GoogleやSAPといった大手ITベンダーが、従業員の人間的な成長の支援を目指した「マインドフルネスプログラム」に資金をつぎ込んでいる。その内容とは。
人工知能(AI)テクノロジーを導入する際に、最高情報責任者(CIO)が直面する1つの課題は、これまでの仕事への影響だ。IT部門の仕事だけでなく、AIテクノロジーによって完全に、または部分的に自動化される、あらゆる仕事が影響を受ける。
自動化されない仕事は、社会的知性に大きく依存する仕事くらいだろう。AIテクノロジーを使った会話インタフェースの進化は目覚ましい。ただし近い将来にこうしたテクノロジーが、人間ならではの能力に追い付くことはありそうもない。顧客との関係を深める、社内チームをやる気にさせる、ブレーンストーミングの際に文脈を理解して応用する、といった能力のことだ。
将来的には、仕事の大半がAIテクノロジーに代替されるようになるとの見方がある。「AIテクノロジーや予測分析が主流になるとともに、職場では、われわれは単なる頭の良さではなく、賢さや優れた手腕を要求されるようになる」。コーチングサービスを手掛けるGlobal Coaching AllianceのCOO(最高執行責任者)を務め、『Fearless at Work』(仕事は怖くない)の著者でもあるマイケル・キャロル氏は、そう語る。
キャロル氏は、2018年4月に開催された職場改善に関するイベント「Mindful Workplace Summit」で登壇した。この2日間のイベントには、Amazon.comやFacebook、Google、UPS(United Parcel Service)といった、有名企業のエリートが詰め掛けた。目的は「マインドフルネス」の探求だ。
マインドフルネスは、心を落ち着かせるための仏教の瞑想(めいそう)法を指す。近年では企業の間で、マインドフルネスの実践が進みつつある。収益の維持や従業員の人間的な成長につなげる狙いだ。前者への期待がマインドフルネス普及の原動力となっている。
Mindful Workplace Summitのメインテーマの1つは、破壊的革新テクノロジー、とりわけAIテクノロジーが従業員に与える影響と、それにどう対処するかだった。GoogleやSAPは、職場向けマインドフルネスプログラムを積極的に取り入れている。多くの仕事がAIテクノロジーに代替される中、従業員が自らのスキルに磨きをかけ、新しい職務に適応できるようにするためだ。
Googleで職場向けマインドフルネスプログラムの推進に携わったビル・ドゥエーン氏によると、同社がこのプログラムを提供する方針を打ち出したのは、AIテクノロジーをはじめとする破壊的革新テクノロジーの台頭と、それが従業員チームのパフォーマンスに与える影響を考慮した結果だ。同社の社内調査では、チームが大規模な破壊的変化に直面する中で、イノベーションに取り組めるようにする最も重要なファクターは、心理的安全性であることが分かったという。
現在はGoogleを退社しているドゥエーン氏は、同社で主席エンジニアを務めていたときに、社内で小規模に運営されていた職場向けマインドフルネスプログラムに参加した。そのプログラムで仕事のパフォーマンスが格段に上がったことから、同氏の仕事は同社においてマインドフルネスプログラムの開発をリードすることに変わった。
やがてこのマインドフルネスプログラムはスピンアウト(独立)し、2012年に非営利の運営組織として「Search Inside Yourself Leadership Institute」(SIYLI)が設立された。同組織のマインドフルネスプログラム「Search Inside Yourself」(SIY)は他の企業でも広く採用されており、SAPもその1社だ。
SAPのグローバルマインドフルネスプラクティス担当ディレクターを務めるピーター・ボステルマン氏は、2012年にSAPでマインドフルネスプログラムの立ち上げを担当した。このプログラムは6500人以上の従業員に提供されており、受講待ちの従業員が5500人以上いる。
ボステルマン氏によると、マインドフルネスプログラムをSAPに定着させる上でポイントの1つとなったのが、マインドフルネスという言葉と、心理療法や宗教に関連する用語を使わないことだった。
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