AWSの反応は?
IBMのPaaS「Bluemix」がAWSの強力なライバルになり得る理由
米IBMのIaaS「IBM SoftLayer」を使用する開発者は同社の「IBM Bluemix」プラットフォームと「Watson API」を絶賛している。だが、IBMは他の開発者の心をつかめるのだろうか。
米IBMと米Amazon Web Services(Amazon)のクラウドコンピューティングにおける覇権争いは長い間続いている。だが今のところ、IBMにとって最も有望な戦略は、つい最近の試みの中にあるのかもしれない。
今までのIBMの戦略は、企業や経営幹部を対象にしたIaaSの販売だった。だが、業界関係者の話によると、次なる戦いの場はIBMが「Cloud Foundry」をベースに提供しているBluemix、つまりPaaSの分野になりそうだ。
「権力は最高情報責任者(CIO)から開発者に大きく傾いている」と米BuildFaxの創設者で最高技術責任者(CTO)のジョー・エミソン氏は話す。BuildFaxは、「Amazon Web Services」(AWS)をベースにした1億5千万件の建築許可証に関する全米のデータが保存されたデータベースを維持管理している。同氏は次のように続ける。「開発者に選ばれ、ソフトウェアをより早く配信できると開発者に認められたものが生き残っていくだろう」
コグニティブコンピューティングとWatson API
SoftLayerのユーザーとビジネスパートナーは、BluemixのAPIの開発に熱心に取り組んでいる。最も注目されているのは、「IBM Watson」にアプリケーションを接続して、コグニティブコンピューティング(機械学習)を利用できるようにするAPIだ。
米国のSaaS分析プラットフォームプロバイダーのMutualMindで製品と戦略部門のディレクターを務めているエリック・スウェーン氏にとって、Watson APIは同社が総力を挙げて取り組んでいるプロジェクトだ。
MutualMindはソーシャルメディアを追跡してリポートを作成している。Watsonによるセンチメント(感情)や分析はプラットフォームを大きく発展させる可能性を秘めているとスウェーン氏は語る。
「Watsonの洞察をルールエンジンに導入すると、『マイナスの感情なのか、この個人は変化に対して抵抗感を持たないのか』といった質問ができるようになる。個人の性格をより詳しく把握できるので、実際に別のアクションを取ることができるかもしれない」(スウェーン氏)
Watson APIは現在β版の段階だが、Watson APIによってIBMは市場で一歩先んじている。米Microsoftと米Googleは、自社のコグニティブコンピューティング/機械学習の製品について、まだ研究段階にある。Amazonは「Amazon Elastic MapReduce」という機械学習機能を備えた製品ラインを保有し、そのマーケットプレースにはサードパーティーの機械学習製品もあるが、Watsonに匹敵するものはない。
IBMが市場で初めて人口知能システムを利用できるようにしたのは賢明なことだ。多くの人が、システムを使うことでWatsonの成長に期待できる。そう語るのは、米FlowCorpでCTOを務めるトム・ルクザック氏だ。FlowCorpはβプログラムの一環として同社のデータ分析アプリをWatsonと統合している。
Cloud FoundryとBluemix
Watson APIは、有望視されているBluemixの一部にすぎないとアナリストは見ている。
BluemixはCloud Foundryをベースにしている。Cloud Foundryは、もともと米VMwareが開発したオープンソースプラットフォームだが、現在は米EMCとVMwareから分社化した米Pivotal Softwareが管理している。また、Pivotal SoftwareはCloud Foundryを運営するための非営利法人を2014年に設立している。
米Forrester Researchでアナリストを務めるジェームス・スタテン氏は、Cloud Foundryを取り込もうとしているIBMの動きについて次のように言及する。
「IBMは基金の委員会で非常に大きな統率力を持っており、Cloud Foundryを自分たちの方へ引き込もうと強く考えている」
IBMが要求しているものの1つは、今日のCloud Foundryを構成する重要な要素がIBMの「WebSphere Application Server」や同社のメッセージキューシステムと統合できるようにすることだ。例えば、「Apache Tomcat」およびJavaのWebアプリケーションサーバやRabbitMQメッセージキューシステムなどである。
「これが現実になれば、非常に興味深いことになる」(スタテン氏)
IBMには、既存のWebSphereの膨大な顧客基盤をBluemixでクラウドにつなげる見込みがある。そのような状態を実現できれば、IBMはハイブリッドクラウドの分野で確固たる地位を築くことになるとスタテン氏は考えている。
「IBMが『当社にはオンプレミスのBluemixがある』という態度を示すことで、Amazonは窮地に追い込まれ始めている。Amazonがパブリッククラウドで何でも実行できると主張しても、パブリッククラウドを購入しない企業は少なくないからだ」(スタテン氏)
だが顧客が望めば、AWSでもCloud Foundryを実行することはできる。米Engine Yard、米Heroku、米CloudBeesなど、その他多数の独立系PaaSプラットフォームプロバイダーが、それを実証している。
「どのプラットフォームもAWSで運用できるため、最終的にはAWSの利益になる」とスタテン氏は指摘する。
PaaS市場におけるIBMの動きに対抗するため、AWSは個別のアプリサービスをよりまとまった形で開発者に提供しなければならなくなるとスタテン氏は見ている。
市場がクラウド導入の第二段階に移行すると、インフラ側に関わろうとしないプログラマーや視覚的に分かりやすいツールを求める新米開発者がさらに参入するだろう。そのような状況では、開発者はバラバラなAWSサービスに面食らうことになるとスタテン氏は語る。
「AWSが同社のサービスを集約している最初の兆候は、AWSのモバイルプラットフォーム『Amazon Cognito』で見られる。このプラットフォームはモバイルアプリ開発者からの評価が非常に高い」(スタテン氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略 -
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは? -
製品資料
[株式会社リンプレス] 非デジタル/IT人材を「自走するDX推進者」に変えるための育成ロードマップ -
市場調査・トレンド
[ワンアイルコンサルティング株式会社] AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは? -
技術文書・技術解説
[ワンアイルコンサルティング株式会社] システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「AIバブル」は崩壊するのか? 熱狂の後に来る“尻拭い”と4つの防衛策
-
2
AIが本番環境を削除し復旧に13時間 「暴走」ではなかったAWS事例
-
3
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
4
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
-
5
「プログラマー不要論」にThe Linux Foundationが示した答え
-
6
SAP保守を分割・離脱も可能に EU承認で変わるECCユーザーの2027年問題
-
7
Microsoft 365の知られざる5つの裏口 パスワードを変えても攻撃者は消えない
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
10
アラート47%削減 オープンハウスが捨てた「全部メール通知」の監視体制
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
8
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー