教員の業務量を減らし、生徒との関係を構築するためにAI技術を活用する取り組みが、英国で進んでいる。具体的にどのような取り組みがあるのか。
人工知能(AI)技術を活用し、教員の業務を減らしながら、教育の質を向上させる――英国の教育機関でそうした取り組みが進んでいる。文章や画像を自動生成するAI技術「生成AI」を活用する教員からは好影響を実感する声も上がっているという。どのような取り組みがあるのか。
DfEの教育大臣、ブリジェット・フィリプソン氏は2025年1月22日、教育技術(EdTech)に関するイベント「The Bett Show」で取り組みを説明した。
DfEの取り組みは、以下の計画に基づくものだ。
フィリプソン氏は、企業や個人が生成AIを日常的に活用している現状を踏まえ、公共部門も適切な活用を進めることが重要だと主張する。同氏は「生成AIを使用している教員の3分の2が好影響を実感している」とも指摘。具体的には以下の取り組みを進めている。
英政府は、教員の採点業務と生徒への振り返り作業を支援するAIツールを導入することを目標に、ソフトウェアベンダー16社に対して100万ポンドの資金を提供した。フィリプソン氏は「AI技術を活用して教員の業務量を減らし、教員の採用と離職防止につなげたい」と述べる。「教員という職業が燃え尽き症候群を経験するような辛いものではなく、喜びを感じられるものとなることを目指している」(同氏)
教育機関が適切なEdTechに投資するための支援も進めている。
特別な背景がある生徒にとって、EdTechの活用は不可欠だとフィリプソン氏は述べる。2025年には、教室内で使用するEdTechに関する教員研修が必須となる。「EdTechの効果的な活用は、生徒の成績向上だけでなく、生徒と信頼関係を築くのにも役立つ」という。
DeFが提供しているデータ分析ツール「View Your Education data」(VYED)を使えば、生徒の欠席データを基に、出席日数不足の対策を検討できる。フィリプソン氏によると、一部の生徒は「クラスの中で疎外感がある」ために登校しないという。生徒が「クラスに対する帰属意識」を持ち、出席率が向上することを同氏は期待する。
教員がAIツールを効果的に使用するには、継続的な支援が必要だ。英国コンピュータ協会(BCS:British Computer Society)が2024年12月に公開した調査レポート「Secondary School Teachers And AI」によると、中学校の教員の19%は「現在もこれからもAIに関心がない」という。調査は2024年4月〜6月、英国の中学校教師5000人を対象に実施した。
BCSの教育・公益部門のマネージングディレクターであるジュリア・アダムソン氏は次のように述べる。「業務の時間短縮や、生徒一人一人に合わせた学習の実現など、AIの可能性を教員は認識している。しかし生徒に不利益がないようにAIが公平に使用されるためには、より充実した教員向けの研修や指導が必要だ」
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