急速に利用を広げる「生成AI」ツールは、教育機関に「課題も機会ももたらす」と英国教育省は指摘する。課題を懸念して単に使用禁止にするのは賢い判断ではない。課題に対処し、機会を生かすにはどうすればよいのか。
人工知能(AI)ベンダーOpenAIの「ChatGPT」やGoogleの「Bard」といったAIチャットbotをはじめ、テキストや画像などを自動生成するAI技術「ジェネレーティブAI」(生成AI)を実装したツールが相次いで登場している。教育機関は、こうした生成AIツールとどのように向き合えばよいのか。英国教育省(DfE:Department for Education)の見解は、慎重かつ“大胆”だ。
英国教育省は「授業の手段として大いに役立つ可能性がある」と、生成AIツールに一定の価値があることを認める。その上で同省は、教育機関が生成AIツールを利用する場合には「サイバーセキュリティ体制の確認と強化が必要になる」と指摘。教員に対して、生成AIツールによる影響からの学習者保護に尽力するよう求める。
2023年3月に英国教育省は、教育機関における生成AIツール活用に関する声明を出した。英国議会が同月に公開した、AI規制に関する白書を受けたものだ。同省はこの声明で、生成AIが教育界に「機会も課題ももたらすものだと認識している」と明かした。
英国教育大臣のジリアン・キーガン氏は、教員が授業計画の作成や採点にAI技術を利用するのを日常的に目にしているという。生成AIツールには教員の日常的な校務を変える力があるというのが、キーガン氏の見方だ。「必要以上に教員の時間を使ってしまう仕事を、生成AIツールが大幅に減らす可能性がある」。2023年3月開催の教育ITカンファレンス「Bett」で、同氏はこう語った。
明確なメリットがあるのであれば、教員にとって生成AIツールの活用を前向きに検討する価値はある。ただし教育の質を犠牲にしてでも、生成AIツールを利用するという考えは「絶対に違う」とキーガン氏は断言する。
次回は、教育機関が生成AIツールを活用するに当たって、留意すべき点を紹介する。
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