国のウェールズ地域を管轄するNHS Whalesは、「電子処方箋」の導入を進めている。その活動に関する年次評価レポートから、同プロジェクトの取り組みを紹介する。
英国の国民保健サービス(NHS:National Health Service)でウェールズ地域を管轄するNHS Walesが「電子処方箋」の導入を進めている。2024年1月、NHS Whalesのデジタルヘルスケア部門傘下で電子処方箋の導入計画を推進するプロジェクトチーム「Digital Medicines Transformation Portfolio」(DMTP:デジタル医薬品変革ポートフォリオ)が、活動に関する年次評価レポートを公開した。
2021年9月、ウェールズ政府の起案で始まったDMTPは以下4つのプログラムを管轄している。
DMTPの目的は、ウェールズ地域の全ての患者にひも付く処方の記録を統合することで、患者や医療従事者にとって処方や調剤、投与をより簡単で安全、効率的かつ効果的なものにすることだ。
SMRについては、ウェールズ政府がデータの連携と共同利用を目的に実施するプログラム「National Data Resource (NDR) programme」と協力し、7週間の動作テストを実施。テスト期間中、「ウェールズ地域のかかりつけ医(GP:General Practitioner)が運用するシステムとSMRの間で安全かつ効率的に医薬品記録を共有することができた」と年次評価レポートは評価している。SMRの本稼働は2024年3月末に開始する見通しだ。
ウェールズ地域では紙の処方箋を発行するのが一般的だ。EPSの導入はその慣習にメスを入れるものとなる。同地域の一部のGPと薬局で実施したEPSの試験運用は、成功を収めた。この成果について年次評価レポートは、「DMTPの計画におけるマイルストーンになるものだ」と評価している。同レポートは、2024年初頭に試験運用が完了した場合、ウェールズ地域全土に段階的に電子処方箋を導入する計画があることにも触れている。
2023年4月、ウェールズ政府は電子処方箋システムに関する助成金制度の立ち上げを発表した。同システムの構築に関わるITベンダーが効率的にサービスを提供できるように助成金を申請できる制度だ。年次評価レポートによるとITベンダー5社が助成金を獲得しており、同システムとNHS Wales Appとの統合にもその助成金が活用されるという。
後編は、ウェールズ地域の電子処方箋普及の鍵を握るNHS Wales Appについて紹介する。
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