用語と主要サービスを解説
いまさら聞けない「AWS」「Azure」のネットワーク基礎用語
ネットワークの基本に従えば、システムをAWSおよびAzureに移行するのは難しくない。そのために理解しておくべき点を解説する。
オンプレミスのネットワーク構築と保守・運用で苦労した経験のあるネットワーク管理者ならば、再び作業が必要になるパブリッククラウドへの移行作業をためらうのも無理はない。パブリッククラウドのネットワークに習熟するための時間を少し作ることができれば、大半のネットワーク管理者は、クラウド内およびクラウド間のネットワーク運用が、オンプレミスの場合とほとんど同じであることに気付く。
本稿では「Amazon Web Services」(AWS)と「Microsoft Azure」(Azure)の2大クラウドサービス群で使われる重要なネットワーク関連の用語を含め、パブリッククラウドで必要なネットワークの基本知識について説明する。企業がパブリッククラウドを利用する際に必要になるネットワーク構築の基本的な作業についても解説する。
クラウドネットワークを理解する基本用語
まず理解しなければならないのは、IaaS(Infrastructure as a Service)を提供するクラウドベンダーが使用するネットワークの用語だ。最初はその新しい語彙が難解に思えるだろう。だがいったん理解しようとすれば難しいものではない。各クラウドベンダーが、少しずつ異なる用語や表現を用いて、同一のネットワーク機能やサービスを指している点には注意が必要だ。
パブリッククラウド内で、ユーザー企業ごとに論理的に分離したIaaSのリソースを、AWSでは「仮想プライベートクラウド」(VPC)と呼ぶが、Azureではこれを「Virtual Network」(VNet)と呼ぶ。
「VPNゲートウェイ」という用語も、パブリッククラウドの世界では重要だ。VPNゲートウェイは、VPCまたはVNetを下記の環境に接続し、必要なルーティングを実施するために必要になる。
- 同一パブリッククラウド内の異なるセグメント
- ハイブリッドクラウドを構築するプライベートデータセンターのLAN
- マルチクラウド環境における異なるクラウドベンダーが提供するパブリッククラウド
このVPNゲートウェイを理解するには、当然だが「VPN」(仮想プライベートネットワーク)が鍵になる。異なるセグメント間の接続は、通信を暗号化したVPNのトンネルによって構築される。これは接続先が同一クラウド内の異なるセグメントでも、インターネットを経由させたプライベートデータセンターのLANであっても、異なるクラウドベンダーのパブリッククラウドであっても同じだ。
VPNゲートウェイではなく、専用線接続を利用する場合がある。これはパブリッククラウドで特定のアプリケーションやデータを管理、運用する際、サービス品質保証契約(SLA)によってネットワークのレイテンシ(遅延)を低く抑えた接続が必要な場合だ。不特定多数が利用することが前提のインターネットで構築するVPNのトンネルでは、そのSLAを保証できない可能性がある。その場合、VPNゲートウェイではなく専用線による接続が適している。
専用線接続サービスをAWSは「AWS Direct Connect」として、Azureは「Azure ExpressRoute」として提供している。
ネットワークの専門用語というわけではないが、他にも以下のような用語とサービス(それぞれAWS、Azureの順に記載)を知っておくとクラウドネットワークの理解に役立つ。
- ドメインネームシステム(DNS)
- 「Amazon Route 53」「Azure DNS」が該当
- コンテンツ配信ネットワーク(CDN)
- 「Amazon CloudFront」「Content Delivery Network」が該当
- パフォーマンス分析ツール
- 「Amazon CloudWatch」「Azure Monitor」が該当
こうした用語とサービス名を知っておけば、ネットワークの基本的な理解をブラッシュアップするのに役立つ。アプリケーションやサーバの管理者と協力し、パブリッククラウドのインスタンスを構築する際に生かせるだろう。
サードパーティーの選択肢
経験豊富なネットワークエンジニアは、IaaSでネットワークを構成する際の選択肢が、オンプレミスと比較して極めて限定的なことを知って驚くだろう。ネットワーク管理者がIaaSで構成、管理する必要があるのは以下の項目だ。
- IPアドレスの範囲
- VLAN(仮想LAN)
- ルーティングテーブル
- セグメント間のゲートウェイ
- 基本的なファイアウォールルール
- アクセスコントロールリスト(ACL)
より複雑なネットワークを構築する必要がある場合は、ネットワーク構成の選択肢を増やす方法が幾つかある。1つ目は、特定のクラウドベンダー向けにサードパーティーベンダーが提供している仮想アプライアンスを使用することだ。こうした仮想アプライアンスは、クラウドベンダーが提供する基本的なネットワークサービスの代わりとして導入できる。
一例として、標準的なVPNゲートウェイの代わりにCisco Systemsが提供するソフトウェアルーター「Cisco Cloud Services Router 1000V」シリーズを導入する選択肢がある。これによってネットワーク管理者はSD-WANなど、Cisco Systemsが提供する複雑なネットワーク機能をパブリッククラウドで設定できる。こうした特殊な仮想アプライアンスを導入する場合は、そのための費用が掛かることに注意が必要だ。
2つ目の方法は、利用する全てのパブリッククラウドとプライベートクラウドを管理するマルチクラウドの管理ツールを導入することだ。ハイブリッドクラウドまたはマルチクラウドの構成が大規模になるケースで特にこの方法が有効に機能する。こうした管理ツールは、ソフトウェアベースのオーバーレイネットワークを構成し、管理対象とする全ての環境に共通した、ネットワークやセキュリティのポリシーを作成、管理できる。この共通ポリシーを、複数のパブリッククラウドとオンプレミスのLANに対して一元的に適用できる。この場合も、追加の費用が発生することに注意してほしい。
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