「無線LAN」と「Wi-Fi」は同じ意味で使われることがよくあるが、この2つの用語は決して同じ意味ではない。両者を混同している人が多いからか、その違いはあまり知られていない。
ビジネス環境における「無線ネットワーク」の概念は複雑になる一方だ。「無線LAN」という言葉が使用される文脈や用途を明確にしておかないと、同じ会話の中でその言葉が意味する対象が違うものになってしまう可能性がある。
ここではBluetoothなど「無線PAN」(パーソナルエリアネットワーク)とも呼ばれる近距離の無線ネットワークや、携帯電話回線など「無線WAN」(ワイドエリアネットワーク)と呼ばれる広域の無線ネットワーク、これらのネットワークにひもづくデバイスについては話題の対象から除外する。そうした無線ネットワークのトポロジー(接続形態)を別にしても、無線LANという言葉だけでもさまざまな文脈で使用される。本稿は無線LANと「Wi-Fi」の違いを中心に説明する。
無線LANの意味を考える前に「LAN」(ローカルエリアネットワーク)の意味を確認しておこう。ここでいう「ローカル」は、地理的構造や機能的構造を説明する言葉として特定の建物や敷地の内側であることを意味しており、LANはそのエリアで使用されるネットワークであることを示している。このLANに「無線」を付けたのが無線LANだ。
無線LANとWi-Fiは同じ意味で使われがちだが、この慣習はトラブルのもとになりかねない。無線LANの構築には多様な無線技術が使われる可能性があるからだ。
両者の違いを示すエピソードを紹介しよう。筆者は先日、あるプロジェクトのコンサルティングの依頼を受けた。照明制御システムと警報システムのネットワークへの接続に無線LANを使うという話だった。無線LANを使うと聞いて、当然Wi-Fi準拠のネットワーク機器を使うものだと思い込み「緊急時に重要な設備にWi-Fi機器を使うのはいかがなものか」と感じた。
ところが資料をよく読んでみると、これらのプロジェクトの無線LANは、Wi-Fiとは別の無線技術を使うことが分かり、Wi-Fiとは関係のないものだった。照明制御システムも警報システムも、専用の無線送受信機とLANの間をある種のルーターでつなぐという。
この例でも分かるように、無線LANとはネットワーク機器間を有線でつなぐ代わりに無線を使うLANの総称だ。重要なのは、ローカルであることと、無線であるということだけだ。ネットワークの大まかな地理的範囲と、配線の代わりに電波を使うことが無線LANの定義となる。
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