雇用創出やセキュリティ面の協力も
AI導入へ eBayがAmazonやGoogleと協力する理由
AI(人工知能)自社導入の準備を整えるため、eBayなど大企業数社がグループを組み、競合を二の次にして課題解決に取り組んでいる。eBayIT部門の関係者がTechTargetのインタビューに応じ、グループ加入に踏み切った理由を説明する。
ビジネスアプリケーションの分野では、AIが急成長している。いずれAIがビジネスの常識や可能性を大きく広げるという発想から、ハイテク界の大手企業数社が、AI活用のためのパートナーシップ「Partnership on AI」を設立した。同パートナーシップは、プライバシーの保護や不正利用の防止、雇用の均等な分配など、AI導入のリスクに備えるべき分野に焦点を当て、社会問題の解決にもAIを積極的に活用することを目指している。
同パートナーシップは、グループ創立メンバーであるAmazon、Facebook、Google、Microsoft、IBMから規模を広げた。オンラインオークション大手であるeBayは2017年5月、同グループへの加入を発表した。現在、同社は同グループの最新メンバーだ。
今回、eBayの主席アーキテクトを務めるサンジーヴ・カタリヤ氏は、TechTargetのインタビューに応じた。同氏は、同社がグループへの加入を決断した理由に、既存の自社事業にAIを導入する例が増えた点や、今やAIが企業の倫理保持のニーズに応える水準に達した点を挙げる。
TechTarget(以下TT):eBayは、パートナーシップへの加入によって何を得ようとしているのか? 競合する企業同士で協業しているのはなぜか?
サンジーヴ・カタリヤ氏(以下カタリヤ氏) :私たち企業が集まって議論をするのは、AIのある社会で「集合知」を集積するためだ。私たちは、考えられる限りの努力を通して個人や政府機関と情報を交換し、人間社会に役立つ最良のAI導入を実現する。
eBayが見据えるAI導入の未来とは
カタリヤ氏:(AI関連事業の)パイは、とてつもなく大きい。グループのメンバー全社に、AIは好機をもたらす。私たちは、各企業の底力を挙げて今あるリソースを有効に活用し、共有することで、グループの活動を推進する。AIは、今も進化を続けている。事業拡大の余地は非常に大きく、市場の可能性も同様に大きい。
AIが社会に与える影響も、私たちは重視している。AIの持つ可能性は大きく、私たち企業と社会への影響を合わせても手つかずの部分がなお残るだろう。グループを結成することでこそ、集合知の共有や進歩を継続する土台を築くことができる。各企業が、社内で独自の事業目標を追求することもできる。AIに携わり、より良い未来を構築する事業には、それだけ大きな可能性がある。
TT:パートナーシップを通じて、eBayはどのようなプロジェクトを進めているのか?
カタリヤ氏: 「Partnership on AI」は、AIを企業の人間的な面と融合させ、良いバランスを確立するための素晴らしい場だと、私たちは考えている。現在、同パートナーシップでは、雇用の分配に関わる分野に取り組んでいる。
eBayは、同事業が単純に雇用を創出するだけではなく、経済の基礎を築き、市場に全く新しい種類の雇用を創出すると考えている。私たちは、人とつながると同時に、市場にもつながっている。そのためには、小規模な業者も市場に参入できるよう支援していかなければならない。私たちはeBayでAIの力と人間の力を結集し、新たな種類の雇用開発を支援している。
TT:パートナーシップを支える各企業へのAI導入に際して、どのような懸念があるのか?
カタリヤ氏: AIのトレーニングに使用しているデータを冷静に見直す必要はあるだろう。人間が機械と情報や知識を共有する際は、いかなる場合でも情報のプライバシー保護の義務を負う。
AIがセキュリティやプライバシーを侵害すれば、人は当然、警戒心を抱く。私たちは、取得したデータがAIに適切か、私たちや顧客にとって安全な内容かどうかを確認する必要がある。AI導入のあらゆる当事者にとって、AIに適切なデータを供給することは、根本的な絶対条件だ。
AI導入機構の構築についても、細心の注意が必要だ。例えば、人間が適切な説明を与えなければ、提供されたデータにAIが勝手な解釈を加えてしまうことがある。顧客にサービスや商品を薦めるレコメンデーション・エンジンに偏りがあれば、どの顧客にも同じ情報を提供してしまうだろう。その場合、レコメンデーション・アルゴリズムと進化的アルゴリズムを組み合わせれば、一歩先のレベルに進める。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] 取引先のセキュリティをどう管理する? 「SCS評価制度」対応の勘所を解説 -
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] SCS評価制度「★4」取得のカギ 最大の壁を突破する方法とは? -
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] 2026年度末から運用開始 「SCS評価制度」に備えて製造業がやるべきことは? -
事例
[ネットワンパートナーズ株式会社, アイビーシー株式会社] ハイブリッド環境の一元管理と快適な無線LAN環境、三井ホームはどう実現した? -
市場調査・トレンド
[TD SYNNEX株式会社] 調査で学ぶセキュリティ運用の実態 人を増やさず品質を維持する方法とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
4
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
5
2027年電子帳簿保存法のさらなる改正 安易なシステム導入の落とし穴
-
6
AIインフラの理想形? 「5層のケーキ」を垂直統合するための近道とは
-
7
「世界一給与にハングリー」な日本のエンジニアが“雇用の安定”を求める理由
-
8
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
9
【基本情報技術者試験】そもそもOSは何をしている? 「ジョブ管理」の仕組みを解説
-
10
「高収入エンジニア」になれる“大人気の副業”7選
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
5
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
6
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
7
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
8
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
9
ソフトウェア開発の属人化と手戻りをどう防ぐ? 速さと品質を両立させる方法
-
10
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー