公認会計士や企業の経理・財務担当者も、いまや会計システムをはじめとするITシステムの知識が欠かせない。急速に進化するITシステムの理解に役立つ最新のIT用語をテーマ別に解説する。第1弾「クラウド」に続く今回のテーマは「アプリケーション」。
いまや企業の会計処理はアプリケーションなしでは成り立たなくなっている。一方で、いわゆる会計システムだけでなく、企業の情報を統合的に管理するERPや、業績を管理して企業の成長を促すEPMなどさまざまなアプリケーションが利用されている。しかし、いわば裏方のソフトウェアだけにIT担当者以外は、意外にアプリケーションについての知識がないケースも多いのではないだろうか。企業の活動を効率化し、成長を助けるアプリケーションについての最新IT用語を紹介する。
会計基準変更などへの制度対応やパッケージシステムの機能強化などで、各パッケージの開発元から提供されるプログラム。パッケージシステムを活用するために定期的に実施することが望ましいが、カスタマイズしたプログラムへの影響や処理内容の変更も懸念される場合がある。
会計の視点→ 期末直前の実施はIT全般統制の再評価が必要になる場合があるので要注意。
主に財務会計の基本的な機能を1つの製品に統合し、一般的な業態の会社であれば汎用的に使えるものとして販売される会計業務向けパッケージソフトの総称。財務会計のほか、管理会計や税務申告などの関連業務との連携機能を持つものが多い。価格帯は個人用途から大企業向けまでさまざま。
会計の視点→将来的な変化も含め、勘定体系など自社の財務管理要件や業務ルールに合ったパッケージの選定が重要である。
開発元から提供されるパッケージシステムを自社の要求に合わせて直接修正を行うこと。実施することで開発元からのサポートが受けられなかったり、バージョンアップ時にリスクが高まるなどの懸念もある。そのため通常は標準機能に顧客独自の追加プログラム(アドオン)を組み合わせリスクの低減を図る。
会計の視点→カスタマイズ、アドオン部分は、IT業務処理統制評価の範囲決定にも影響を与える。
小売、金融、通信、公益など特定の業種に特化した業務プロセスを支援するアプリケーション。従来は各社独自にカスタム(手組み)でシステム開発していた領域だったが、国内外で実績のあるパッケージシステムを活用することで開発期間、コストの削減や他社ノウハウの活用を図ることも注目を集めている。
会計の視点→各業種別に必要な会計機能をERPで実装することも一般的。
仕事のやり方・手順・ルールなどを、流れ図(フロー)の形式で表現した業務文書。部門内での業務ルールの共有が主な用途だが、BPRの基礎資料として利用されるほか、システム導入における業務要件の検討にも使われるなど幅広く使われる。業務フローを記述するための専用ツールも多い。
会計の視点→内部統制の評価にも使用することを考え、常に最新化することが望ましい。
要件定義・設計・開発・テストなどの手順で一から構築するソフトウェアのこと。完全にユーザの要求に合わせて開発する。パッケージソフトとは対立する考え方である。会計ソフトの場合は汎用的な機能が多く、自社固有の事情を除いてカスタムアプリケーションを使うケースは少ない。
会計の視点→カスタム導入は運用・保守を含めてコスト増につながるため、自社業務での必要性については検討が必要。
システムの導入作業において、ソフトウェア側で制御される選択可能な項目の総称を指す。会計システムでいえば償却方法や適用為替レートなど多岐に及ぶパラメータがある。設定したパラメータに基づいてシステムが判断するためのルールや動作が規定され、予想されたアウトプットを出力する。
会計の視点→ 自社の業務に合致したパラメータ設定をしないと、予想されたアウトプットが出力されないなどの問題も発生するので注意。
ITを活用して企業内外から収集されたデータを組織的かつ系統的に蓄積・分類・検索・分析・加工し、ビジネス上の意思決定に有用な知識や洞察を生み出すソフトウェア。業種・業務別での経営指標のテンプレート化や内部統制を含む全社的なガバナンス、リスク、コンプライアンス管理への活用も注目。
会計の視点→意思決定に必要な会計データをいかにタイムリーに提供できるか考慮が必要。
全業務システムを一度にERPなどのパッケージソフトに入れ換えるアプローチ。業務ごとに順次システムを導入する 段階的アプローチと比べてシステムの短期導入やシステムを刷新する効果の最大化は期待できるが、全社的に業務プロセスを見直すなどプロジェクトの大規模化、複雑化による失敗リスクも懸念される。
会計の視点→ 実施においては導入効果と影響を十分に分析、検討したうえで慎重に判断するべき。
