「Apple」をどう訳す?
「eBay」が商品リストの自動翻訳を実装、「機械学習」の働きとは
オンラインオークションサイト「eBay」は、自身が選択している言語で出品された商品リストしか表示されないという問題があった。その問題を機械学習を使って克服したというが、どのように対処したのだろうか。
eBayのオンラインオークションサイト「eBay」の売り上げは、昔から海外での売買が半分以上を占める。だがこのサイトには1つ問題があった。ユーザーは、自身がサイトで選択している言語で出品された商品リストしか表示されないのだ。
言語設定を変えれば、新たな言語でeBayサイトを閲覧できる。ただし、表示されるのは設定した1つの言語に限定される。別の言語で出品されている商品やグッズはほぼ見ることができない。さまざまな出品者が多種多様な言語で出品している。つまり各ユーザーは、特定の製品に関する全リストの一部しか見えないことになる。中には利用の少ないもあり、その言語を使って閲覧するユーザーは、商品がほとんど表示されないこともある。
このプラットフォームをグローバルな統一市場にするため、eBayは機械学習の手法を取り入れ、ページを自動翻訳するようにした。「ユーザーからの問い合わせを翻訳できるようにした。英語に不慣れなユーザーの助けになる可能性がある」と語るのは、カリフォルニア州の企業で機械翻訳の上級リサーチマネジャーを務めるエフゲニー・マツソフ氏だ。
この種の自然言語処理(NLP)は、ディープラーニングの主要ユースケースの1つになっている。ディープラーニングは、最も難しいコンピューティング問題の幾つかに取り組む高度な機械学習手法だ。GoogleやFacebook、Microsoft、IBMのような大手テクノロジー企業は、ディープラーニングを用いて、画像認識、音声認識、人工知能を強化している。
たくさんのブランド名が溢れ、世界中のユーザーが使う難解な言葉が飛び交うeBayサイトの翻訳は難しい。例えば、商品リストの「apple」という単語は訳すべきだろうか。もちろん「りんご」と訳す場合もあるだろう。だが、ほとんどの場合は、エレクトロニクス企業の「Apple」を示しており、その場合は翻訳すべきではない。
またeBayの商品リストには「NIB」という略語がよく使われている。これは「new in box」(新品箱入り)の略だ。これを別の言語で訳したときに、「new in box」と結び付くだろうか。英語が分からなくてもNIBの意味を理解するeBayユーザーは多い。
マツソフ氏が率いるチームは、機械学習手法と自然言語処理を利用して、こうした判断を下す一連の統計的アルゴリズムを開発した。このプロセスは、まず翻訳者チームがサンプル商品リストをさまざまな言語に手作業で翻訳する。次に、Webや新聞などから集めた他のデータとこの翻訳結果を合わせて、アルゴリズムをトレーニングするデータを組み立てる。
開発チームは手動のアプローチを使用してNLPアルゴリズムをトレーニングしながら、構築していく。こうすることで、より統制が取れた出力になるとマツソフ氏は話す。ここ数年、ニューラルネットワークが、NLPなどの多くのディープラーニングプロジェクトに対する最も一般的なアプローチとなってきた。だが、マツソフ氏によれば、今回の例のようにブランド名や難解な語彙(ごい)に関して課題のある特定の条件では、ニューラルネットワークが好ましくない結果をもたらす場合があるという。
このシステムは、自社製のツールだけでなく、オープンソースや商用ソフトウェアも利用している。開発した統計的アルゴリズムは、2014年の初公開以来、ラテンアメリカやヨーロッパでも使われている。
マツソフ氏によれば、米国やヨーロッパで出品された商品がロシアやメキシコ、アルゼンチン、ブラジルで販売数を伸ばした一因は、この翻訳アルゴリズムにあるという。「このアルゴリズムは確実にeBayサイトの買い手と売り手に大きな影響を与えた」と同氏は話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
BMWも導入 78兆円市場に化ける「フィジカルAI」の衝撃
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー