2009年12月03日 08時00分 UPDATE
特集/連載

ノーク伊嶋の「中堅・中小企業をITで救いたい!」【第2回】企業の良きパートナー選び、見極めのポイントはどこか

低迷する経済下でIT運用に悩む企業。そんな企業にとって、経営に直結するITの利活用を提案するパートナーは頼もしい存在だ。昨今提案力が落ちたといわれるが、最適な販売店を選ぶにはどうすればいいのか。

[伊嶋謙二,ノークリサーチ]

 中堅・中小企業が元気にならない限り、日本経済の本当の意味での「底離れ」は難しい。内需拡大が現在の国内経済の暗雲を取り除く最善の策だという声は多い。低迷する市況下で、中堅・中小企業は経営に役立つITの活用を望んでいる。

 しかし、自らの力だけではなかなか現状の打開が難しい。そこで、筆者はNECや富士通とディスカッションを行う機会を設け、この命題について考えてみた。果たしてベンダー(=ハードウェアメーカー)は、中堅・中小企業(特に中小企業)の課題解決策のための特効薬を持っているのだろうか? 今回は、ユーザー企業にとって頼りになるパートナー(販売店やベンダー)の見極め方について取り上げる。

オフコン(ターンキー)の基幹システムはなぜ良かったのか?

 まず全体の市況感について、現在も景気は良くない状態であり、まだ底を打っているとはいえないことで世間の認識は一致している。ただし企業によって、現在でも積極的にIT投資しているところ、あるいはそうでないところ、両者が入り混じったまだら模様である。例えば、データセンター事業者のような、IT自体がビジネスの中心であるような企業での導入は活発である。また、SNSビジネスを運営している企業は、ユーザーがいまだに右肩上がりの勢いで増えているので、サーバなどの導入スピードは衰えないという。ただしこの点は、企業規模には関係しない現象だ。言い換えると、数年前までの部門導入などの新規導入にブレーキがかかり、リース切れなどの理由でシステムをリプレースする割合が高い。

 ここで考えたいのは、どの企業でも利用しているはずの基幹業務システムだ。企業活動の主要なデータ処理を行う業務システムは、企業にとっては最も普遍的なITシステムである。しかし実際のところ、オフコン時代から現在に至るまで、その使い方に大きな変化はない(オフコンそのものをまだ使っている企業も多い)。既存のシステム自体を維持するためのIT導入が目立つのは、心苦しいことだが事実だ。

 だが、オフコンをターンキーで使うことに意味がないかというと、決してそんなことはない。実際、ブラックボックス化したオフコンだからこそユーザー企業は素人でも扱えた。システムはブラックボックスにした方がむしろ、ユーザー企業は楽なはずだ。目的の単純化、効果の明確化がオフコンの最も評価すべき部分だ。しかも、企業独自の強みを生かした「カスタムメード」で作り込みもできる。現状、基幹業務システムの方向性は「プロプライエタリ」から「オープン」になり、ユーザー企業は標準的なシステムを導入すべきか、あるいはユーザー独自の強みを生かすシステムにすべきか、ためらう局面にもなっている。

 そうしたユーザー企業にとって、頼りになるのが販売店だ。図1を見ると、業務システム購入先の選定理由では「業務をよく理解した担当者がいるから」が40.3%、「過去の取引実績が豊富だから」が40.1%と、いずれも企業の業務システムを熟知した販売店と、オフコンのようなシステムを継続して利用していることが分かる。ユーザーと購入先との信頼関係が極めて重要な要素になっているのだ。

図1 図1 現在の業務システム購入先を選定した理由(複数回答可)

ユーザー企業の期待とベンダー・販売店の提案力不足

 一方ベンダー視点で見ると、ニーズに合った製品をマーケットインで市場に投入するのが望ましいと考える。ところが、ユーザー企業は自身のIT活用のイメージが薄い(特に必要性の高いITについては)ため、具体的なニーズが出てこない。従って、潜在的なニーズを掘り起こすためのスキルが必要だが、御用聞き営業しかできない多くの販売店は持ち合わせていない。それは、ユーザー企業と販売店、ベンダーの長年の関係が「ITというものはこんな感じで十分」という、一定の満足感を醸成した結果、業務システムを中心とした利活用の“天井感”を招いているからともいえる。

 ベンダーが物作りにおいて、相変わらず製品のスペックや価格先行になっていることは仕方がないことなのだろう。価格や売れ筋の分析と称して、それなりのIT製品を作り出すのみだ。つまり、ある種の標準化された製品を提供しているにすぎない。ただそのおかげで、ここ10年間でITハードやネットワークインフラの整備は大きく進んだ。情報の活用範囲や容易さなどの面でのコモディティー化は目覚ましい。しかし、企業でのITの利用方法については、残念ながらここ10年間、本質的な変化が見られない。

