モバイルアプリケーションがITの次の波になるとすれば、企業がその導入と活用で失敗しないためにはどうすればいいのだろうか。
わたしは5年に一度くらいの割合で静かな時間を過ごせることがある。そんなとき、わたしにとって理想の仕事とは何だろうかと思いを巡らせる。わたしが理想とするのは、面白く、しかもストレスが大きくない仕事だ。そう考えるといつも、IT専門の未来学者がわたしにとっての理想の仕事だという結論に行き着く。データを収集し、IT専門家や企業のCIOに取材し、IT分野の次の大きなトレンドについて仰々しく宣託を下す──そんな自分の姿を想像するのだ。
プロ野球で高額年俸を稼いでいる好打者のように3回に1回の割合で予想を的中させたなら、わたしはIT未来学者のスーパースターになれるだろう。ただ問題は、ITの次の波を予測できるような先見の明をわたしは持ち合わせていないのではないかということだ。
しかし、わたしが自信を持って予想できることがある。それは、モバイルアプリケーションはCIOが受け入れなければならない、それも早急に受け入れなければならないものだということだ。この予測は、以下の4つの現実に基づく。
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わたしの予想通り、モバイルアプリケーションがITの次の波になるとすれば、その導入と活用で失敗しないためには、どうすればいいのだろうか。
わたしは、“キラーアプリ”となるようなモバイルアプリケーションを開発しようと決めた。どういう意味かといえば、携帯端末からいつでもどこでもアクセスできるアプリケーションで解決可能な、優先度の高い問題あるいは目標を特定するということだ。残念ながら、一般向けのモバイルキラーアプリに関しては、ほかの人々に先を越されてしまった。スマートフォン用の電子メール機能も既に誰かが開発してしまった。GPSデータも既に誰かがスマートフォンとリンクしたので、最近オープンした人気のバーベキューレストランに行くのにもスマートフォンが道案内してくれる。
こういった問題が解決済みなので、わたしとしてはニッチなキラーアプリにフォーカスしたい。つまり、わたしの会社の業務改善に直接役立つようなアプリケーションだ。そのようなアプリを特定するには、新たに導入する技術で付加価値を実現するためにわたしが常々やっていることを実行する必要がある。すなわち、社内および社外のユーザーのニーズを理解し、どうすればITがこれらのニーズに対応できるかについてアイデアを出し合い、ITがもたらす価値の可能性を実験で検証することだ。
しかし、モバイルアプリの分野でこれらを実行するに当たっては、1つの重要な修正を加える必要がある。わたしの思考回路をモバイルの世界に合わせて再設定する必要があるのだ。つまり、社内および顧客ベースの隅々にまで目を向け、「外回りをしているのは誰なのか?」「これらの従業員の仕事の内容は?」「どんなアプリケーション(いつでもどこでもアクセスできるアプリケーション)が彼らの仕事に役立つのか」といった問題に着目するということだ。
例えば、わたしの会社の販売スタッフは1日の大半を社外で過ごし、顧客と会って商談の内容をメモに書き留めている。彼らは会社に戻ると、そのメモを見ながら交渉の記録を文書にまとめるのだ。文書化された交渉記録は最終的に提案書や価格表という形になる。しかし、このプロセスではミスが生じやすい。販売スタッフが文書化した交渉記録が既存の提案書や価格表と異なったりする可能性があるのだ。こういった差異は、間違った請求や顧客の不満の原因になりかねない。このプロセスを改善するためにITを活用しようと思えば、それはモバイル技術、すなわち外回りする販売担当者に付いていける技術でなくてはならない。
というわけで、われわれは販売スタッフがその場で提案書と価格表を作成・更新するためのキラーモバイルアプリの開発に取り掛かった。従業員の間での普及を促すために、開発に当たっては使い勝手とシンプルさを重視した。初期プロトタイプを使って実証試験を行い、ユーザーからフィードバックを得た。また開発の初期段階から販売部門の幹部にも参加してもらい、彼らと緊密に共同作業を進めた。こういった取り組みの結果、わたしたちを悩ませてきた問題を解決するモバイルソリューションを首尾よく配備することができた。
すべての問題にモバイルアプリケーションが解決策として適しているわけではないが、ネットワーク技術と端末技術の融合は、イノベーションの担い手としてITワーカーの役割を確固たるものにする可能性がある。わたしが目指しているのは、そんな可能性を現実にするようなキラーモバイルアプリだ。
本稿筆者のニール・ニコライゼン氏は米HeadwatersのCIO兼戦略計画担当副社長。
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