大規模大学が基幹システムを手組みから「SAP S/4HANA」に切り替えた理由コロナ禍の大学ERP導入事例【前編】

4万人以上の教職員を抱えるペンシルベニア州立大学は、基幹システムを手組みからERPパッケージ「SAP S/4HANA」に刷新した。なぜSAP S/4HANAを選んだのか。

2020年09月14日 05時00分 公開
[Jim O'DonnellTechTarget]

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 Pennsylvania State University(ペンシルベニア州立大学)は、手組みの基幹システムの老朽化という問題を抱えていた。システムの現代化(モダナイゼーション)の取り組みの中心に据えることのできる新しいシステムを探していた。2020年7月1日、5年に及んだ調査と導入プロセスを経て、同校はSAPのERP(統合業務)パッケージ「SAP S/4HANA」を活用し、新たな基幹システム「SIMBA」(System for Integrated Management, Budgeting and Accounting)を構築した。

なぜSAP S/4HANAを選んだのか

 フルタイムとパートタイムの教職員数が合わせて4万人以上と、ペンシルベニア州立大学は同州の大学の中でもかなりの規模を誇る。同州ステートカレッジにある本部キャンパスを含む24個のキャンパスを保有し、10万人弱の学生を抱える。同校の金融・ビジネス担当シニアバイスプレジデントのデービッド・グレー氏によると、その大規模な運営を支える基幹システムは老朽化していた。

 ペンシルベニア州立大学が運用していた手組みの基幹システム「IBIS」(Integrated Business Information System)は、1980年代初めに同校がプログラミング言語「COBOL」で開発したものだ。IBISの開発担当者のほとんどは、もう同校にはいなくなっており、メンテナンスは「次第に困難になった」とグレー氏は振り返る。同校はレガシーシステムから脱却する必要があったのだ。

 現代的な、先を見据えたシステムの必要性を考慮して、ペンシルベニア州立大学はSAP S/4HANAを選定した。その決定までには入念に検討を重ねた。グレー氏によると、プロセスの第1段階は2015年に始まり、同校の財務処理全てを綿密に調査するプロジェクトを遂行した。

 グレー氏らは財務処理プロセスを列挙して、ベンダーの財務パッケージにより、それらのプロセスをどう効率化できるのかを考えることから着手した。そこで得た情報を基に、同氏らはプロセスを設計した。「自分たちのニーズを慎重かつ体系的に定義することを徹底し、自分たちのニーズに最も沿う製品・サービスを選定した」と同氏は説明する。

 複数のERPパッケージを検討して3種類に絞り込んだ後、現在と今後のニーズに最も適したシステムとして、SAP S/4HANAを選定した。グレー氏らはSAP S/4HANAについて、同校の定めた14項目の条件のうち、13項目で「優れている」と評価。「調査会計、調達、複数年にわたる予算編成など重要なプロセスを転換させるためにふさわしい」と結論付けた。

セキュリティが決め手に

 刷新において、最も重要な要件はセキュリティだったという。ペンシルベニア州立大学は、米国防総省の大学関連研究センター「UARC」(University Affiliated Research Center)を設置している大学の一つだ。そのことから、基幹システムには非常に高度なセキュリティ対策が必要となる。同校が選定したERPパッケージのうち、その基準を満たすことができたのはSAP S/4HANAだけだった。

 SAP S/4HANAはセキュリティを除く他の機能についても基準を満たし、実質的に全ての重要基準でトップの評価を獲得した。それでも、もしSAP S/4HANAがUARCの条件を満たしていなければ「間違いなく採用できなかった」とグレー氏は振り返る。

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