ベストなWebブラウザとは?【後編】
安全なブラウザ、微妙なブラウザを見分けるコツ
安全なWebブラウザを選ぶことは簡単ではないが、バグが修正されるまでの時間は1つの目安になる。IE、Chrome、Firefoxへの評価は?
前編「IEが『最も危険なWebブラウザ』と思われている理由」に続き、後編では「Internet Explorer」(IE)以外のWebブラウザの状況と、ブラウザを選ぶ際のポイントについて解説する。
脆弱性管理サービスを提供する米Qualysの最高技術責任者(CTO)、ウォルフガング・カンデック氏と、独立系セキュリティ調査企業である米NSS Labsの調査ディレクター、ランディ・エイブラムス氏は、最近のゼロデイ脆弱性の相次ぐ発覚は必ずしもIEの根本的な脆弱性を示唆するものではないとの考えだ。一方、ブラウザを1種類に絞らなければならない企業IT部門は依然として、「どのブラウザがユーザーに最善のセキュリティを提供するか」という疑問に答えを出せずにいる。
カンデック氏によれば、企業がブラウザを選ぶ際には、幾つか考慮すべき要因があるという。その1つは、最も多く使われている3つのブラウザ(IE、「Google Chrome」「Mozilla Firefox」)は更新のスケジュールが大きく異なる点だ。
IEのバグ修正に時間がかかる理由
2014年5月にIEの緊急パッチを公開したとはいえ、米Microsoftは通常、「Patch Tuesday」と呼ばれる毎月第2火曜日(米国時間)のパッチ公開日にIEの脆弱性をまとめて修正している。そのため、ハッキングコンペ「Pwn2Own」や、米Hewlett-Packard(HP)のセキュリティ研究機関であるZero-Day Initiative(ZDI)が公開した脆弱性もそうであったように、ときには欠陥が修正されないまま何カ月も過ぎることもある。
一方、GoogleとMozillaはどちらも積極的なスケジュールでのパッチ配布を旨としている。実際、2014年のPwn2Ownでは、Firefoxのゼロデイ脆弱性が4つも発見されたが、Mozillaはコンペ終了からわずか1週間で4つのバグ全ての修正を済ませており、Googleに至っては、Pwn2Ownで見つかったChromeのゼロデイ脆弱性を、Mozillaより2日早く修正している。
Microsoftで10年以上の勤務経験があるエイブラムス氏によれば、GoogleやMozillaと比べて、IEのパッチは準備に時間がかかりがちという。同氏はその理由として、「Microsoftには保守しなければならない製品が多くあり、修正を優先しなければならない脆弱性が多いこと」と、「競合ブラウザと比べてIEは企業により深く浸透しており、アップデートが企業環境に不具合をもたらさないかの確認により多くのテストを必要とすること」を挙げる。
この点については、カンデック氏も同じ意見だ。ただし同氏によれば、Microsoftのパッチは公開されるまでに時間がかかり、IEの古いバージョンの場合はさらに長く時間がかかりがちであることから、IEを選んだ企業は積極的なパッチスケジュールを採用していない限り、より多くのセキュリティリスクにさらされる可能性があるという。現在サポートされているIEの中で一番古いのはバージョン8だが、米調査会社Net Applicationsの最近の統計によると、IE 8はIEのインストールベースの20%を占め、他のどのバージョンよりも多く使われている。
カンデック氏によれば、IEは他のブラウザと比べて脆弱な古いバージョンがより多く使われており、攻撃者にしてみれば、他のブラウザよりも狙いやすいターゲットだという。
「ChromeやFirefoxでも脆弱性が見つからないわけではない。だが攻撃者としては恐らく、特に必要がなければあえてIE以外のブラウザを狙うことはない」(カンデック氏)
さらに同氏は競合ブラウザのプラス面にも言及し、Chromeに組み込まれているPDFビュワーについて、「企業のセキュリティにとって大きな恩恵となる可能性がある」と指摘する。市場で高いシェアを誇る米Adobe Systemsの「Adobe Reader」にセキュリティの問題が頻発している現状を踏まえると、なおさらだという。
「人々はPDFビュワーを利点とは思っていないようだが、それは間違いだ。Adobe Readerをインストールせず、GoogleのPDFビュワーを使っていると想像してほしい。Adobe Readerがインストールされていなければ、PDFに対する攻撃の大半はうまくいかないはずだ」(カンデック氏)
エイブラムス氏は、自身のブラウザ環境をさらにセキュアなものにするために、米仮想化ベンダーInvinceaのサンドボックスソフトウェア「Sandboxie」を使用している。ただし、サンドボックスは手作業で定期的に削除する必要があるので、エンタープライズ環境ではうまく機能しない可能性もあるという。
「セキュリティの点では、ブラウザは決して完璧にはなり得ない」と、エイブラムス氏は強調する。企業にできるのは、「サポートが終了したWindows XPプラットフォームからの移行を済ませ、ブラウザベースの攻撃に関するリスクをできる限り減らす」「ネットワークを適切にセグメント化する」「エクスプロイトや悪意あるURLに対してエンドポイントのセキュリティ製品を導入する」「ネットワーク上の疑わしいトラフィックの特定に役立つ技術を活用する」といったことだ。「これらの措置を講じることで、どの企業も経験する不特定多数を狙った攻撃の大半は阻止できる」と、同氏は語る。
「狙いを定めた攻撃の場合、侵入を避けるのは難しい。だが、企業の側でもセキュリティの欠陥を埋めるためにできる限りのことをしておくべきだ」(エイブラムス氏)
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