筆者が考える真の疑問は……
次は「Windows 10」? それでもMicrosoft製品を買ってしまう本当の理由
Microsoftの製品は、なぜ多くの企業に受け入れられるのだろうか。同社のソフトウェアは高価だし、近年の事業戦略は他社の後追いばかりである。同社の競争優位性について考察する。
今から35年前、まだメインフレームが主役であった時代、エンタープライズソフトウェアは米IBMを中心に選択するのが一般的だった。同社の市場支配力は当時、ジョージ・オーウェルが書いた小説の世界になぞらえられることもあったが、新たなソフトウェアのトレンドとニーズを前にして、徐々に市場の多様性に取って代わられた。
例えば、ERP時代の到来とともに、ドイツのSAPと米Oracleが新たなリーダー企業として頭角を現した。その後、顧客と良好な関係を築くことを目的としたCRMの時代を迎える(Siebel CRM Systems《現Oracle》など)。そしてここにきて、クラウドコンピューティングが脚光を浴び、エンタープライズソフトウェアの新たな舞台背景となった。米Salesforce.comや米NetSuiteの成功は、そうした時代の流れの中にある。
もちろん、こうした新たな“世代”のアプリケーションソフトウェアは、ビジネスに価値をもたらす限りにおいてのみ、その命脈を保ち続ける。その際に重要なことは、「どのソフトウェアベンダーを選択するか」ではなく、その環境において「どのようにソフトウェアを利用するか」なのである。
その視点に立てば、ベンダーの切り替えは、期待する利益をテクノロジーから引き出すためのカギにはならない。実際のところ、ソフトウェアベンダーの切り替えは非常に厄介だ。ベンダーの中には、必要な技術を全て提供できる“ワンストップショップ”を標ぼうしているところもある。その点、米Microsoftは、特に総所有コスト(TCO)が最優先の課題である場合、リーダー企業として過小評価され過ぎてはいないだろうか。以降では、Microsoftを選択すべき幾つかの理由について考えてみたい。
Microsoft製品を買うことのメリット
テクノロジーをビジネスに活用する次のトレンドについて議論するとき、Microsoftは批判の対象となることが多い。つまり、クラウドやCRM、ERPなどの主要なビジネスアプリケーション分野では革新性に欠け、常に後追いになっているというのだ。多くのIT専門家らは、もはやイノベーターではなく、単なるフォロワーにすぎないMicrosoftの製品を選定することにどういったメリットがあるのか、と首をかしげる。
クラウドに関しても、Microsoftの“中途半端”なアプローチに批判は絶えない。実際、同社はクラウドベースの製品を提供しているが、クラウドとオンプレミスの両方をカバーするライセンスでなければ、一部の機能が提供されないといったことも少なくない。その他にも、同社の一貫性のない不明瞭なパートナー戦略に疑問の声がある。まるで、Microsoftは自社製品に集中するため、販売とサービスをアウトソースしたかのようだ。
しかし、今日の市場を支配する先端テクノロジー(モバイル、ソーシャル、クラウドコンピューティング)のリーダー企業ではないとしても、Microsoftは市場から学ぼうとする姿勢があり、いったん先行者に追い付けば、その後は盤石の態勢を築くことができるのだ。その代表歴な例が、クラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」や、過去4年間で市場シェアを3倍に拡大した「Microsoft Dynamics CRM」である。
Microsoft製品の競争優位性には、次の3つの側面があると筆者は考える。
1.幅広い製品ラインアップ
恐らく、Microsoftは企業が必要とするあらゆる領域にわたって高品質なソフトウェアを提供する唯一のベンダーだろう。具体的には、次の5つの分野をカバーしている。
- エンドユーザー(デスクトップ、タブレット、スマートフォン)
- インフラストラクチャ(データセンター、セキュリティ)
- データベース
- フレームワーク(Webデザイン、プログラミング言語)
- ビジネスアプリケーション(ERP、CRM)
企業は、あたかも積み木を組み立てるように、必要なピースを買ってきてそれらをうまくつなぎ合わせればよいだけだ。システムの実装を高速化し、保守性を高めることで、ビジネスの俊敏性とユーザーエクスペリエンスを向上する。全ては最終的にコストの削減へつながる。
2.労働コストの低減
Microsoftのパートナー戦略と広範な分野に及ぶ影響力は、競争の激しい専門家市場を生み出し、労働コストを押し下げた。例えば、Webサイト「PayScale」によると、カナダにおけるABAP(※)プログラマーの給与の中央値はおよそ8万1000ドルだが、.NETプログラマーは5万5000ドルである。この数値は、61人のABAPプログラマーと1160人の.NETプログラマーを調査したものだが、同市場にABAPプログラマーより、.NETプログラマーの方が多いことを暗示している。それは雇用面においても、優れた人材を迅速に確保できることを意味する。
※ABAP(Advanced Business Application Programming:アバップ):SAPシステムの製作やアドオン開発に用いられるプログラミング言語。
3.クラウドコンピューティング/オンプレミス間の柔軟性
Microsoftは、全ての自社製品をオンプレミスとクラウドの双方に提供すると公言し、それぞれのソフトウェアに互換性を持たせ、企業がクラウドとオンプレミスのシステム間でデータを同期できるようにする考えを明らかにした。どのクラウドベンダーを利用するにせよ、企業は最小限の投資を行えば、クラウド上でソフトウェアを利用できる。それは大きなメリットだ。しかし、ユーザー数がある一定以上に達した後は、オンプレミスの方が経済的なケースもある。
Microsoftの場合、ユーザーを再教育することなくそれを実行できる。ライセンスを最適化することが可能だ。多くの競合ベンダーも、クラウドとオンプレミスで製品/サービスを提供しているが、Microsoftの付加価値はクラウドとオンプレミスの製品間で統合化が可能な点である。それは、クラウドを導入する際の最も困難な課題である。
過去20年以上にわたり、Microsoftは市場に登場した新世代のテクノロジーを全て取り込んできた。対応が遅れることはあっても、必ずやり遂げてきた。Microsoftの3つのユニークな特性は、同社製品の総所有コストが競合他社より低いという事実なのである。つまり、真の疑問は「なぜ、Microsoftにしないのか?」ということなのである。
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