攻撃者とセキュリティベンダーの終わりなき戦い【前編】
短くなるセキュリティ脅威の検出時間、それでもリスクが減らないのはなぜ?
セキュリティベンダーがネットワーク上の脅威を見つけ出すまでの時間は年々短くなっているという。しかし、企業にとってのリスクはそれほど低減されず、場合によっては高まっている。その理由とは?
2016年度の「Ciscoセキュリティレポート」は、サイバーセキュリティの二重性を強調し、さまざまな課題について解説している。より効果的かつ効率的な攻撃手法を模索している脅威の因子と、その変化に対応するセキュリティプロバイダーの終わりなき戦いとして、滞留時間と暗号化について取り上げている。
脅威を検出するまでの時間について
Ciscoにとってプラス要素となるはずの統計の1つは、2015年5月以降、同社がネットワークの既知の脅威を検出する平均時間(または脅威の滞留時間)を17時間に短縮していることだ。ただし、この測定基準は脅威の因子とセキュリティプロバイダー間の「駆け引き」を表したもので、特定の時点でどちらが優勢かということを確認する方法として使用されるべきである。そう語るのは、同社でセキュリティビジネスグループのプリンシパルエンジニアを務めるジェイソン・ブルベニク氏だ。
併せて読みたいお勧め記事
セキュリティとプライバシーを巡る諸問題
ランサムウェア(身代金ウイルス)について
「検出時間について当社が重視しているのは、測定基準の『堅牢さ』だ。組織がどれだけ適切に検出していて、どこに改善の余地があるのかを理解するために使用、確立、計測できなくてはならない。検出時間に注意を払わなければ、攻撃者は発見されるそのときまで基本的にネットワークやサーバに対して自由にアクセスできることになる」(ブルベニク氏)
HyTrustでマーケティング担当バイスプレジデントを務めるフレッド・コスト氏は、滞留時間が重要なセキュリティ測定基準であることは認めているものの、「滞留時間は事後対応に使われるものであって、予防対策にはならない」と話す。
「攻撃者と防御者の間でいたちごっこが繰り広げられているので、検出時間は刻々と変化する。企業が抱える課題の1つは、攻撃者の能力の向上だ。攻撃者はネットワークとサーバにアクセスした後、以前よりも巧妙に秘密状態を保てるようになっている。そのため、ユーザーにどのような権限を与えるかについて、より適切なセグメンテーションと制御の必要性が高まっている。特に仮想化とクラウドは、ずっと多くのシステムへのアクセスを可能にする。この対応は重要だ」(コスト氏)
Ciscoは滞留時間をある程度まで減少させることに成功したが、この測定値は最終的に変化するとブルベニク氏は予測する。
「脅威の因子は、自分たちの投資利益率の欠如や減少を認識し、再びネットワークやサーバに対して何か新しいことを試そうとするだろう。防御者は常に正確でなければならないのに対し、攻撃者は一度だけ正確であれば良い」(ブルベニク氏)
この状況が、ボットネットや「Angler」などのエクスプロイトキットの進化で見られることをCiscoは確認している。本セキュリティレポートによると、Anglerを使用している攻撃者は毎日1台のサーバにつき9万人の標的という大規模な攻撃を実施しており、10%の攻撃が成功している。そのうち40%が悪用され、この40%の中の62%がランサムウェアとして機能している。身代金(ランサム)が支払われたケースは2.9%とほんのわずかで、1件当たりの被害額は数百ドルにすぎない。だが、年間では1つのランサムウェア攻撃につき3400万ドルもの被害が出ているのが実情だ。
Ciscoでシニアテクニカルリーダーとセキュリティアウトリーチマネジャーを務めるクレイグ・ウィリアムス氏によると、Angler EKとボットネットの使用方法の進化は、セキュリティ業界の進化と連動しているという。今から5~10年前、ボットネットは相互に接続するサーバが複数組み合わさったものでしかなかった。そのため、ボットネットを駆除するためにホストサーバをブロックするのは簡単な作業だった。だが、攻撃者はAnglerを使用してホストサーバをブロックする作業を非常に難しくする方法を発見した。
「攻撃者は、エクスプロイトをホストするネットワークを極めて巧妙に構成し、攻撃が駆除されるたびにサーバを巡回するようにしている。これはまるで『ヒュドラ』(複数の頭を持つ怪物)のようだ。ユーザーがAngler EKのランディングページにリダイレクトされたとき、そこにあるのはフロントエンドのプロキシサーバだけであるように見えるだろう。だが、その背後では、エクスプロイトをホストしている別のサーバとプロキシサーバがオンラインであることを継続的に確認している3台目のサーバに接続している。次に、トラブルチケットによってサーバがダウンさせられるか、非攻撃者からブロックされるや否や、そのサーバをダウンさせ、別のIPアドレスを持つ別のサーバで置き換える。このように、ヒュドラの頭を1つ切り落としても、別の頭が現れて攻撃を引き継ぐ仕組みになっている。この設計は非常に優れている。今までもこれからも、人間はこのような形で進化していくのだろう。これは今までよりも少しだけ効率的に『悪者』になる方法であるし、まさに現代の犯罪の性質を示しているからだ」(ウィリアムス氏)
後編では暗号化に伴うセキュリティ対策の変更やWebブラウザに対する脅威についてセキュリティレポートの内容を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
4
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
5
AI導入が失敗する“真犯人”は現場のマニュアル 7割が陥る「標準化」のわな
-
6
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
7
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
8
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
9
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
10
ライオンが脱レガシーシステムのパートナーに「Google Cloud」を採用した理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー