「クラウドERP」の導入でパンデミック時の事業継続に成功した、米国の中堅・中小企業Safety Management Group。同社はなぜクラウドERPを選び、どのようなメリットを得たのか。
「ERP」(統合業務)製品の機能をクラウドサービスとして利用できる「クラウドERP」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う業務課題の解決に苦慮している中堅・中小企業にとっての、有力な手段になる可能性がある。本稿は、クラウドERPのおかげでパンデミック(世界的大流行)時に大きな成果を得た中堅・中小企業、Safety Management Group(SMG)の事例を紹介する。
オンプレミスのERP製品(以下、オンプレミスERP)導入プロジェクトは、COVID-19のパンデミックによって危機にひんしている。中堅・中小企業をはじめ、そもそもERP製品を保有する余裕がない企業もある。こうした状況を改善する手段となり得るのが、クラウドERPだ。
SMGは米国の企業向けに、米国労働安全衛生局(Occupational Safety and Health Administration:OSHA)の規則に準じた企業安全プログラムのコンサルティングサービスを提供している。同社は2019年10月にAcumaticaのクラウドERPを導入した。AcumaticaのクラウドERPのユーザー企業は、小規模な製造企業やサービス企業だけでなく、消防署などの公共団体もある。
「請求、給与計算、財務報告に使っていた古いシステムは、ばらばらな『パッチワークキルト』のようになっていた」と、SMGの最高財務責任者(CFO)であるレベッカ・オーグル氏は説明する。オーグル氏によるとクラウドERP導入は「成功した」。全米各地のどこからでも時間と経費のレポートを入力できるようになったことが、SMGの従業員から好評だった。
米国インディアナポリスに拠点のあるSMGは、COVID-19のパンデミックで従業員に在宅勤務を命じたときに、クラウドERPの重要性を実感した。「2020年3月16日ごろに自宅勤務を告げられたとき、誰もがすかさずノートPCをかばんに入れて持ち帰った」とオーグル氏は振り返る。SMGはクラウドERPの導入で、在宅勤務などのテレワークへの迅速な切り替えを実現した。「導入前と比べると劇的な変化だ。自分の職責を十分に果たせないことを心配する必要が全くなかった」(同氏)
クラウドERPを導入した中堅・中小企業は「パンデミックの最中やその後も事業を維持できるだろう」と、AcumaticaのCEOであるジョン・ロスキル氏は言う。危機の影響によって倒産する企業はあるだろうが、同社のクラウドERPのユーザー企業は「おおむね事業を継続できている」とロスキル氏は説明する。
コンサルティング会社Denver Tech Advisors(「ERP Advisors Group」の名称で事業展開)の創設者兼管理責任者であるショーン・ウィンドル氏は、クラウドERPによって「一部の企業が危機の最中にも事業継続できたことは確かだ」と語る。同社はERP製品の実装および管理プロジェクトを手掛ける。主に中堅・中小企業が古いERP製品からクラウドERPへ移行する支援をしている。
ERP Advisors Groupの顧客企業の中には、レガシーシステムからInforのクラウドERP「CloudSuite Industrial」への移行を迅速に実施した企業がある。ウィンドル氏によると、この企業は営業担当者の販売活動や購買担当者の資材購入を問題なく継続させて、従業員同士の接触を極力避けて物流を動かすことができた。
AcumaticaやSage Intacctなど、特定業界向けの機能を備えたクラウドERPを提供する中規模のERPベンダーは「パンデミック時に業績を維持できる可能性がある」とウィンドル氏は予測する。一方でSAPやOracleなどの大手ERPベンダーは「ユーザー企業をレガシーのオンプレミスERPからクラウドERPに移行させる取り組みに苦労している可能性がある」と同氏は説明する。
後編はクラウドERP実装におけるパートナー選びの勘所を解説する。
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