 かつて販売店は、基幹業務システムを提案することが主体であった。売るための商材も限られていたために、「売ること=提案すること」だったのだ。逆に、今は売る商品が多くなり、提案が特になくても物が売れるメニュー販売になっている。品ぞろえが豊富で、ユーザーに選ばせるだけの“ファミレス営業”である。そのため、オープン化以降の販売店は、すっかり提案力が落ちていることが問題化した。

 ユーザー企業は基本的には受動的である。特に現在の不況下では、待っていてもユーザー企業からの注文は期待できず、積極的に営業していく必要がある。そこで、提案力の弱い販売店が提案するためのきっかけ作りとしてのツールが事例集だ。今やほとんどのベンダーで用意されている。販売店が多くの身近な事例集をそろえることが提案を始めるきっかけとして有効と思われるが、このアプローチはすべての企業に当てはまるわけではない。規模、業種に合わせた事例を提示できなければ、メニュー販売と変わらなくなってしまう。

 このように、きっかけができても、その後でユーザー企業に提案の可否を判断、納得させるだけのスキルを販売店が持っていないことが、売る側の大きな課題だといえる。

「ITを語らない販売店」が良いパートナーになる

 まとめとして、企業がITに関して抱える喫緊の課題を幾つか指摘しておきたい。まず、情報セキュリティは重要な課題だが、本気で整備しようとする機運にはまだ達していないようだ。セキュリティ対策やバックアップは重要だと感じるが、一応最低限は行っているという認識から、網羅的な対応にまでは至らない企業が多い。もちろん、投資予算がないことがその大きな要因であることは間違いない。しかし、セキュリティ対策の不備は企業活動の大きなリスクになっている。

 またITインフラの運用管理は、サーバやクライアントPCの導入台数にかかわらず常に課題となっている。それは段階を踏む、ユーザーの身の丈に合った管理だったとしてもだ。中小企業では誰が、何を、どのように管理しているのかを正確に把握していないため、ITインフラを整理、集約、統合するときになって初めて問題が表面化する。

 このように、情報セキュリティ管理、IT資産管理、インフラ運用管理などはITリソースの有効活用やBCP(事業継続計画)の面でも大きな課題となっている。IT管理の課題だけでも、販売店はユーザー企業に的確な提案を行えるかどうかが今、問われているのだ。

 一方で、基幹システムでコスト削減を既に実現できている企業もある。しかもユーザーは、基幹システムを継続利用することが最も低コストになることを知っている。また同時に、企業経営に役立つ「プラスアルファ」の部分を漠然と期待している。だがそれは、製品としてのデータウェアハウス、CRMなどのアプリケーションそのものを意味していない。ユーザーの購入先への要望(図2)を見ると、「(ITの)導入可否や導入妥当性を判断できる豊富な情報提供」が64.4%と圧倒的に高い。注目したいのは、それが価格面の要望よりも上回っている点だ。

図2 図2 業務システムの購入先に望む事柄(複数回答可)

 ITシステムの最大の課題は、ユーザー企業の潜在的な欲求を満たしていないことだ。ユーザー企業のフラストレーションは、経営課題を解決できないいら立ちだといえる。では、ユーザー企業の経営者や幹部はITに興味がないのだろうか? そうではない。簡単に言うと、IT用語、ITソリューションなどの「仕掛けや仕組み」にあまり興味がないということだ。ユーザーが欲しいのは、企業活動によってもたらされる効果である。

 また売る側にとっても、「チャンネルビジネスに王道はない。人による地道な提案やフォローがあるだけだ」という昔からの原則はいまだにブレていない。長く付き合える販売店が、ユーザーにとっては良いパートナーとなっているケースが多い。つまり、共に悩み、サポートしてくれる販売店が貴重なのである。たとえ新規の販売店であっても、ユーザー企業の経営者などにしっかり踏み込んでくる販売店をじっくり見極めるようにすべきだ。逆に、長年の付き合いだからといって、ユーザーを放置しているような販売店は見直すべきだろう。

 以上から読者に伝えたいのは、ユーザー企業の事業上の強みや弱みなどを理解している販売店、ベンダーこそが貴重なパートナーとなるということだ。一気に「戦略的な見える化提案」とは行かずとも、既存のITシステムに「プラスアルファ」の気付きを与える程度の提案でも、自社にとって効果があることが示されていれば、十分に受け入れられるはずだ。それはセキュリティや運用管理の提案かもしれないし、あるいはSaaS(Software as a Service)利用という提案かもしれない。そこには、物売りの視点では出てこない「あなたの会社のための提案」をする販売店、ベンダーの姿勢がある。大胆に言えば、パートナーの選定時には「ITを語らない」「製品を売らない」販売店を見極めていただきたい。

<筆者紹介>

伊嶋謙二

ノークリサーチ 代表取締役

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大手市場調査会社を経て1998年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査、コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。最近ではIT環境変化に伴うハード、ソフト、サービスの観点からのITベンダーへの戦略提言に定評がある。



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