Rockwell Automationは、モノのインターネット(IoT)導入に成功した1社だ。同社のIoT環境は、構築に数十年を要したという。企業がIoT導入を通して成長を遂げる鍵と、現状のIoTが示すビジネス変革の可能性を探る。
Rockwell Automation(以下「Rockwell」)は、製造業系の顧客向けに30万種類以上の装置や部品を提供する。
同社は、80カ国以上の企業に産業オートメーション用の各種装置や情報機器を提供し、製品のカスタマイズも請け負う。同社の事業内容を考えれば、ある製品の発注から納品に2カ月を要しても、誰も驚きはしないだろう。ところが、Rockwellは、ここ数年で製品の納期を8週間から8日間に短縮した。
同社の情報ソリューション部門でグローバルマーケット開発マネジャーを務めるポーラ・プエス氏は、納期短縮について、あらゆる機器がネットワークと通してつながるIoT(モノのインターネット)導入の功績を指摘する。
「当社のサプライチェーン全体が変化を遂げ、製造現場でリードタイムを短縮できた点は、当社の顧客企業が、資材をその分早く調達できる点に直結する。私たちは、年間で前年比5%の生産性向上を見込んでいる」と、プエス氏は語る。納期短縮は、同社の事業強化にも貢献しているという。
実に115年の歴史を持つRockwellの社内ネットワークは、製造現場に設置された各デバイスから、企業全体に広がるシステムに接続する。同社は、数十年をかけて少しずつ社内の接続環境を拡大していった。こうした試みはにより、同社が必要な情報を適切なタイミングで社内ネットワークを通して入手し、データ分析を通して得た知見を利用して、業務プロセスを改善することが可能になった。同氏は、この点が事業全体の改善にもつながったと語る。
Rockwellの例は、IoTの成功事例の1つといえるだろう。
世界を変えるテクノロジーの1つとして「モノのインターネット」(IoT)を挙げる専門家やビジネスリーダーは、最近ますます増えつつある。大企業向けアプリケーションを開発、販売するIFSは、「デジタル変革(トランスフォーメーション)」をテーマに、16カ国の企業内意思決定者750人を対象にした調査を実施した。同調査によれば、IoTは、ERPシステム、ビッグデータおよびアナリティクスと並び、企業における資金調達の優先順位上位3分野の1つに挙げられている。多くの企業が、デジタル変革を後押しし、企業の競争力を高めるテクノロジーとして、IoTの重要性を認めていることが明らかになった。
ただし、デジタル変革を目指す企業が多額のテクノロジー投資を続けている一方で、今日のIoT導入事例の大半は、抜本的なデジタル変革を成し遂げたとはいえない。むしろ、多くの企業は、I社内の業務プロセスをIoT導入によって改善し、徐々に利益を増やしている。IFSの調査へ回答を寄せた北米企業にとって、IoT導入の“推進力”は、社内の業務プロセスに存在する“非効率な部分”を特定することだった。同様の条件を抱えてIoTに投資した企業のうち37%が、導入成果を挙げたという。
産業用モノのインターネット(IIoT)に特化したHarbor Researchでコンサルタント兼プロジェクトマネジャーを務めるハリー・パスカレラ氏は、「当社では、IoTを『スマートシステム』と呼ぶ。私たちは、個々のコネクテッドデバイスは、スマートシステムの要ではないと考えている」と話す。
パスカレラ氏は、スマートシステムは大規模なインターネットに接続する必要はないと強調する。非公開ネットワークを使用しても、組織は作業環境にセンサーを配備したことのメリットを享受できるという。
「真の意味でデバイスが人間、プロセスとつながり、そしてデバイス同士で相互につながった環境だ。この環境が発揮する知能と処理能力が重要だ」と、同氏は話す。
ただし、パスカレラ氏が語るレベルのテクノロジーを実装できた企業は、現時点でほとんどないという。「今日運用されている(企業内作業)環境の大多数は、コネクテッドデバイスを部分的に導入している程度だ」と、同氏は語る。
例えば、ネットワークに接続されたサーモスタットは、確かに“コネクテッドデバイス”と呼べるけれども、必ずしもスマートシステムに貢献しているとは限らない。そうした機器が、単純なアプリケーションとしてしか機能していない場合もあり得る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
AIの普及や発展によって、企業が保有するデータの量は膨れ上がっている。その約90%は非構造化データだ。そのため、AIと分析のワークロードをより有効なものにする上では、非構造化データの扱いが非常に重要となる。
Excelやスプレッドシートを用いて社内のデータを管理している企業は少なくない。しかし、それにより、データの閲覧や管理、共有などにおいて問題が発生している企業も多い。データ活用を加速するためには、どのような体制が有効なのか。
ビジネスの成果を挙げるためにデータ活用の取り組みが進む一方、分散するデータが足かせとなり、データの価値を引き出せていないケースも多い。その解決策となるAI対応のデータ基盤を構築する方法について解説する。
広告や小売、観光振興、まちづくりなど、さまざまな領域で導入が進む「人流データ」。その活用でどのような施策が可能になり、どのような効果が期待できるのか。人流データ活用の6つのユースケースを紹介する。
人の動きを可視化した「人流データ」。屋外広告の効果測定や出店計画、まちづくりや観光振興など幅広い領域で活用されている。その特徴を確認しながら、価値のある分析・活用につなげるためのポイントを解説する。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。