「出社回帰」を促す企業の動きが目立つものの、テレワークに慣れた従業員がすぐにオフィスに戻ってくるとは限らない。テレワークを推進してきた企業のオフィスに、“ある点”が欠けていることが理由の一つだ。
一部の企業はテレワークからオフィス回帰へと方針を転換しているが、テレワークに慣れた従業員は簡単にはオフィスに戻ってこない。理由の一つは、オフィスに“ある点”が欠けていることだ。テレワークを主体とした働き方が主流になったことでオフィスが変わり、従業員の要望とオフィスの機能が一致しにくくなっている。オフィスには何が必要なのか。
オフィスデザインを専門とするPeldon Roseで戦略部門の責任者を務めるペルドン・メドハーストは、テレワークやハイブリッドワーク(テレワークとオフィス勤務の組み合わせ)の概念が成熟するにつれ、ある変化が目立つようになったと指摘する。従業員同士が協力して働くためのスペースをオフィスに作ることに重点が置かれなくなったことだ。
従業員をオフィスに呼び戻すための取り組みとして、オフィスの「ホテル化」(ホテリフィケーション:Hotelification)に関心が集まっているとメドハースト氏は説明する。ホテル化とは、顧客の満足度を向上させるホテルのようなサービスや施設をオフィスにも取り入れることを意味する。
メドハースト氏によると、オフィスのホテル化では、異なる役割を持つ“3つのゾーン”を作ることになる。同氏はその役割を3つのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)になぞらえて以下のように説明する。
「業務生産性や業績だけではなく、従業員へのさまざまな影響を考慮したオフィス空間をデザインする必要性を感じる経営者が増えている」とメドハースト氏は説明する。例えば考慮する点としては以下がある。
環境面での持続可能性(サステナビリティー)も、オフィスの再設計をする際の考慮事項になる。ただしオフィスインテリアデザイン会社Diamond Business Interiors(Diamond Interiorsの名称で事業展開)でデザイン部門の責任者を務めるレベッカ・ウォーラー氏は、「サステナビリティーの確保にかかる費用や手間を考慮すると、企業にとってサステナビリティーの優先度は下がりがちだ」と指摘する。
サステナビリティーの確保において、ITに何かできることはあるのか。メドハースト氏が挙げるのは、オフィスのエネルギー使用量を最適化するためのセンサーの設置だ。センサーを活用することで、出社率が低い特定のフロアを閉鎖したり、照明や空調をオフにしたりできる。
後編は、サステナブルなオフィスづくりを実現した企業2社の取り組みを紹介する。
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