“じり貧”へ向かう日本市場を復活へと導く オープンイノベーションの可能性川田大輔のクラウド解体新書【第3回:サマリー版】(1/2 ページ)

IT業界においても、高度成長期にある国々を日本がまねすることはできない。日本企業の成長には、クラウドをはじめとするITを駆使したオープンイノベーションが必要だ。

2016年12月26日 10時00分 公開
[川田大輔]

 本稿は、連載「川田大輔のクラウド解体新書」第3回のサマリーを掲載したものです。完全版は以下からダウンロードしてご覧ください(会員限定/無料)。

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 日本ではバズワードとして次々と消費され忘れ去られていった概念が世界ではきちんと積み上げられ、新しい競争モデル作りに活用されている。今回取り扱うのは、これらのうち「ビジネスエコシステム」「オープンイノベーション」など多くの人にとって聞き覚えのある概念だ。

 日本ではGeneral Electric(GE)の「Predix」を取り上げると、「ああ、IoT(モノのインターネット)の」といった反応が多く、さらにGEを中心とした米国発の「インダストリアルインターネット」とドイツ発の「インダストリー4.0」をひとくくりに扱う向きもある。だが今回扱う用語を原義に忠実にたどってから見直してみると、ひとくくりに扱うのがはばかられるようになる。同じ理由で「標準化に参加して覇権を」といった主張がピントのずれた目標設定であることも見えてくるはずだ。


変化し続ける世界

 第1回「AWS圧勝とは限らない、クラウドシェア争いの現場で起きている“異次元成長”」でも見てきたように、インターネット普及が全地球規模に広がりつつある現代において、特定の一国がインターネット管理を独占し続けるのには無理がある。インターネット統治の国際共同規制体制への移行は時代の要請だ。とはいえ国際共同規制体制――マルチステークホルダーガバナンスモデル(注1)において、無謬(むびゅう)の選択など存在し得ない。著名なIT企業が名を連ねるインターネット関連の業界団体Internet Governance Coalitionがその声明で指摘したように、継続的に説明責任(Accountability)を果たし、透明性(Transparency)の確保、進路の修正、共同規制への参加をし続けるしかないのだ。

注1:多様な利害関係者が参加した社会的合意形成の仕組み。

高度成長期を謳歌するインド市場で起きている変化

 世界経済成長の中心である新興7カ国(E7:ブラジル、ロシア、インド、中国、インドネシア、メキシコ、トルコ)の雄、インドは人口増加の中心でもある。国際連合(国連)が発表している世界人口推計「World Population Prospects」によると、2022年までにインドの人口は現在トップの中国に並ぶ。以後、中国は人口減少に転じるが、インドは人口増加が続き2050年までに17億人に達すると、国連は予測している。

 現在勃興しつつある「次なる40億人」(注2)市場(その中でも特に注目されているのは上位10億人で、インドはその一角でもある)において、筆者は新たに登場しつつある「Cat.M」や「NB-IoT」といったIoT(モノのインターネット)向けの安価な無線通信規格が、M2M向けのみならず人に向けても利用されることで市場成長の加速するシナリオを想定したが、現実は常に想定を上回る。これら新技術の市場投入を待たず、既存技術をベースとしたサービス価格の低廉化が実現しつつある。インドの例を見てみよう。

注2:年間所得3000ドル以下で暮らす人の数。世界経済における「ピラミッドの底辺」(BOP: Base of the economic Pyramid)ともいう(世界資源研究所と国際金融公社の報告書から)。

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