ALMベンダーの動向を探る:第4回 日本HP
ビジネス駆動型ALMで目指す“アプリケーション品質の向上”
ユーザー要求に合致しないシステムは“無用の長物”となり、その投資も回収できなくなる。こうしたビジネスとITのギャップはシステムの寿命を縮め、企業の体力も浪費する。ALM導入はその解決策となるだろうか。
アプリケーションの寿命を左右する重要な要素の1つに「アプリケーションの品質」が挙げられる。その品質低下を招く要因は、開発から運用・廃棄までのライフサイクルの中でさまざま存在する。例えば、ユーザー要求を正確に反映していない設計書を基に開発した場合、その後のユーザーテストで不具合が見つかると大幅な手戻りが生じる。また、品質の低いアプリケーションはその運用段階で、不具合の修正を常に余儀なくされたり、仕様変更に柔軟に対応できない事態に陥ったりすることもある。
ビジネスとITのギャップを解消する
日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)のHPソフトウェア・ソリューションズ統括本部 ビジネス・テクノロジ・ソリューションズ事業本部 マーケティング部 岡崎義明氏は「業務アプリケーションに求められる品質とは“いかにビジネスに貢献できるか”にある」と語る。また「ITの成功がビジネスの成功とは限らない」と指摘。例えば、設計仕様書の通りに業務アプリケーションが稼働しても、その仕様自体が実際のビジネスプロセスと合致していないと、結局は使われなかったりすることもある。その場合、企業が投資したコストは無駄なものになる。
今回は、日本HPのALMソリューションを紹介する。同社は、ITによるビジネス成果を最適化させる「BTO(Business Technology Optimization)」をコンセプトに掲げ、ビジネスとITとのギャップを解消するソリューションの提供を目指している。同社のALMソリューションも同様に「ビジネス側からの要求を正確に実装する業務アプリケーションの開発・運用を支援する」というアプローチを取っている。
“西暦2000年問題”以降、急激に変化した環境
岡崎氏は「業務アプリケーションを取り巻く環境は“西暦2000年問題対応”を境にして、急激に変化した」と語る。この10年の間にWeb 2.0やWebサービス、アジャイル開発といった新しいサービスや開発手法も登場した。これにより、既存のクライアントアプリケーションと同等のパフォーマンスを得られるWebアプリケーションが企業の業務アプリケーションとして活用されている。また当時改修したシステムの中には、再構築する時期に差し掛かっているものも多い。岡崎氏は「さまざまな新しい技術が生まれており、ITがビジネス的な重要性を考えるとアプリケーションを最新化するべき時に来ている」と語る。
さらに岡崎氏は「ALMは一般に、SDLC(ソフトウェア開発ライフサイクル)と混同されがちだ。しかし、実際にはアプリケーションの企画から開発、運用までがアプリケーションのライフサイクルである。ALMソリューションにおいては、このライフサイクル全体を通してITが最適なビジネス成果を提供するようにしていく必要がある」と強調する。その上で、日本HPが提供するALMソリューションでは「ライフサイクル全体の移行を管理でき、ビジネスの要求に合致するアプリケーションの開発・運用を実現するために必要なプラットフォームを提供している」と語る。
ビジネス駆動型のALMソリューション
岡崎氏によると、アプリケーションの最新化を支援するBTOのアプローチには3つのポイントがあるという。
- ビジネスとの整合性を維持してビジネス成果を保証する
- アプリケーションライフサイクル全体の移行を管理する
- アプリケーションの基盤となる「機能」「性能」「セキュリティ」を保証する
日本HPのALMソリューションはポートフォリオ管理や要求管理、品質・性能保証、サービスレベルや変更管理など、ライフサイクル全体を通じたすべてのアプリケーション資産を管理する「HP Software」製品群によって構成される。
同社のALMソリューションでは「IT戦略の策定」「アプリケーション開発」「アプリケーション運用」の3つのフェーズを連携させ、その全体を統合的に管理する。例えば、「HP Performance Center」と「HP Business Availability Center」の2つがデータ連携することで、業務アプリケーションの開発およびリリース後の運用を通して、アプリケーションのパフォーマンスを統合的に管理できる。また、「HP Service Management Center」では、運用中に発生したバグやトラブルに関してユーザーから受けた修正要求を「HP Project and Portfolio Management Center」と連携させ、そのバグ修正の情報を「HP Quality Center」(以下、Quality Center)へ引き継ぐことも可能だ。
| 適用フェーズ | 製品名 | 概要 |
|---|---|---|
| IT戦略 | HP Project and Portfolio Management Center | ビジネス要件を集約して、ITプロジェクト全体のポートフォリオ管理を行い、ライフサイクル全般にわたる統制管理を実施 |
| HP SOA Center | サービスの再利用を促進する「SOAガバナンス」、リスクを低減する「SOA品質」、サービスレベルの監視を行う「SOA管理」の3つのアプローチで企業のSOA環境全般の包括的な管理を行う | |
