在宅勤務を取り入れた中小企業が実感したリアルな課題とメリット本気で考えるテレワーク導入【第3回】

クラスメソッドは7月初旬にBCP対策を兼ねた在宅勤務体制を全面展開する。その最大のきっかけは東日本大震災だった。策定と導入の経緯、直面した課題など、本格稼働を前にした同社社長、横田 聡氏が現場を語る。

2011年06月20日 09時00分 公開
[谷崎朋子]

BCP策定を終えたのは震災直前

 「経営者のビジョンは常に先を行くが、現場スタッフは今日やるべき仕事をまず考えるので、ギャップがすごい。海外進出するぞと意気込んでも、いや今日は新宿区のお客さんと打ち合わせが……と引かれてしまう。しかし、今回の震災によって世界が一変した。そのことを社員も自分も強く感じた」

 ここのところの経済不況で、何かを変えなければ生き残れないという漠然とした肌感覚はあった。それが、ここに来て一気にリアルになった。クラスメソッドの代表取締役社長、横田 聡氏はそう話す。

写真 クラスメソッド 代表取締役社長 横田 聡氏

 東京都新宿区に本社を構えるクラスメソッドは、社員45人ほどの企業情報システム開発会社だ。5年ほど前にISMSを策定し、バックアップや二重化構成、施錠管理や入退室管理など、万全の運用体制で顧客情報を管理している。オフィスには社員PCが約100台、サーバが約20台配置されている。故障時の予備PCも含まれるが、システム開発では1人で数台使用するので、PCの台数は他業種よりも多めだ。

 リモートアクセスソリューションについては、半年以上前から検討していた。「優秀な人材は地方にも多い。東京に引っ越してきてもらえればいいが、自宅が農家だったり介護をしていたりする場合もある。そうした人たちを戦力に加えるため、前々からリモートアクセスを導入したいと考えていた」(横田氏)。また、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)のために、月に1、2回の在宅勤務や、社外からの安全な社内リソース利用なども検討していた。

 折しも、東京都が「東京都中小企業BCP(事業継続計画)策定支援事業」の参加者を募集開始した。早速、同社の事業管理運営チームが応募し、当選して第1期生となった。

 BCP専門のコンサルティング支援を受け、策定が終了したのは2011年2月だった。その後、「アプライアンス、ソフトウェア、ASPなどを試用版で試したり、見積もりを取ってリモートアクセス製品を比較検討したりした。最終的にソニックウォール製品に決めたのは3月初旬だった」(横田氏)。地震は、その直後に起こった。

「一気に進めないとダメ」のスイッチが入った

 震災からほぼ1週間、社員の8割近くは在宅勤務することになった。その際はリモートアクセスASPの無料お試し版を導入し、実用性を検証した。「ほぼ全社員に在宅勤務してもらうタイミングが、震災によって突然訪れた」。緊急事態をチャンスと捉えた同社は、検証しながら課題を洗い出し、現在はその結果を基に本格展開時のルール作りや製品の設定に取り組んでいる。

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