システム導入に当たって、自社の業務とソフトウェアの機能がどれだけ一致または不一致であるかを分析する作業。分析の結果業務と機能が一致しないものについては、ソフトをカスタマイズ(変更)するか、追加開発(アドオン)するか、その業務自体を統廃合するかを判断する必要がある。
会計の視点→ パッケージソフトの導入においては、いかにカスタマイズ、追加開発を減らすかどうかもコスト最適化のポイントとなる。
システムの導入期間に対して発生する開発・テスト作業に対応し、完成したシステムを実際に利用し続ける期間(運用期間)に対して発生する不具合対応やサポート業務のこと。導入そのものよりも長い期間になるため、システム利用のライフサイクルの大部分を占める。
会計の視点→ 保守・運用にかかわるコストの割合が高いため、あらかじめ全体感を把握した導入計画を行うべき。
業務機能の大きさに対応するソフトウェアの機能の固まりの単位。ERPパッケージでいえば、販売・購買・在庫管理などの単位をモジュールと呼ぶことが多いが、システム内においても、たとえば会計システムであれば請求・支払などの単位でモジュールとして分解することもできる。
会計の視点→システムの導入もモジュール単位でできることが多いため、自社に必要な機能・モジュールの絞り込みも重要。
レポーティングパッケージとも呼ばれる。連結会計業務において、各子会社や関連会社の決算データを収集するための帳票レイアウト、またはそれらを含めたデータ収集のための仕組みを指す。従来は記入用紙に手書きする方式があったが、現在ではワークシート形式で入力するタイプが多い。
会計の視点→いかに勘定科目体系・入力ルールを汎用化・標準化するかが連結業務効率化のポイントとなる。ERPとのデータ連携も有効。
Business Process Reengineeringの略。業務プロセスを効率性の観点から分析し、あるべき業務を作り上げるアプローチで、業務改革手法の1つ。各種業務システムの導入に先立ち、BPRを実施することで費用対効果がより高められることが期待される。
会計の視点→現状業務ありきでシステムを導入すると業務効率化につながらないケースもあるので注意が必要。
Customer Relationship Managementの略。詳細な顧客情報を基に、売買・保守サービス・問合せ・クレーム対応など各顧客とのやり取りを一貫して管理。顧客と長期的な関係を築くことで、顧客の利便性と満足度を高め、収益の最大化を図る。
Enterprise Performance Management(企業業績管理)の略。多角的・統合的に経営情報をビジュアル化し分析させることで、迅速な問題発見を喚起させ経営の迅速化・強化を図るアプリケーション。グループ経営管理を強化する意味で注目される。情報の集約と管理の面でERPとの連携は有効。
会計の視点→ 財務会計と管理会計の統合(財管一致)や連結を意識したグループ経営管理にもつながる多様な機能を持つ。
経営資源の最適利用を目指す、Enterprise Resource Planning(経営資源計画)を実現するパッケージシステム。各機能(モジュール)を連携し、企業のすべての業務を同一システムで支援し、情報を一元管理できることが特徴。各モジュールでの単独利用も可能。
会計の視点→各業務データを最終的に会計データに集約・統合し、会計データから各業務データに遡及(ドリルダウン)できるメリットにも注目。
Human Capital Managementの略。採用・能力開発・配置・評価・処遇など従業員に関する情報を一元管理。人事部門を中心に合理的、戦略的な人材の活用を促進するシステム。各従業員の才能や個性の組み合わせで企業の成長に貢献するタレントマネジメントの要素が強い。
会計の視点→IFRS対応に際して、退職給付債務やストックオプション、有給休暇処理等で関連性が高まると考えられる。
主に製造業や流通業で、調達から製造、流通、販売など生産から消費にいたる流れをSupply Chain(供給の鎖)ととらえ、関連部門・企業間で情報を相互に一元管理共有する仕組み。納期短縮・欠品防止による顧客満足の向上や流通在庫を含む在庫・仕掛品の削減が目指せる。
会計の視点→受注残、発注残、不良在庫などサプライチェーンに潜む余剰コストを発見するための基礎データを提供できる。
Sales Force Automationの略。顧客情報や商談、日報などの営業活動に必要な情報を一元管理。顧客の社内情報や取引傾向、過去の商談や競合他社の情報などを共有することで、営業活動の強化・促進を図る。外出先での活用を考慮し、携帯端末などからの利用も有効。
公認会計士、監修・執筆、クレタ・アソシエイツ
執筆、日本オラクル
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