| アプリケーション開発 | HP Quality Center | 品質管理全般にわたるテストプロセスの標準化と自動化を促進し、ビジネス要件に整合したプリケーション開発を支援する |
| HP Application Security Center | アプリケーションのライフサイクルのあらゆる段階でセキュリティテストを可能にする | |
| HP Performance Center | 負荷・性能検証テストにおける検証、分析、診断、チューニング、キャパシティープランニングなどの機能を提供 | |
| アプリケーション運用 | HP Data Center Automation Center | ネットワークやサーバ、ストレージ全般にわたる変更管理、プロビジョニングなど、運用プロセスの自動化を支援する |
| HP Service Management Center | HP Universal CMDBによる構成管理データベース機能を軸として、部署間の作業連携を促進する | |
| HP Business Availability Center | ITインフラからビジネスプロセスまで、各構成要素をビジネスとの関係性と価値の観点から、監視と計測を実施する | |
| HP Operations Center | 異機種混在のIT環境での可用性、イベント、システムパフォーマンスの監視、制御、分析を実施する |
ユーザー要求とテスト間の矛盾を防ぐ
同社のソリューションにおいて、アプリケーションの品質管理の中核となるのがQuality Centerだ。Quality Centerは、要件定義やテスト資産などの情報を単一のリポジトリで管理することでユーザー要求の変更に伴うテスト工程の変更に柔軟に対応でき、テストで発生した不具合の原因を迅速にトラッキングすることが可能だ。これにより、開発段階で発生する要件定義プロセスの変更とそれに伴うテストプロセスの変更を双方向で確認して両プロセスの矛盾を防ぐことができるため、アプリケーションの品質が向上する。
ビジネスユーザーを支援する機能
また岡崎氏は「ビジネスに貢献するアプリケーションを開発するためには、その開発工程以前の“ビジネス戦略を策定する段階からの取り組み”が重要だ」と説明する。同社のALMソリューションについては「ビジネスユーザーがその導入メリットを得られる部分に注力している。ビジネス戦略やIT投資を決める段階で役に立つ機能を提供する」と語る。
例えば、IT戦略の策定フェーズではHP Project and Portfolio Managementによって、ビジネス部門から情報システム部門に寄せられるすべての要件を集約し、一元管理する。また、要求の進ちょく状況を可視化し、その内容やカテゴリに応じて必要となるビジネスプロセスを自動生成することが可能だ。さらに、プロジェクトをビジネス要求やリソース、コストなどの多角的な視点から分析できるポートフォリオ管理機能を活用すると、プロジェクトに関する正確な情報共有やビジネス要求への投資の優先付けを行うことができる。
SOA適用にも対応
現在の企業システムではサービス指向アーキテクチャ(SOA)を活用して、業務アプリケーションと外部Webサービスを連携させる機会が増している。この点について、岡崎氏は「連携するWebサービスやAPIのガバナンスが難しい点がネックだ」と指摘する。例えば、第三者が作成した外部のアプリケーションやWebサービスの連携をする場合、それらをセキュアでかつ安定的に稼働させるためには、不意に変更されることを防ぐ必要がある。そのため、そうした変更に対するポリシーを設け、その管理を行うことが重要だという。その点、日本HPのALMソリューションではSOA Centerを活用することで「実行時のポリシー管理やサービスとそれをサポートするインフラストラクチャの系統的管理、プロバイダーとサービス利用者との間のサービスレベル管理、可用性やパフォーマンス管理などが可能だ」と説明する。
今後の方向性は?
岡崎氏は「アプリケーション品質という観点では、テストデータ管理が今後重要となる。また、オフショア開発などの分散環境における開発ではデータセキュリティの面が課題だ」という認識を示す。
同社ではソフトウェア製品群のSaaS(Software as a Service)型ソリューションに注力している。2008年からHP SoftwareのSaaS版「HP SaaS」を提供開始している。現在、Performance Center、Business Availability Center、Project and Portfolio Management Center、Quality Center、Service Management CenterなどをSaaS形式で提供している。同社では、初期投資や管理運用、高度な技術力などが求められるIT戦略立案やテスト・開発、運用管理といったALM領域において、こうしたSaaS形式のソリューションに対する需要を見込んでいる。岡崎氏は、企業がSaaS版を導入する理由について「初期コストの削減と短期間で運用を開始できること、日本HPによる運用監視体制のサポートに魅力を感じているからだ」と説明する。
また、同社には導入支援サービスやコンサルテーションを行う「プロフェッショナルサービス組織」がある。こうしたサポートサービスを提供することで、ALMソリューションの導入・活用を支援するという。
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