時間と経費を削減
ノーコード開発の「Quick Base」で業務を効率化、先進事例の効果は
グローバルサプライチェーンの労働条件の改善に取り組むVeriteは、効率の改善と複雑なプロジェクトの管理のためにノーコード製品を採用した。
米国の小規模な非営利団体のVeriteは、大規模プロジェクトの会計処理で苦労してきた。Veriteはグローバルサプライチェーンの労働条件の改善を目的とした組織で、スタッフの数は31人。クライアント数は約100社で、中には会計報告の要求が高い企業もある。
これらのクライアントのそれぞれについて、Veriteは30件以上のプロジェクトと90件以上の業務を管理している。クライアントは個々のプロジェクトと業務の予算管理や各タスクの経費配分、タスクの明細書作成などをVeriteに依頼する。Veriteの会計担当兼ITマネジャーを務めるジェン・スタクニック氏によると、予算管理、経費レポート、明細書作成に必要な会計データを全部そろえるのに、2人のスタッフで2日間を要したという。このような時間のかかる面倒な手作業を何とかしようと考えた同氏が目を向けたのが、データの収集とレポート作成作業を自動化するノーコードプラットフォームの「Quick Base」だ。
Veriteは以前、Quick Baseを導入して基幹アプリケーションを作成した経験がある。今回はこの基盤の上に幾つかのテーブルを作成し、これらのテーブルを通じてスタッフがさまざまなプロジェクト管理業務を処理できるようにした。Quick Baseの用語では、テーブルは特定のプロジェクトまたはタスクに関連したデータ(レコード)を格納するコンテナの役割を果たす。例えば、プロジェクトの明細書レコードなどがテーブルに格納される。また、Quick Baseの各アプリケーションは多数のテーブルを保持できる。
スタクニック氏は大手クライアント向けのレポート作成プロジェクトで、Quick Baseの標準機能を使って、複数のテーブルからデータを収集するテンプレートを作成した。テンプレートの作成とテストに要した時間は約6時間だった。このクライアントのデータの収集とレポート作成作業はこれまで何日もかかっていたが、このテンプレートのおかげで作業時間が数分に短縮したという。「テンプレートを再利用できるというメリットもある」とスタクニック氏は話す。
「他のクライアントおよび総合的な業務管理作業でも、このテンプレートを利用するつもりだ」(同氏)
時間と経費の節約
Veriteはノーコードプラットフォームを採用したことで業務効率を改善した。スタクニック氏の推計では、Quick Baseを使った自動化により、1カ月当たりスタッフの作業時間を60~100時間ほど短縮できた。Veriteは少人数のスタッフでGapやNestleなどの大手クライアントを相手にしていることを考えれば、これは重要な成果だ。
「私たちは大規模なサプライチェーンを持っている世界最大規模の企業を相手に仕事をしており、レポート作成に関する彼らの要求は非常に高い」とスタクニック氏は語る。
これらのクライアントのデータやプロジェクトの管理を全て手作業でこなすのは無理だったという。Quick Baseを導入したことで業務が効率化した結果、管理業務にかかる時間も短縮した。
「そのおかげで、スタッフを増員しなくても新たな仕事に取り組めるようになった」と同氏は喜ぶ。
だがコスト面ついては、それほど単純な話ではないようだ。Veriteが7年前にQuick Baseを導入して以来、ソフトウェア開発コストを3万ドル節約できた。これは、Quick Baseでの開発のほとんど全てをスタクニック氏自身で行ったことによる。同団体はQuick Baseアプリケーション開発企業のData Collaborativeの協力を得ているが、その内容はアドバイスがほとんどだという。
「私は問題を自分で解決するのが好きだ。同社に助けを求めるのは、問題を解決できないときだけだ」とスタクニック氏は話す。
だがVeriteのスタッフが増えるのに伴い(同社は過去1年半で7人の職員を採用した)、Quick Baseの使用コストが増える。Quick Baseの価格は、1ユーザー当たりの月額料金方式で設定されているからだ。
ノーコードプラットフォームの管理
Quick Baseのようなノーコードプラットフォームは、市民開発者や市民技術者の登場を促した。彼らはIT以外の分野出身でありなら、技術関連の仕事を担当するようになった人々だ。スタクニック氏ももともと、経理担当者だったが、Quick Baseを扱うようになってITマネジャーという肩書が加わった。この数年間でVeriteでのQuick Baseの利用は、プロジェクト管理や予算管理、支出管理、スケジュール管理などの分野に広がった。スタクニック氏が自動化する業務が増えるのに伴い、同氏と他の部署とのつながりが増え、同氏の影響力も大きくなった。
「こういったことは全て、この組織での私の役割の拡大につながった」と同氏は話す。
