ITシステムの冷却対策に役立つ3つのホワイトペーパーホワイトペーパーレビュー

ITシステムの電力消費量の3分の1以上を占めるといわれる「機器冷却」。企業の省電力対策として注目されているITシステムの冷却対策に役立つホワイトペーパーを紹介する。

2011年07月07日 09時00分 公開
[翁長 潤,TechTargetジャパン]

 2011年7月、東京電力と東北電力管内における電力使用制限令が発動された。今後予想される電力不足の問題に頭を抱えるシステム管理者は多いことだろう(関連記事:読者調査で分かった、計画停電後に企業が実施している電源対策)。

 特に、データセンターやマシンルームにおける「冷却対策」省電力化に高い関心が集まっている。なぜなら、サーバストレージ、ラックなどの機器を冷却するシステムの電力消費量が、企業のITシステムの電力消費量の3分の1以上を占めるといわれているからだ。

 また、2011年5月に開催された「第3回 グリーンIT&省エネソリューションEXPO」でも、冷却に関する製品やソリューションが多く出展されていた(関連記事:データセンターのさらなる省電力対策が注目されたグリーンIT&省エネEXPO)。本稿では、そうしたITシステムの冷却対策に役立つホワイトペーパーを紹介しよう。

データセンターの冷却能力チェックリスト

photo 提供:エーピーシー・ジャパン(21ページ)

 自社のITシステムに最適な冷却環境を整備するためには、その前提条件として「マシンルーム全体やサーバラックなどの機器の現状を正確かつ詳細に把握する」必要がある。

 このホワイトペーパーでは、データセンター冷却の潜在的な問題点を明らかにするためのチェックリストを紹介している。チェック項目は「冷却容量の検査」「CRAC(精密空調装置)のチェック」「主冷却回路のチェックおよびテスト」「通路温度の記録」などの10項目。また、検査の測定値を記録したり、IT機器から発生する熱を除去するのに必要な空気流量を求める計算式などを利用した解析を可能にするテンプレートを提供する。

 それらを活用することで、現在のデータセンターの状態を査定し、自社のデータセンターの総合的な冷却能力や潜在的な課題の発見、その後の改善策の立案などの参考となるだろう。

省電力サーバ/ラック冷却対策の相乗効果を検証

photo 提供:デル(23ページ)

 CPUの高速化とマルチコア化、メモリの大容量化などが進み、サーバの性能が向上した。同時にその消費電力や発熱、コスト増の問題が注目されるようになった(関連記事:ブレードサーバ時代の熱対策とは?)。

 このホワイトペーパーでは、こうした問題を解決するためには「省電力サーバ」「省電力性に優れた冷却装置」などの導入が必要だと説明している。その上で、デルの省電力ソリューション「Dell Energy Smart Architecture」とエーピーシー・ジャパンの省電力冷却ソリューション「InRow冷却システム」を紹介している。

 このホワイトペーパーによると、Dell Energy Smart Architectureでは、特にファンの消費電力やエアーフローの改善によって、総使用電力量の削減や冷却の効率化を実現しているという。また、ブレードサーバメーカー3社のベンチマーク比較が紹介されている。さらに、InRow冷却システムを利用した場合、「一般的な電算室用空調機と比べて、1年間の電気使用量が60%以上削減できた」という検証結果が示されている。

3カ月で24%の空調消費電力を削減した事例

photo 提供:日本アイ・ビー・エム(4ページ)

 システム管理者にとっては消費電力の削減も重要だが、運用コストの削減も重要な課題である。このホワイトペーパーでは、データセンターの省資源・省エネ化に着手した日本生命が、新たな設備投資をすることなく、3カ月で空調消費電力の24%を、金額換算で年間1800万円の削減効果を実現したという事例を紹介している。

 具体的には、日本アイ・ビー・エムの「データセンター空調最適化ソリューション」を採用し、IT機器における電力消費量の効率性の改善や熱だまりの発見、設備レイアウトの最適化などを進めたという。IT機器の吸気温度分布や穴開きタイルの位置、空調設備の稼働状況などの現状を調査し、サーマルシミュレーション技術によって温度や気流・圧力の分布を可視化。さらに、最適な空調機の運転台数や風量などを計算して、日本生命のデータセンターに適用した。

 データセンターでは空調設備に限らず、電源供給や免震対策といった安定稼働のための設備投資が求められる。それらの対策を含めたコスト最適化の1例として参考になるだろう(関連コンテンツ:データセンターの省エネ化対策 事例でみる課題解決策)。

 今回紹介したホワイトペーパー以外にも、ホワイトペーパーダウンロードセンターでは、技術文書や製品資料、事例紹介などITシステムにおける省電力対策(電源、空調、ラック)に関するホワイトペーパーを掲載している。ぜひダウンロードしてご活用いただきたい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「SATA接続HDD」が変わらず愛される理由とは

HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

市場調査・トレンド プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

クラウド統合を見据えたメインフレームのモダナイズ、3つの手法はどれが最適?

長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。