なぜ今「ネットワーク分離」なのか【第1回】
古くて新しい「ネットワーク分離」が“要注目技術”に返り咲いた理由(1/3 ページ)
自治体を中心に採用機運が高まる「ネットワーク分離」。技術進化や脅威の変化、国の後押しといったさまざまな要素が、ネットワーク分離を再び表舞台へと引き出した。再注目の背景を探る。
インターネットとLANとを分離する「ネットワーク分離」が最近、情報セキュリティ対策の1つの手法として注目度が高まっている。だが情報セキュリティ対策としてのネットワーク分離は今に始まったことではない。古くは自治体や金融機関において、インターネットアクセス用の独立したネットワークセグメントと専用の端末を設置し、これらを基幹業務用のネットワークと物理的に切り離すことで外部からの情報セキュリティの脅威に備える手法を採用するケースは多く見られた(図1)。
しかしながら、こうした「物理的なネットワーク分離」には幾つかの課題がある。例えばエンドユーザーがインターネットへアクセスする場合、物理的に離れた場所にある端末まで移動しなければならない場合がある。またインターネット接続端末への業務データのコピーをルールで禁止していたとしても、USBメモリやDVDなどの可搬メディアを用いてデータをコピーするなどの抜け道を作られる恐れもある。これらの対策のために別のコストが掛かったり、物理的に切り離された2つのネットワークや端末をそれぞれ別々に管理しなければならなかったりと、利便性や管理面、コスト面での課題も多い。
近年では仮想化技術を用いることで、セキュリティを担保しつつもこれらの利便性や運用管理面における課題の解消が期待できる「仮想的なネットワーク分離」の手法も確立されてきた(図2)。それに加え日本年金機構の個人情報流出事案で顕在化したように、急速に巧妙化、複雑化するサイバー攻撃によって従来型の情報セキュリティ対策だけでは個人情報や機密情報の略奪リスクから業務システムを守ることが困難だという認識が広まった。こうした背景から、ネットワーク分離があらためて注目を集めるようになってきたといえる。
2016年上半期「セキュリティ」記事ランキング(2016年1月1日~2016年6月20日)
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「標的型攻撃」が従来型セキュリティ対策に再考促す
企業や組織での日常業務において、インターネット接続によるWeb閲覧やメールの利用は必要不可欠になっている。従来はファイアウォールや各種フィルタリング(ゲートウェイ)、マルウェア対策ソフトなどによって外部からの脅威に対応してきた。だが昨今では「標的型攻撃」といわれる、これまでのサイバー攻撃とは一線を画した、より巧妙で技術的にも高度な攻撃が年々増加傾向にある。
情報処理推進機構(IPA)によると、2015年4月から9月の間に寄せられた標的型攻撃に関する相談は248件だった。その内、標的型攻撃への対処を支援するIPAの専門チーム「J-CRAT」が支援に当たった事案が104件。この104件の組織ごとの内訳は、独立行政法人が16件、社団・財団法人41件、一般企業19件、その他公共機関などが28件だった。
日本年金機構をはじめとする、最近になって情報漏えい事故を起こしてしまった企業・団体を確認してみると、一般企業よりも高いセキュリティレベルを求められている組織が少なくない。現在考え得る限りの情報セキュリティ対策を十分施しているにもかかわらず、情報漏えいに至ってしまっていることが大きなポイントだ。このことは、これまでの情報セキュリティ対策手法だけでは、標的型攻撃から業務システムや機密データを確実に守ることが困難であることを物語っている。
個人情報の大規模漏えいがあった日本年金機構の発表によると、個人情報流出事案の対応費用は実に10億円に上る。金銭的な問題もさることながら、社会的な信用の失墜も、本事案以降の活動に大きな影響を与えている。当然ながら一般企業とて対岸の火事では済まされない。前述のIPAの発表では、2015年4月から9月にJ-CRATが標的型攻撃への対処を支援した一般企業は19件と全体の18%を占めている。標的型攻撃の被害は、決して人ごとではないのだ。
このような大規模な個人情報の流出事案を受け、IPAは「マルウェア感染を前提とした情報セキュリティ対策と運用の徹底」を呼びかけている。日々急速に巧妙化、複雑化する標的型攻撃によるマルウェア感染を完全に防ぐことは難しい。いざ感染した場合にも被害を最小限に留めるという観点で、情報セキュリティ対策におけるシステムの見直しと運用の徹底が求められている。
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なぜ今「ネットワーク分離」なのか
インターネットとLANを分離する「ネットワーク分離」が再び脚光を浴び始めた。その背景には何があるのか。実現の具体策は。徹底解説する。
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