AWSは複数のネットワークサービスを提供している。その中から仮想ネットワークの「Amazon Virtual Private Cloud」とロードバランサーの「Elastic Load Balancing」を説明する。
クラウドサービスを利用するときは、安全で信頼性が高いネットワーク接続が必要だ。クラウドサービスのインフラへのアクセスや、クラウドサービス内のリソース間の接続が安全かつ信頼できることが、ワークロード(アプリケーション)を安心して稼働させるための条件となる。全てのワークロードをクラウドサービスで稼働させていても、一部のワークロードをオンプレミスのインフラで維持していても、その点は変わらない。
IT担当者はクラウドベンダーのネットワークサービスを利用して、データの管理・監視やリソース間の通信トラブルの防止、機密データの漏えい防止など、さまざまな機能を実行できる。ユーザー企業がクラウドサービスとオンプレミスのインフラ間で、ネットワーク接続を確立して維持できるようにするために、Amazon Web Services(AWS)はさまざまなネットワークサービスを用意している。前中後編にわたり、AWSが提供する9つのネットワークサービスの用途と特徴を説明する。
「Amazon Virtual Private Cloud」(Amazon VPC)は、AWSのデータセンター内の論理的に分離したセクション内で、開発者がAWSのリソースを起動できる仮想ネットワークを作成する。Amazon VPCを使用すると、異なるサブネット(小規模ネットワーク)で稼働するインスタンス間など、クラウドネットワークのさまざまな構成要素の間で安全な通信が可能になる。
Amazon VPCはネットワーク設定のカスタマイズが可能だ。IPアドレスの使用範囲に加え、通信範囲をAmazon VPCの仮想ネットワーク内部のみに限定した「プライベートサブネット」や、仮想ネットワークの外部とも通信可能な「パブリックサブネット」を使うタイミングなどを開発者が制御できる。開発者やIT管理者のワークロードへのアクセス権限や操作権限を設定するために、セキュリティグループやネットワークアクセスコントロール(NAC)リストを作成することも可能だ。
IT担当者はAmazon VPCを使用して、クラウドサービスで稼働させているアプリケーションをオンプレミスのデータセンターに接続させて、オンプレミスデータセンター内のデータを利用できるようにするといったことが可能だ。
「Elastic Load Balancing」(ELB)は、ワークロードが受け取るデータを、仮想マシンサービス「Amazon EC2」のインスタンス(仮想マシン)やIPアドレス、AWSのデータセンター群である「アベイラビリティーゾーン」など複数の対象に自動的に分散させる。ELBはEC2のインスタンスが正しく動作しているかどうかを監視し、正常なインスタンスにデータをルーティングする。
ELBは「Classic Load Balancer」「Application Load Balancer」「Network Load Balancer」という3種類のロードバランサー機能を提供する。Classic Load BalancerはIPアドレスとポート番号を基に、EC2インスタンス間で負荷分散を実行する。ネットワークの要素を階層別に分類した「OSI参照モデル」の第4層(L4)で機能するロードバランサーだ。ただしHTTP情報を基に負荷分散する第7層(L7)の機能も幾つか備える。
Network Load Balancerは高速かつ低遅延の通信が必要なワークロード向けのロードバランサーだ。このような通信にはTCP(Transmission Control Protocol)やUDP(User Datagram Protocol)、TLS(Transport Layer Security)などのプロトコルを利用した通信がある。Network Load BalancerはL4で機能する。
Application Load BalancerはL7のロードバランサーだ。複数の小規模サービスを組み合わせた「マイクロサービスアーキテクチャ」を採用したアプリケーションや、コンテナを活用したアプリケーションの通信を制御できる。
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