ある調査レポートから、ドイツやオーストリア、スイスといった国では教育現場におけるITのツールや技術の導入が積極的に進んでいる状況が明らかになった。教育現場のIT活用促進には何が必要なのか。
教育現場では“新たなIT”に対する不安感が先行するといった理由から、ツールや技術の活用が進みにくくなることがある。タブレットといった一般的に使われるようになったツールに加えて、テキストや画像を自動生成する人工知能(AI)技術「生成AI」、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの活用が進展するためには何が必要なのか。
教育技術(EdTech)企業GoStudentの調査結果によると、ドイツやオーストリア、スイスが構成する欧州ドイツ語圏DACH(ドイツ、オーストリア、スイスの頭文字)の子どもや保護者は、他の調査対象国における回答者よりも教育現場でのデジタル技術導入に積極的なことが分かった。
GoStudentは年次レポート「Future of Education Report 2024」2024年3月に公開した。このレポートは2023年10〜11月、GoStudentの委託でEdelman Data & Intelligence(広報持ち株会社Daniel J. Edelman Holdings傘下の調査組織)がオンラインで実施した調査に基づいている。オーストリアやドイツ、フランス、スペイン、イタリア、英国の保護者5581人とその10〜16歳の子ども5561人が調査対象となった。
子どもの間では、タブレットなどのツールに親しむことは広がりつつある。一方、より高度な技術やツールについては未知数だ。例えば生成AIの他、VRやARがある。DACHでは新しい技術やツールへの理解が進んでいるようだ。「VRを使った授業は子どもの学習体験を向上させる」という意見に同意した保護者は、フランスで40%、イギリスとスペインで50%だったのに対し、ドイツでは66%、オーストリアでは63%だった。「仮想空間『メタバース』を使えば子どもの学習体験が向上する」という意見に同意した回答者は、オーストリアで67%、イタリアで59%、スペインで53%、フランスで41%、イギリスで49%だった。
「伝統的な学校の考えや取り組みを超越する新しい取り組みについて議論するのであれば、保護者の賛同は重要だ」。オズワルト氏はこう指摘する。GoStudentは子どもを対象に始めた事業だったが、ターゲットを保護者に切り替えた。その背景には、「保護者こそが意思決定者であり、学校や政府により良い教育を求める存在」だという考えがあった。「DACHの保護者がAI技術だけではなく、VRやメタバースにも前向きであることは興味深い」と同氏は語る。
「教育現場において、ITは分かりやすくなじみやすい存在であるべきだ」とオズワルト氏は述べる。「GoStudentの調査以上に、DACHの子どもや保護者は教育現場でのVRやメタバース、AI技術の活用を求めている。GoStudentだけではなく教育現場全体がその声に耳を傾けるべきだ」。同氏はそう語る。
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