誇大広告を冷静に見極める目が必要
あらゆるアプリを賢くする人工知能(AI)の限界、それでも熱視線が集まる理由
人工知能(AI)システムが大いに注目を集めている。AIをどう導入すればビジネスに効果的か、それを理解することは企業にとって緊急の課題となっている。
アドバンストアナリティクス分野(統計解析、データマイニングなどの高度な分析)において、人工知能(AI)は2016年大注目のトレンドの1つとなっている。だが今日提供されているAI技術は、多くの人々が想像するAIとは異なるかもしれない。
データマネジメント教育組織のDataversityが2016年7月中旬に開催したオンラインイベント「Smart Data Online」では、AIアプリケーションは今後、サービスとして提供されるインテリジェントなアプリケーションになるとの指摘が相次いだ。例えば、小売り業者がIBMのPaaS(Platform as a Service)サービス「IBM Bluemix」を通じて、同社のAIエンジン「Watson」をベースとする顧客サービスチャットボットを設置するといった具合だ。Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」も同様のAIサービスを提供している。
併せて読みたいお勧め記事
人工知能(AI)と仮想アシスタントの最新動向
機械学習はビジネスをどう変える?
だがこうしたAIは、多くの人たちがAIと聞いて思い浮かべる汎用(はんよう)AIとは別物だ。市場調査会社Storm Insightsの創業者であるエイドリアン・ボウルズ氏は、汎用AIが実現するのは「まだ何光年も先のことだ」と指摘する。
限定的なAIにも大きな価値
さまざまなタスクを遂行するインテリジェントなマシンと対話できる未来を想像していた人たちは、最初はがっかりするかもしれない。だが詳しく調べてみると、今日開発されている限定的なAIアプリケーションにも潜在的価値は十分にある。
ボウルズ氏によれば、今日のAIアプリケーションの主要なメリットの1つは、企業がビッグデータ時代の幕開け以来収集してきた全てのデータを理解する助けになることだ。AIシステムは、機械学習を使って関連情報を見つけ出し、自然言語処理を使って人間が読めるレポートを作成することで、わずか数分という迅速さで大規模データストアからインサイト(洞察)を引き出すことができるようになる。
「データから情報を引き出す手助けとなることが最大の役目だ。プロセスの迅速化によってそれが可能となる」とボウルズ氏は語る。
ただしこのタイプのAIにはまだ限界がある。ボウルズ氏はIBM WatsonのテレビCMに言及する。IBMのコグニティブ(認知)コンピューティングエンジンであるWatsonがボブ・ディランの楽曲の歌詞を解析し、その中心的なテーマについてボブ・ディラン本人と対話するという内容だ。ボウルズ氏に言わせれば、このCMでWatsonが提示する洞察は大学1年生レベルだという。歌詞は正しく解析できているが、楽曲の重要な要素となる“曲が発表された当時の時代背景”に対する深い理解が欠けているとのことだ。
サービスとしてのAIアプリケーションが発達
それでも、こうした“サービスとしてのAIアプリケーション”はこの先数カ月、あるいは数年の間に多数登場することになりそうだ。AIベンチャーKimera Systemsのスタートアップアドバイザー、スティーブ・アルディレ氏は、AIベースのインテリジェントなアプリケーションを手掛けるスタートアップ企業の間で「激しい餌の奪い合い」が起きると予想する。中でもチャットボットは注目の分野の1つだ。チャットボットには、パーソナルアシスタントから顧客サービスエージェントまで広範な応用の可能性があるからだ。アルディレ氏によれば、消費者向けと企業向けソフトウェアのどちらの分野でも、こうしたアプリケーションのインテリジェント化が加速しているという。
「AI化の傾向はさまざまな影響をもたらすことになる。最終的には、全てのアプリケーションがインテリジェント化するだろう」と同氏は語る。
ただし、こうしてAIアプリケーションに対する関心が高まる中、大げさな宣伝も不可避的に増加している。企業はそうした誇大広告を冷静に見極め、自社のビジネス上の問題を今日のAIによって解決できるかどうかを正しく判断する必要がある。
コグニティブコンピューティングの技術革新を推進するための団体Cognitive Computing Consortiumの共同設立者でマネージングディレクターのハドリー・レイノルズ氏によれば、IBMやAmazonなどの大手企業は既にAIを向こう数年間の主要な成長機会と位置付けている。となれば、マーケティングによって大げさな宣伝はますますエスカレートするはずだ。このような状況では、買い手側に慎重さが求められる。
「AIをめぐっては目下、賛否両論で話題が沸騰している。1年前と比べてもはるかに多くの注目を集めている」と同氏は語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社シーイーシー] 脱VMwareに成功した企業は何をどう実践した? 事例に学ぶ戦略立案&実装のコツ -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] ランサムウェア攻撃を“二重の防御構造”で防ぐ、クラウド型基幹システムの実力 -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] 動画で知るランサムウェア被害企業のリアル、会計データが無事だった理由とは -
市場調査・トレンド
[セコムトラストシステムズ株式会社] EDR導入を成功に導くロードマップ:選定/稟議/運用のつまずきを防ぐコツ -
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
4
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
5
生データを隠してデータ連携 KDDIが4000万人の顧客情報を安全に分析できた理由
-
6
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
7
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
-
8
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
-
9
「また同じ説明か」 消費者の半数が離脱するAIチャットbotの“記憶喪失”
-
10
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー