タブレットの普及でモバイルBIが身近に
“iPadでデータ分析”が日常の風景になるか、その現場力を検証する
現場での意思決定や分析は、モバイルアナリティクスを有益な投資に変える代表的な2つの例だ。その一方で、セキュリティやインフラなど解決すべき課題もある。モバイルBIを導入する際のメリットと課題を紹介する。
モバイルアナリティクスは確固たる地位を築きつつある。2014年に最も注目のITトレンドである「モバイル」と「BYOD(私物端末の業務利用)」はビジネスの手法を変え、IT部門はその効果を実感している。
コンサルティング企業の米Avanadeが実施した最近のグローバル調査によると、企業の60%は「ほとんどの従業員が職場でパーソナルコンピューティングデバイスを利用している」と回答している。またITソリューションプロバイダーである米CDWの最新調査でも、中小企業のIT担当者の多くがモバイルデバイスで「コミュニケーションが改善した」(60%)、「生産性が向上した」(55%)、「ビジネスプロセスがスムーズになった」(34%)としている。
モバイルBIをけん引するメリットとは
それでは、モバイルビジネスインテリジェンス(モバイルBI)をけん引しているものは何だろうか? そのメリットは次の通りだ。
タブレット革命
デスクトップPCからノートPCへ移行したときと同じように、タブレットにも利用を強く後押しする要因がある。
米調査会社のForrester Researchは、企業所有のタブレットは今後5年間、BYODを別にして、ほぼ2桁の割合で拡大すると予測。非常に多くのモバイルデバイスがビジネスで利用されることになる。特に企業幹部らは、必要な情報をいつでもどこでも引き出せるポータブルデバイスを必要としている。
タブレットはノートPCと比べて機能面で遜色がないレベルにまで向上していることから、タブレットを持っていれば出先でも情報が瞬時に手に入るようになり、モバイルはITを構成する重要な要素となった。
いつでもどこでも利用可能なデータ
例えば、外回りの営業部員は顧客データを常に必要とし、それらのデータにいつでもアクセスできることが重要だ。営業部員は多くの時間を社外で過ごすため、会社は営業ツールや必要な情報をモバイルデバイスで提供しなければならない。
最近は、顧客履歴や販売履歴、仕入れ価格などを取引相手と向かい合って確認できる仕組みを整えて、営業部員を送り出す企業が増えている。こうした透明性の高い手法は、信頼関係を構築し、顧客を満足させるだけでなく、顧客をつなぎとめることにも役立つ。
生産現場での意思決定
製造分野の企業は、工場の現場作業にモバイルデバイスを活用することで、少なからぬコスト削減と効率性向上が可能であることを認識しつつある。
モバイルデバイスに機械の操作やジョブ、あるいはバッチ情報、各種プロセスの異常を知らせる機能を搭載すれば、工場の管理者は機械のオペレーターと連携して瞬時に問題を解決し、経済的損失を回避するだけでなく、効率的な操業を実現することも可能になる。カスタマイズされたリアルタイムのモバイルリポート機能は、国際的な大手メーカーおいても、膨大な損失につながりかねないラインプロセスの問題を特定することに役立っている。
現地での分析
ある電力会社では、現地作業員が変圧所や変電所などの状況を報告するために、モバイルテクノロジーを活用している。現地のエンジニアたちは、機械を正確に調整するために、変電所の電圧計器や保守記録、履歴情報などに瞬時にアクセスする必要がある。モバイルBIによって、作業員は機械の前に立ったまま必要なデータを入手できるようになり、情報にアクセスするための時間を削減した。
これらの実例は、モバイルテクノロジーの成長トレンドだけでなく、モバイルBI戦略がもたらす明確な利益も明らかにしている。ざっと数えるだけでも、コラボレーションの強化、意思決定の迅速化、大幅な時間削減、競争優位の拡大、顧客サービスの改善などが挙げられる。
解決すべきモバイルテクノロジーの課題
もっとも、モバイルテクノロジーの優位性は数えきれないほど多いが、解決すべき課題もまた幾つかある。
セキュリティ
モバイルデバイスに取り込まれた重要な企業データが盗まれたり、紛失したりする可能性を考えると、IT責任者は夜も眠れない。BYODの世界では、独SAPの「SAP Afaria」や米AirWatch、米MobileIronなどのモバイル端末管理ツールを導入し、セキュリティ要件に先手を打って対応しなければならない。
これらのツールは、モバイルデバイスに対する包括的なセキュリティ機能を提供するだけでなく、モバイルアプリケーションとコンテンツを中央の管理コンソールから一元的に管理できるようになっている。モバイル端末管理製品は、スマートフォン/タブレット、会社所有/個人所有を問わず、またどこのメーカー製であっても、全てのデバイスを管理できなければならない。それと同時に、コンプライアンスチェックも自動処理できる必要がある。
インフラストラクチャ
必ずしも全ての企業のBI環境が、モバイルに対応可能なわけではない。端末の可用性をはじめとして、Webサーバやファイアウォール構成、暗号化プロトコルの不備に関連するハードウェア/ネットワークの問題など、IT管理者は社外のネットワーク全体にまたがって多方面で準備を整えておかなければならない。
基本的なインフラでもおおよそのことは可能だが、IT部門はまず既存インフラとのギャップを見定める必要がある。導入計画を策定することは不可欠なステップであり、この問題に取り組んだ他社の事例を収集したり、専門家を雇うなどして計画を補強すればよい。それにより、ユーザーに影響を及ぼす前にさまざまな問題を回避、緩和することができる。
コンテンツの最適化
必ずしも全てのリポーティングおよび可視化ソフトウェア製品が、ノートPCやデスクトップPCとモバイルデバイスの間でデータをシームレスに移動させる効率的な方法を提供しているわけではない。しかし、増大するモバイル需要に柔軟に対応できる適切なBIプラットフォームを選択することによって、そうした問題を解決することは可能だ。
最終的なゴールは、iPadをはじめとしたスマートデバイスで指先を滑らすだけで操作可能な、ブラウザ向けのデータ可視化を実現することである。適切なベンダーを選ぶために、ある程度のリサーチは必要だが、しっかりしたベンダーを採用できれば、後日、無駄な時間を繰り返す必要がなくなる。
激しく変化する今日のビジネス環境に置いては、革新的でなければ後れと取ってしまう。モバイルBIは、投資する意思のある企業にとって大きなチャンスであり、十分な見返りが期待できるものだ。標準技術となる前にモバイルBIを取り込めば、従業員の生産性は向上し、即応性は高まり、会社は競争優位の最先端に立てるだろう。
本稿筆者のスコット・ゴールデン氏は、米BIコンサルティングファームであるDecision First Technologiesの共同創業者でサービス担当副社長。SAP BusinessObjects Partner of the Yearを7回受賞している。ビジネスインテリジェンス分野での経歴は15年以上で、中小企業から大企業までさまざまな業界のクライアントに向けて効果的なBI戦略の分析、開発、導入を進めている。
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