脆弱なアプリケーションやプラグインが狙われる
あのショッピングサイトがサイバー攻撃の標的になる技術的理由
ECサイトを狙った攻撃が増えている。決済情報などの機密データを有しているだけでなく、サーバが脆弱である場合が多いため、攻撃者にとって格好の標的になっているのだという。新たな調査リポートで明らかになった。
クレジットカードの決済情報など機密データを取り扱うEC(電子商取引)サイトを標的とした攻撃がますます増えている。ECサイトを容易かつ広範に不正利用するための手段として、脆弱なアプリケーションやサードパーティー製プラグインが格好の標的になっている、と新たなリポートが伝えている。
米Trustwaveは、計691件のデータ侵害について世界24カ国の企業から情報収集し、「2014 Global Security Report」(2014年グローバルセキュリティリポート)にまとめた。データ侵害件数は、前年のリポートから50%以上の増加となった。また、攻撃の多くは金銭的利益を狙ったものであることが分かった。
同社が調査した全攻撃のうち3分の1は、POS(販売時点情報管理)システムを狙ったもので、盗まれた全データの19%はPOS取引で使用された決済カードのものだった。Trustwaveで脅威インテリジェンス担当マネジャーを務めるカール・シングラー氏は、「POS攻撃が依然としてまん延している一方で、多くの国で“Chip-and-PIN”と呼ばれるクレジットカード決済技術の採用が増加している。Smart Card Alliance(米国の非営利のスマートカード推進団体)の推定では、ヨーロッパの一部で、端末の95%がこの技術に対応している。そのような環境から決済カードのデータを盗むことは、もはや容易な試みではない」と述べている。
その結果、攻撃者はこのところ、目的達成が容易なターゲットを狙うようになっているという。実際、Trustwaveのリポートによると、攻撃の54%がECサイトを狙ったものであり、3分の1強のデータがこのようなECサイトの決済カード情報から盗まれている。
ECサイトなどのWebサイトへの攻撃は、機密データが保存されているというだけでなく、サーバが脆弱である場合が多いという理由から、攻撃者にとって魅力的だとシングラー氏は説明する。実際、Trustwaveが2013年にスキャンした全てのアプリケーションの96%に、深刻な脆弱性が少なくとも1件は含まれていた。同氏はこうした脆弱性について、データ漏えい、リモートコード実行、権限昇格攻撃、さらにはセキュリティコントロールの回避を許可しやすいと定義している。
こうした傾向がみられるのは、多くの組織でセキュリティが重視されていないためだ。特にアプリケーション開発者は、基本的なセキュリティ対策を実装するよりも、企業の競争力を高める機能を製品に盛り込むことにこだわっていることが原因である、とシングラー氏は主張する。その結果、昔から良く知られており、多くの対策が確立されているはずのSQLインジェクション攻撃が、Trustwaveの記録によると、全てのシステムへの侵入の8%をいまだに占めている。
同氏によれば、もっと多くの企業、特に社内にセキュリティ専任者がいないような中小企業は、第三者機関にコード監査を依頼したり、あるいは無償で提供されているオープンソースのセキュリティツールを使用したりするだけでも、基本的なアプリケーション脆弱性をスキャンすることができるという。だが、それでも組織がより安全な開発プラクティスを採用するまで、見掛け倒しのソフトウェアセキュリティは、今後も問題として残り続ける可能性はある。
「アプリケーション開発において、セキュリティは一般的に後回しにされ、軽く扱われる傾向にある。そうした理由から、ほとんど全てのアプリケーションは、少なくとも1つは深刻な脆弱性を残したままリリースされる」(シングラー氏)
プラグインのセキュリティも問題
同リポートによると、脆弱なアプリケーションだけが、企業システムとWebサイトのセキュリティ侵害を招いているわけではないという。Trustwaveは、セキュアなWebゲートウェイ技術により収集されたデータを使用して、同社が検出した全てのエクスプロイトの85%に、少なくとも1つのサードパーティー製のプラグインが関与していたことを明らかにした。
特に、米OracleのJavaアプレットは依然として、多くのWebベースクライアントの脅威の中心にあり、さまざまなJavaの脆弱性を悪用した攻撃要因の78%を占めている。比較すると、ゼロデイ攻撃に対するAdobe Flashの脆弱性は2013年に3件見つかったが、これらのFlashの脆弱性を悪用していたのは、Trustwaveが発見したエクスプロイトの5%にすぎなかった
