HDDとSSDを融合させた「SSHD」を無駄にする“駄目な使い方”とは?「SSHD」と「SSD」の違い【後編】

「SSHD」はHDDとSSDの特性を併せ持ち、用途によっては大きなメリットが期待できる。だが注意点もある。用途を間違えると無駄な投資に終わってしまう可能性があるからだ。何に注意すべきなのか。

2020年08月31日 05時00分 公開
[John EdwardsTechTarget]

関連キーワード

SSD | ハードディスク | ストレージ


 「SSHD」(ソリッドステートハイブリッドドライブ)とは、HDDにSSD(ソリッドステートドライブ)を組み合わせたストレージだ。SSHDの構成は複雑ではなく、SSD部分はキャッシュとして機能する。ほとんどのSSHDは最適化機能を搭載しており、どのデータをSSDで読み書きすればパフォーマンスを向上させられるのかを自律的に判断する。

 コストはHDDに近く、データ読み書き速度はSSDに近いというのがSSHDの特性であり、メリットだ。使用するアプリケーションによってはSSDよりも、HDDよりも適した選択になる可能性がある。ただし企業がSSHDを導入する際、注意しなければならない点がある。

SSHDを無駄にする“駄目な使い方”

 バックアップベンダーCobalt Ironのグレッグ・テービス氏は「アプリケーションがSSDを効率的に利用できるように設定しないままSSHDを使うと、過剰なコストを支払うことになる」と指摘する。SSHDはアプリケーションごとにHDDとSSDの使用を割り当てることが可能だ。ただし適切に設定することは簡単ではない。「ストレージに関する深い専門知識が求められる。場合によっては管理が複雑になり、運用負荷が増える可能性がある」とテービス氏は警告する。そうなればデータ読み書き速度が速いSSDへの投資効果も減じてしまう。そのため一般的にはSSHDドライバーを使って、自動的にSSDとHDDの使用をコントロールすることが望ましい。

 長期的には深刻な問題にはならないものの、新たにSSHDを利用する場合に混乱を引き起こしかねない注意点もある。利用開始の初期の段階では、SSHDはHDDと同程度のデータ読み書き速度でしか稼働しない場合があることだ。SSHDには“慣らし”の稼働期間がある。SSHDは、その間にファイルやプログラムの使用頻度を学習する。使用頻度が高いファイルやプログラムは、SSDに移動させてデータ読み書きを高速化できるようにする。各種マネージドサービスを手掛けるOffice1のエンジニア、カーティス・バークール氏は「SSHDがファイルやプログラムの利用頻度を学習すれば、一般的なHDDよりもはるかに高速で稼働するようになる」と説明する。

 どのようなIT製品にも共通するポイントだが、SSHDは複数の技術を併用しているため、複雑性が増大しやすいデメリットもある。「たとえパッケージ化された製品であっても、設定したり、モニタリングしたりする項目は増える。不具合の可能性も高まり、習得すべき新しいスキルも増える」と、運用管理ベンダーSolarWindsのパトリック・ハバード氏は説明する。

導入効果の実証

 SSHDとSSDを比較してどのようなメリットとデメリットがあるかは、利用する組織によって異なる。SSHDを利用する上で重要なのは、使用状況とパフォーマンスをモニタリングすることだ。費用対効果(ROI)を証明するには、判断基準を設定して、それに従ってモニタリングを実施することが欠かせない。

 特にSSHDのように、HDDやSSDなど一般的なストレージの常識とは異なる製品を導入する場合は、組織独自の利用目的と判断基準が重要になる。ハバード氏は「パフォーマンスの向上と、アプリケーションへの適合性を証明するデータがあれば、SSHDの導入効果を実証するための有効な材料になるだろう」と話す。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

製品資料 エヌアイシー・パートナーズ株式会社

HCIとSDSでコンテナ時代のニーズを満たす、今選ぶべき統合データ基盤の実力とは

アプリケーション開発の主流がコンテナに移行した今、従来のストレージでは、俊敏性や拡張性を確保し、データ保護を徹底することが難しくなっている。そこで注目したいのが、コンテナネイティブな環境に最適化された統合データ基盤だ。

事例 株式会社AIT

HPSSを用いたデータ管理で、コストとパフォーマンスのバランスを取る方法

データ生成デバイスの進化・多様化により、保存すべきデータ容量は急増した。その管理においては、コストとパフォーマンスのバランスが課題となっている。解決策の1つとして注目される「HPSS」の効果について、導入事例を紹介したい。

事例 株式会社AIT

データ量2.5倍を解決に導きDXが加速、未来を見据えたJA大阪電算の挑戦

業務のデジタル化が進み、データ量やワークロードが増大していた大阪府農協電算センター。それによりインフラの負荷が高まり、性能を向上させることが喫緊の課題になっていた。本資料では同社がどのようにインフラを移行したのか解説する。

製品資料 レノボ・ジャパン合同会社

デジタルツインやIoT化を阻む図面と現状のズレ、3Dスキャンでどう解消する?

老朽化した建築物は、図面と現状が一致しないことが多く、改修や維持管理の問題となっている。工場でも、デジタルツインやIoT化の推進において大きな障壁となる。そこで注目されているのが、点群データを活用した図面化のアプローチだ。

比較資料 レノボ・ジャパン合同会社

ベンチマークとAIで読み解く、SOLIDWORKSに適したシステム環境とは

SOLIDWORKSは多くのユーザーに支持されているが、高機能であるが故に、その実力を十分に発揮させるためには相応のハードウェアが必要だ。そこで、5種類のワークステーションを用意して、SOLIDWORKS 2025のベンチマークテストを実施した。

アイティメディアからのお知らせ

驛「譎冗函�趣スヲ驛「謨鳴€驛「譎「�ス�シ驛「�ァ�ス�ウ驛「譎「�ス�ウ驛「譎「�ソ�ス�趣スヲ驛「譎「�ソ�スPR

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

HDDとSSDを融合させた「SSHD」を無駄にする“駄目な使い方”とは?:「SSHD」と「SSD」の違い【後編】 - TechTargetジャパン サーバ&ストレージ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス驛「譎「�ス�ゥ驛「譎「�ス�ウ驛「�ァ�ス�ュ驛「譎「�ス�ウ驛「�ァ�ス�ー

2025/07/07 UPDATE

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...