IT業界に女性が少ない背景には、教育の段階から始まる構造的な問題と、雇用におけるバイアスがある。進路選択からキャリア形成に至るまで、IT分野から女性を遠ざける原因となっている問題とは。
IT業界に根強く残る“男性優位文化”が、女性を遠ざけている現状を第1回「多様性の時代だろうが『IT業界には女性がいない』残念な現実」で紹介した。人材不足が深刻化する中で女性が定着しないことは、業界全体にとって大きな損失となる問題だ。
では、なぜIT業界には女性が少ないのか。その原因をたどると、実は教育の段階からキャリア形成、雇用に至るまで、長年にわたって積み重ねられる問題が見えてくる。
ジェンダーギャップを引き起こす要因は中学生年代から始まり、それが一般的なキャリアの後半段階まで尾を引いている。
STEM(科学、技術、工学、数学)分野への進路を選択する中高校生年代の女子学生の比率は、中学生年代に目立って減り始め、そこから下がり続ける。
「女子や女性は教育全体を通じて科学や数学から体系的に遠ざかり、大人になってそうした分野に進むための利用、準備、機会を制限されている」と説明するのは、アドボカシー、教育、調査を通じて女性と少女のエクイティー(公平・平等)を推進する非営利団体American Association of University Womenだ。女子学生がSTEMの進路を選ばない理由はさまざまだ。よく、「男子学生に比べて女子学生は数学の習得が不得手だ」といった理由が挙がるが、これは誤った固定観念に基づいている。
誤った固定観念に基づいた人材パイプラインにおける損失は、長年にわたって続いている。IT認定資格を授与する非営利業界団体CompTIAで業界調査担当バイスプレジデントを務めるキャロリン・エイプリル氏は語る。「これは今に始まった問題ではない。女子学生は自身が数学や科学を得意だとは思っていない。そのため、高校に入学すると数学や科学から離れ、そうした学問が必要だと考えられる分野への興味を失う」
その結果、大学でSTEMを学ぶ若い女性が減ることになる。全米教育統計センター(NCES:National Center for Education Statistics)によると、2022年のコンピュータ科学および情報科学の学士号取得者のうち、女性の比率は39%ほどだったという。
ジェンダーの壁が立ちふさがるのは教育だけではない。その後、ITなど技術系の職種を目指す女性は、雇用における差別的慣習に直面する傾向がある。
応募者の履歴書や応募書類をふるいにかける人工知能(AI)システムの多くは、ジェンダーに対する偏見(バイアス)も含め、文化的バイアスがシステムに反映されていることがある。AIの方が客観的だとする触れ込みが広まっているにもかかわらずだ。
米ミネソタ大学のレポート「Gender Policy Report」の一部として2024年に発表された研究「Algorithmic bias in job hiring」(採用活動におけるアルゴリズムのバイアス)によると、この種のAIシステムは脈々と続いてきた人種的固定観念だけでなく、ジェンダーバイアスや性差バイアスも再現する。
次回はIT分野の技術職でキャリアをスタートさせた女性が直面する可能性があるバイアスについて解説する。
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