無線LAN技術は「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)の登場でまた大きく進化した。特にどの進化に注目すべきなのか。主要な3つの進化を紹介する。
無線LANはインターネットの普及とともに利用が広がり、その技術はさまざまな方向性で急速に進化している。技術進化によって大きく変化してきたのが、データ伝送速度、変調技術、セキュリティ機能だ。
業界団体Wi-Fi Allianceが、無線LANのブランド「Wi-Fi」の第6世代として位置付ける「Wi-Fi 6」(標準化団体IEEEによる名称は「IEEE 802.11ax」)は、無線LAN技術の進化の中でもデータ伝送速度やセキュリティにおいて大きな変化をもたらす技術として期待されている。
無線技術に関する複数の著書を持つアラン・ベンスキー氏は、Wi-Fi 6による変化を知る上では「無線LANの基礎技術を理解することが重要だ」と語る。ベンスキー氏は著書『Short-range Wireless Communication 3rd Edition』の中で、Wi-Fi 6を理解するための無線技術の基礎を解説している。
同書の第11章「Wireless local area networks」において、ベンスキー氏は無線LANのアーキテクチャ、物理層の仕組み、位置情報サービス、技術進化の変遷などについて詳細に解説している。これを基に注目すべき無線LAN技術の変化を以下で紹介する。
無線LANのデータ転送速度は、その登場から2020年現在に至るまでの約20年間で大幅に高速化してきた。これに貢献したのが「MIMO」(Multiple Input Multiple Output)という無線技術だ。MIMOは受信側と送信側の一方または両方で複数のアンテナを使用する。複数のアンテナを利用することで信号を伝達する経路を広げ、データ伝送を高速化するとともに通信の安定性を高める。
Wi-Fi 6はMIMOの進化版である「マルチユーザーMIMO」(MU-MIMO)を採用する。MIMOは一度にデータ伝送できるクライアント端末が1台に限られるが、MU-MIMOは同時に複数のクライアント端末が複数のアンテナを使用してデータを送受信できる。
変調技術は「OFDM」(直交周波数分割多重)によって大きく進化した。OFDMはデータを複数の搬送波(サブキャリア)に分割するとともに、各サブキャリア間の干渉を減らす仕組みによって伝送を効率化する変調技術だ。Wi-Fi 6はOFDMをさらに進化させた「OFDMA」(直交周波数分割多重接続)を採用する。OFDMAは複数のクライアント端末がOFDMの仕組みを利用できるようにしている。
無線LANはその普及と同時にセキュリティの強化が欠かせなくなった。無線LANによるネットワークのセキュリティを確保するため、セキュリティプロトコルの「WPA」(Wi-Fi Protected Access)や「WEP」(Wired Equivalent Privacy)も進化してきた。Wi-Fi 6は通信内容の暗号化とユーザー認証機能の強化のためにWPAの進化版である「WPA3」(Wi-Fi Protected Access 3)を採用している。
データ伝送速度、変調技術、セキュリティ機能の進化は無線LANネットワークに大きな変化をもたらしてきた。ベンスキー氏は著書の中でその関係は今後も続くと予測する。将来的な無線LAN技術の進化においても、データ伝送速度、変調技術、セキュリティ機能における進化が見られることだろう。
IT製品選定に関する記事をご執筆いただく「読者ライター」を募集します。記事を通じて皆さまの経験やノウハウを共有してみませんか? 応募はこちらから↓
https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2009/25/news11.html
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
VPN(仮想プライベートネットワーク)は、セキュリティの観点から見ると、もはや「安全なツール」とは言い切れない。VPNが抱えるリスクと、その代替として注目されるリモートアクセス技術について解説する。
インターネットVPNサービスの市場規模は増加傾向にあるが、パフォーマンスやセキュリティなどの課題が顕在化している。VPNの利用状況などのデータを基にこれらの課題を考察し、次世代インターネットVPNサービスの利点と可能性を探る。
企業だけではなく自治体でもクラウド活用が進んでいる昨今。中でも業務利用が多いMicrosoft 365には、Microsoft Teamsなど高速かつ安定した回線を必要とするサービスがある。それらを快適に利用するにはどうすればよいのか。
代表的なセキュリティツールとして活用されてきたファイアウォールとVPNだが、今では、サイバー攻撃の被害を拡大させる要因となってしまった。その4つの理由を解説するとともに、現状のセキュリティ課題を一掃する方法を解説する。
顧客や従業員のエクスペリエンスを向上させるとともに、インベーションを促進するには「アジリティ」の強化が鍵となる。しかし昨今、組織のネットワークは複雑化が著しく、アジリティの確保すら難しい。そこで求められるのが「簡素化」だ。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...