ノーコードプラットフォームのガバナンスもスタクニック氏の役割だ。短期間で習得できるというのは、このようなプラットフォームの一般的な長所だが、それは同時に短所にもなり得る。あまりに多くの市民技術者がノーコードプラットフォームに飛びつく恐れがあるからだ。スタクニック氏によると、Veriteでは以前、Quick Baseで問題が起きたことがあるという。作成中の機能が他の部署で既に存在するのかを確認もせずに、「むやみにQuick Baseを利用」しようとするスタッフがいたのだ。
このため、スタクニック氏はQuick Baseへのアクセスをコントロールし、業務の自動化は同氏を通して行うよう求めている。
アジャイルデジタル変革を専門とする業界分析/コンサルティング企業のIntellyxのジェイソン・ブルームバーグ社長によると、ノーコードプラットフォームのガバナンスという問題に対処する必要があるのはVeriteだけではないという。
「『Microsoft Access』時代のころから、不要なアプリケーションはノーコードアプリケーションの悩みの種だった」とブルームバーグ氏は語る。Microsoft Accessは開発ツールを備えたMicrosoftのデータベースで、ビジネスユーザーはこれを使ってアプリケーションを作成できる。「ビジネスニーズや法規制を満たせない可能性がある不要なアプリケーションにどう対処するかというのは、シャドーITガバナンスの問題だ。デジタル化が進む今日の世界で最新のノーコードプラットフォームが競争を勝ち抜くためには、この問題に対応しなければならない」(同氏)
一方、スタクニック氏のところには、今でも広範な部門や現場から自動化のリクエストが寄せられるという。Veriteの業務の1つである倫理的労働慣行プログラムでは、現地調査や現場でのトレーニングなどが必要とされる場合もある。同団体は70カ国以上の国々で、企業のブランドやサプライヤーにかかわる仕事をしてきた。また、本部での会計業務やビジネス開発でもノーコードプラットフォームが役立っている。
「各プログラムのスタッフと業務部門、そして私の間でオープンな対話を行っている。業務の非効率性などスタッフが抱えている問題の解決策を見つけるためだ」と同氏は話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[AvePoint Japan株式会社] SCS評価制度の死角は“SaaSの中” クラウド標準機能では届かない領域とは? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 5分で分かる、「オープンソースCMS」比較ガイド -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 1つのアプリを各国で運用 多言語モバイルアプリを簡単に開発・導入できる方法 -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 複雑化するKubernetes運用、VMとコンテナの二重管理を解消する方法は? -
市場調査・トレンド
[アルプス システム インテグレーション株式会社] 急増する高度なフィッシング詐欺 先回りしてブロックするには何が必要?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft 365導入後も稟議は「Excelをメールで回覧」 承認が止まる理由
-
2
米国防総省で300万人分の個人情報が流出 その「意外な原因」と教訓
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
4
PHPはそもそも必要か? 脆弱性で問われる自社サイト安全性と保守負担のバランス
-
5
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
6
金融・通信で情報漏えいが続出 IPAとJPCERT/CCが情シスに求める緊急点検
-
7
「年1回の外部診断」が限界に 大手小売が脆弱性管理を内製化・一元化した方法
-
8
京王電鉄・東京メトロの被害から学ぶ境界防衛 ITの侵害はどこまで波及するか
-
9
PHP2Shellの「事前の情報流出」でパニックに パッチ公開を巡る“混乱劇”
-
10
Googleの業務向けAIエージェント「Gemini Agent」が登場 しかし課題は山積み
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
5
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
6
「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説
-
7
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ
-
10
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー