データセンター統合の基盤としてLinuxを活用するメインフレームやハイエンドRISCサーバにもLinuxを

データセンター統合の最も優れたアプローチの1つは、Linuxを中心に据えることだ。包括的なIT戦略計画の一環としてLinuxによるOS統合を行えば、ROIの向上とTCOの削減を実現できるだろう。

2009年04月28日 08時00分 公開
[Ken Milberg,TechTarget]

 Linuxデータセンター統合に威力を発揮する。それはなぜか。まず、現在の経営環境の下で大規模なITインフラプロジェクトが承認を得るには、プロジェクトによるビジネス価値の実現が見込めなければならない。そこでこれらのプロジェクトは、大きなROI(投資利益率)を達成することが求められる。達成できれば、TCO(総保有コスト)の負担も軽減されることになる。以下に説明するように、Linuxはこうした要求を満たすのに役立つ。

 データセンター統合プロジェクトの主な目的は、電力および冷却コストの削減、省スペース化、サーバリソースの全体的な使用率の向上だ。データセンター統合には通常、サーバ統合が含まれるため、こうしたプロジェクトはサービス契約コストやソフトウェアライセンスコストの大幅な削減を実現しながら、サーバリソースの全体的な使用率を大幅に向上させるだろう。わたしが率いたプロジェクトの中には、コスト削減効果が最も大きかった費目がソフトウェアライセンスだったものがある(サーバファーム用のOracleライセンスを管理したことがある人は、この話に心当たりがあるだろう)。

データセンターの統合

 データセンターを統合するには、基本的に2つの方法がある。1つは、単に設備を移動してまとめるというもの。例えば、ある企業が4つのデータセンターを2つに統合しようとしていたとする。このシナリオでは、4つのデータセンター内のすべての機器を2つのセンターに運び込むことになる。仮想化やサーバ統合も併せて行われるかもしれないが、インフラの本格的な再設計やリエンジニアリングは行われない。

 もう1つのシナリオは、データセンターを統合するとともに効率とプロセスを向上させるというものだ。このシナリオには、インフラの全体的な方向性に関する戦略計画が含まれる。このシナリオによるデータセンター統合は非常に複雑で大変だが、ROIとTCOに関して優れた成果をもたらす。

 では、なぜLinuxをデータセンター統合に利用すべきなのか。まず、LinuxはほかのどのOSよりも多様なハードウェアプラットフォームに対応していることを頭に入れておくことが重要だ。対応ハードウェアプラットフォームはx86ベースのコモディティハードウェアから、Hewlett-Packard(HP)Sun MicrosystemsIBMなどが提供するRISCベースのUNIXシステム、IBM System z(メインフレーム)まで多岐にわたる。一般的なエンタープライズ環境では、サポートしなければならないOSが半ダースくらいあるかもしれない。Windows、Linux、数種類のUNIX、z/OS(メインフレーム用)といった具合だ。ご存じのように、どのOSでもサポートを行うスタッフとして、オペレーター、管理者、エンジニア、キャパシティープランナー、アーキテクトが必要になる。一般的な大企業では、各OSごとに少なくとも1ダースのサポート担当者を抱えているかもしれない。6つのOSをサポートする場合、担当者数は72人にもなる。

OSの統合

 データセンターの統合では、Linuxを中心に据えたアプローチを取ることができる。この場合、LinuxをOSとして使い、メインフレームの運用を継続できる。IBM System p5 595 POWERサーバ(もともと基本的にはUNIXサーバ)や、x86ベースのコモディティブレードサーバについても同様だ。また、SolarisからLinuxへの乗り換えも選択肢になる。こうしたアプローチを取れば、インフラを合理化できる。スタッフを6人にまで減らすのは無理だろうが、従来必要だった人数の半分のスタッフでやっていけるかもしれない。これは、データセンター統合の一環としてOSを統合することによる効率向上の一例にすぎない。ご存じのように、もはやLinuxはデータセンターのバックエンドのWebサーバやDNSサーバを稼働させる役割だけを任されているわけではない。実のところ、既に多くの企業(Oracleなど)がすべての情報システムをこのプラットフォーム上で運用している。

 メインフレーム上でLinuxを動かすことについていえば、近年ますます普及している。そうすることで、40年以上の歴史に裏打ちされ、高い成熟度と回復力を持つ高信頼のハードウェアと、柔軟で弾力的なオープンソースOSの組み合わせにより、さまざまな面で最高峰の技術を享受できるからだ。多くの企業がデータセンター統合の基盤としてLinuxをメインフレームで利用している。サーバをユーザーのデスクの下に置いたりしていた分散管理の時代を経て、われわれはデータセンターでの集中管理に回帰しているというわけだ。

 メインフレームのノウハウや経験がない企業は、以前はUNIXだけが動作していたハイエンドRISCサーバを使って同様の取り組みを行える。そうしたサーバの一例としてIBMのPOWERサーバがある。そのSystem pプラットフォームでは、IBMのUNIXであるAIXや、Linux(SUSE Linux Enterprise ServerまたはRed Hat Enterprise Linux)を利用できる。両OSは、システムの集約に役立つ多くの機能を提供するIBM PowerVM Editionをサポートしている。それらの機能には、Virtual I/O Server(VIOS)、共有プロセッササポートのほか、Live Partition Mobilityのような最近のイノベーション成果などが含まれる。Live Partition Mobilityは、実行中のパーティションをサーバ間で移動できる機能だ。こうした機能は、省スペースや電力および冷却コストの削減に貢献する。また、IBM System pサーバの最上位機種であるIBM System p5 595は、実はメインフレームシャーシをベースに作られており、IBMメインフレームの優れたRAS(信頼性、可用性、保守性)機能の多くを提供する。

 Linuxをデータセンター統合に利用することには、もう1つの重要なメリットがある。Linuxの市場性から見て、このアプローチには長期的な有効性が期待できることだ。Linuxは市場シェアが伸びている唯一のOSであり、このことは企業が投資を保護するのに役立つ。さらに、現在のイノベーションのほとんどは、Linuxのようなオープンソースシステムで起こっている。

 わたしの意見では、データセンター統合の最も優れたアプローチの1つは、Linuxを中心に据えることだ。データセンター統合プロジェクトにより、企業はコストを削減し、効率を高め、ITのビジネス支援機能を強化できる。包括的なIT戦略計画の一環としてOS統合を行えば、データセンターとインフラサポート担当者を最大限に活用するのに役立つだろう。

本稿筆者のケン・ミルバーグ氏は、UNIXやLinuxシステムを20年にわたって手掛けてきたシステムコンサルタント。

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