先行事例にみる「SD-WAN」の導入成果【中編】
急成長のバイオテクノロジー企業が「SD-WAN」を必要とした理由
M&A(統合・買収)や海外進出を進める企業にとって、「SD-WAN」がネットワーク構築に役立つ可能性がある。大規模な事業拡大を進めるバイオテクノロジー企業BioIVTがSD-WANを導入した事例を紹介する。
前編「自動車部品メーカーがMPLSから『SD-WAN』へ乗り換えた理由」では、自動車関連のソフトウェアを手掛けるVisteon、物流サービスを提供するPilot Freight Servicesが、ソフトウェアによってWANを動的に制御する「SD-WAN」(ソフトウェア定義WAN)を導入した事例を紹介した。ローカル拠点からインターネットに直接接続できるようになる点や、膨大なトラフィックへの対処、ネットワーク構築時間の短縮などが、これらの企業がSD-WANを導入したことで得た利点だ。
中編となる本稿では、事業拡大を進める企業がなぜSD-WANを選択し、どのような成果を得たのかを紹介する。
ニューヨーク州ロングアイランドでバイオテクノロジー事業を展開するBioIVTは、企業買収によって急成長を遂げている。この企業買収によって、BioIVTはある課題に直面した。企業買収によって加わった新しい事業所のネットワークを、BioIVTが従来持つグローバルネットワークに接続しなければならないことがその要因だった。
「新しい拠点のネットワークを既存のネットワークに組み入れる作業に60日もの時間を要することもあった」と、BioIVTのIT部門でディレクターを務めるアンドリュー・トンプソン氏は語る。「当社は急成長を遂げていた。IT部門は拡大するビジネスニーズに、もっと機敏に応えなければならなかった」(トンプソン氏)
従来のネットワークにも問題があった。侵入防止システム(IPS)が導入されておらず、他の拠点に接続する際には、使い勝手の悪い仮想プライベートネットワーク(VPN)を利用していた。トンプソン氏によれば、特にBioIVTのITチームが社内で管理するのに手を焼いていたのは、このVPNだったという。
SD-WANでネットワークの“遠回り”を解消
BioIVTは、Cato Networksの協力を得てSD-WANを導入した。SD-WANを使用することで、BioIVTは新しい拠点のネットワークの立ち上げにかかる時間を約75%削減することに成功した。BioIVTが得ているSD-WANのメリットは幾つかある。中でも特筆すべきは、世界各国に存在する各事業所からのネットワーク接続の効率が上がったことだとトンプソン氏は話す。
SD-WANにはソフトウェアによって動的にWANの接続先を選択できる利点がある。各国の拠点で働く従業員は、VPNを使用して最寄りの拠点に直接アクセスできるようになった。これまでは、遠回りの経路で接続しなければならないこともあった。例えば日本の拠点で働いている従業員がニューヨークの拠点に接続するには、英国拠点のルーターを介する必要があった。
BioIVTはSD-WANを導入したことで、ようやく各拠点からインターネットを介して複数の接続先へつなぐ際の運用を設計し直すことができた。以前、複数の接続先につなぐネットワークは、いずれかの接続先のトラフィックのみを通す構成にしていた。この構成ではルーティングの問題により、どのネットワークにも接続できなくなる場合があった。現在、全てのIPアドレスの割り当てとスイッチングはCato Networksが管理しており、「以前抱えていたこうした問題は解消された」とトンプソン氏は語る。
後編では、クラウドサービスの利用拡大で起こりがちな、ネットワークのトラフィック増大という課題にSD-WANを使って対処した事例を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
先行事例に見る「SD-WAN」の導入成果
SD-WANの機能はテクノロジーの進化とともに変わり続けている。実際にSD-WANを導入した企業の事例を取り上げ、SD-WANによるネットワーク構築の利点を紹介する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略 -
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは? -
製品資料
[株式会社リンプレス] 非デジタル/IT人材を「自走するDX推進者」に変えるための育成ロードマップ -
市場調査・トレンド
[ワンアイルコンサルティング株式会社] AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは? -
技術文書・技術解説
[ワンアイルコンサルティング株式会社] システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「完璧な設計」なのに3000万円溶けた AWSの失敗事例から学ぶ3つの教訓
-
2
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
3
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
4
高額な「AI PC」を一般従業員も使えたら? 費用のハードルを一気に下げる方法
-
5
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
6
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
7
「コピペ運用の限界」に直面するAI活用 7割超が“別画面”のまま使う理由は?
-
8
IT調達担当者が知るべき「IT機器 大インフレ時代の前向きな選択肢」
-
9
「AIバブル」は崩壊するのか? 熱狂の後に来る“尻拭い”と4つの防衛策
-
10
パナソニックが国内製造26拠点のERPを「SAP S/4HANA」に統一 アドオン7割削減
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
4
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
5
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
6
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
7
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
8
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
NTTドコモが実践したクラウド統合監視 業務量2倍でも残業削減を実現できた理由
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー