高速なデータ伝送を実現する無線技術として「Wi-Fi 6」と「5G」がほぼ同時に登場した。無線LANや移動通信システムといった無線技術はこれまでどのように進化し、どのような方向へ向かうのか。識者に聞く。
無線LAN規格「Wi-Fi 6」(標準化団体IEEEの規格名は「IEEE 802.11ax」)と第5世代移動通信システム「5G」は、無線通信技術としての覇権を巡って敵対関係にあるように見える。だが無線通信の未来を左右するのは、Wi-Fi 6と5Gの連携だ。
これまで無線LANと移動通信システムは大きく異なる技術だった。これら2つの技術には、データ伝送速度の向上とセキュリティの強化という共通目標がある。将来的にこれら2つの技術は競い合うのではなく連携する技術になる可能性が高い。
共に無線技術として急速かつ大きな変化を遂げてきた、無線LANと移動通信システム。無線通信に関する著書『Short-range Wireless Communication 3rd Edition』を持つアラン・ベンスキー氏によると、今後は通信技術同士の融合が進み、ユーザーはより多くの技術を統合的に利用できるようになる。
ベンスキー氏は無線技術の進化をどう見ているのか。以下で紹介する。
―― 2000〜2020年の20年間に無線通信はどのように変化したのでしょうか。
ベンスキー氏 無線通信は大きく変わった。2000年頃に「3G」(第3世代移動通信システム)の商用化が実現し、2020年には5Gの時代が幕を開けた。この約20年の間に非常に大きな変化があった。
移動通信システムの変化は、無線LANの技術にも変化をもたらしてきた。無線LANと移動通信システムのデータ伝送速度を比較すると分かりやすい。1999年に標準化が完了した無線LAN規格「IEEE 802.11b」の最大データ伝送速度は11Mbpsだった。無線LAN技術はその後、高速化し、実効速度で数百Mbpsが出るようになった。2000年代には数十Mbps程度だった移動通信システムのデータ伝送速度も高速化が進み、数百Mbpsが出るようになった。理論値では1Gbpsに達する。
2000年頃の移動通信システムは、通信の大半を音声通信が占めていた。だが2020年の現在は、データ伝送速度が高速化したことに合わせて、技術的な専門知識がないユーザーでも動画のストリーミング視聴やWeb会議を日常的に利用するようになった。
―― 無線通信にはどのような未来が待ち受けていますか。
ベンスキー氏 各種通信技術によるネットワークが融合する方向に向かっている。無線LAN規格はもともと特定の通信環境を対象に定義されたものなので、移動通信システムのような長距離通信の特徴は備えていない。
将来的に「ミリ波」(30GHz〜300GHzの周波数帯の電波)の周波数帯では通信技術同士の競争が発生するという意見もある。だが私は、競争よりも融合が進むと予測している。
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