スマートフォンやタブレットを狙うマルウェアが急増する一方、実際には脅威にならないとの見方も根強い。後編は、モバイルセキュリティ製品が本当に必要なのかどうかを考察する。
前編「急増するAndroidやiOS向けマルウェア、ただし危険性には疑問の声も」では、スマートフォンやタブレット端末などを狙ったマルウェアやマルウェア対策製品の現状を解説した。
スマートデバイスを狙うマルウェアが増加しているのは紛れもない事実だ。だがそうしたマルウェアの脅威について懐疑的な見方をするユーザーや専門家は少なくない。スマートデバイス向けのセキュリティ製品は本当に必要なのだろうか。後編はその必要性を検証する。
スマートデバイス向けのモバイルセキュリティ製品の提供に乗り出す企業は増え続けている。SymantecやMcAfee、Kasperskyといった大手セキュリティベンダーだけでなく、モバイルセキュリティ専業のLookOut Mobile Securityなども参入するなどプレーヤーは数多い。
Symantecのモバイル部門でグループ製品マネジャーを務めるマーク・カノック氏は「特にAndroidを狙ったマルウェアの増加が著しいことが、モバイルセキュリティ製品急増の背景にある」と指摘する。
具体的な数字はベンダーによって幅があるが、Androidマルウェアが急増しているというのは各社共通の見解だ。Symantecは、Androidを狙ったマルウェアの発見数が2010年に50件だったのが2011年は200件に増えると推計している。Lookoutは、2011年上半期だけでマルウェアが80件から400件に増加したと発表。Kasperskyは発見した69件のAndroid向けマルウェアに800もの亜種があったと報告している。
だが今でも「ベンダーのこうした主張は誇張にすぎない」と疑いの目を向けるユーザーや専門家は少なくない。Kaspersky Labsのマルウェア研究者であるティム・アームストロング氏は「タブレット端末はクライアントPCと違ってマルウェアに感染しにくい」という認識を示す。スマートデバイスに関するオンラインフォーラムには、「ユーザーがアプリにroot(管理者)権限を与えない限り、Android端末がマルウェアに感染することはない」というユーザーの意見もある。
SPCSと名乗るユーザーは、フォーラムサイトの「Android Lounge」にこう書き込んだ。「Androidは非常にセキュアなLinuxベースのシステムだ。保護された領域の中だけでアプリを実行するサンドボックスを採用しており、root権限はユーザーが意図しなければ取得できない。こうした仕組みで強固な安全性を実現しているため、マルウェアが感染するのは難しい」
一部のAndroidユーザーからは、ウイルス対策製品によってメモリやバッテリーの消費量が増大することを懸念する声も出ている。ただし、この点についての意見はユーザーによってまちまちのようだ。
Adobe Flashを悪用するケースも浮上している。McAfeeの上級グループマネジャーであるギャリー・デイビス氏は「攻撃者が好んでFlashを標的にするのは、FlashがAndroidを含む多種多様なOSで実行されており、被害が拡大しやすいためだ」と解説する。
例えばAdobe Systemsは2010年秋に、Flash Playerの全エディションに存在する脆弱性を突いた攻撃を確認した。該当するFlash PlayerはWindowsやMacintosh版に加えてAndroid版も含んでいた。
さらに同社は2011年6月、Gmailユーザーのログイン情報の奪取に、Flash Playerの別の問題が利用されていたことも明らかにした。
英市場調査会社Juniper Researchのアナリストであるナイティン・バース氏は「OSベンダーが脆弱性を迅速に解決できるかどうかにかかわらず、モバイルセキュリティ製品は『必須』だ」と強調する。「ベンダーと共同実施した調査の結果を見ると、セキュリティパッチや脆弱性の悪用防止策で抑えられるマルウェアの悪影響は、潜在的リスクのほんの一部にすぎないことが明らかになった」という。
一方、MicrosoftはWindows向けに無料提供しているマルウェア対策ソフト「Microsoft Security Essentials」(MSE)のエンジンを、タブレット端末への搭載が見込まれる次期OSの「Windows 8」に組み込む計画だ(Windows 8については「IT管理者がチェックすべきWindows 8の機能と仕様」も参照)。
モバイル端末にウイルス対策ソフトが必要との見方には依然として異論がある。だが「ある程度の対策をしても悪くないのでは」という考えに傾くユーザーは増加傾向にあるのは確かだ。
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