「FlashからHTML5へ移行する流れは、主要なモバイルプラットフォームがFlash非対応になってきたことで加速され、米Adobe Systemsのメディアプレーヤーを悪用するエクスプロイトの数は今後さらに少なくなるだろう。しかし、企業は完全にFlashを無効にすることを検討すべきだ」とシングラー氏は述べる。Trustwaveのリポートでは、エクスプロイトの2%がAdobe Readerの脆弱性を狙っていると報告されている。こうした脆弱性を少なくするために、別のPDFリーダーを利用することも企業のリスクを軽減する選択肢の1つかもしれないが、必ずしも代替のPDFリーダーの方が安全であるとは限らない、とシングラー氏はいう。
「サードパーティーのプラグインの多くには脆弱性がある。それと同じように、サードパーティーのPDFリーダーにも脆弱性が含まれる。FlashとReader、そしてJavaが多くの攻撃者のターゲットになっているという事実は、Flashを無効にして別のPDFリーダーに移行することが間違いなく有効であろうことを意味する。しかし、必ずしも確実な防護策とはいえない」(シングラー氏)
このような措置は役立つかもしれないが、多くの組織やユーザーがいまだに基本的なセキュリティ上の慣行にすら従っていないと、同氏は警告する。例えば、Trustwaveが検出したシステムへの初めての侵入のほぼ3分の1は、脆弱なパスワードが原因であり、全く安全とはいえない「123456」というパスワードが最も多く使われていたという。
また、セキュリティ侵害10件のうち7件以上が被害に遭った企業ではなく、第三者によって検出されている。シングラー氏はこの統計を引き合いに出し、この現実は多くの企業が侵入検知システムを有効にしたり、定期的にログをチェックしたりするなどの基本的なセキュリティ対策を怠っている結果であると述べた。
さらに同氏は、このような初歩的な対策だけでも、大きなセキュリティ上のメリットはあると語る。これはTrustwaveの報告でも明らかになっている。第三者によって検出されたセキュリティインシデントを封じ込めるまで企業は2週間かかっていた一方、自社でインシデントを検出した場合には、例えば、たった1日で問題を解決したケースもあったという。
「2013年には多方面からの異なる攻撃を数多く見てきたが、それにもかかわらず、非常に一般的なセキュリティコントロールがまだ正しく導入されていないケースもみられる。全ての組織は、単純な検出の仕組みとより強力なパスワードを使うだけで、もっとうまくセキュリティの問題に対処できるはずだ」(シングラー氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは? -
製品資料
[株式会社みらい翻訳] 音声翻訳活用の課題を解決、“本当に使える”ツールの特徴とは? -
製品レビュー
[Wrike Japan 株式会社] 400店舗を支えるWalmart Canada、散在する情報やアナログな管理をどう変えた? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 年間100件超のDXプロジェクトを統合管理、JERAはどのように実現した? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] グローバルなクリエイティブ業務を合理化、エスティーローダーに学ぶ実践のコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
2
身代金支払いは逆効果 情シスのためのランサムウェア対策ガイド2026
-
3
自社を守る「SCS評価制度」活用法 7割の企業が取引先起点の情報漏えいに直面
-
4
ランサムウェア、暗号化の89%は深夜 情シスが備える「夜間の空白」対策
-
5
多要素認証導入済みでもランサムウェア被害に 復旧費用は平均2億7000万円
-
6
「技術屋」で終わるか、部長へ昇格するか 今取りたい「IT×ビジネスの認定資格」5選
-
7
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
8
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
9
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
10
AIエージェントを暴走させない設定、済んでますか? 対策5選を専門家が紹介
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
8
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー