今後の「Mac」はIntelのCPUではなく、Apple独自開発の「Appleシリコン」を搭載する。この変更によって、ソフトウェアの利用にどのような影響が生じるのか。
Appleは同社のクライアントデバイス「Mac」の新版に、現在使っているIntelのCPU「Intel Core」シリーズではなく、Armアーキテクチャベースの自社開発CPU「Apple Silicon」(Appleシリコン)を搭載する。2020年6月に開いた開発者向けの年次イベント「Worldwide Developers Conference 2020」で明らかにした。
最高経営責任者(CEO)のティム・クック氏や、ソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのクレイグ・フェデリギ氏を含むAppleの幹部は、AppleシリコンへのCPU変更によって「消費電力が減り、パフォーマンスが向上する」と説明する。同社はAppleシリコンを搭載したMacを2020年内に出荷する見通しで、2022年末までにMacのCPUをAppleシリコンへと完全に移行させる。
業界の専門家によれば、この変更の影響を予想するのはまだ早い。ただしAppleシリコンを搭載したMacで、既存のMac用ソフトウェアや企業向けソフトウェアが利用できるかどうかは、Appleが直面し得る懸念材料になる可能性があると予測する。
調査会社Forrester Researchのバイスプレジデント兼プリンシパルアナリストのフランク・ジレット氏は、Appleシリコンへの切り替えは「短期的には、それほど大きな実用面での影響はない」とみる。問題は、Microsoftをはじめとした企業向けソフトウェアを開発している他のベンダーが、どれだけ早くAppleシリコンで利用可能なソフトウェアを提供できるかだとジレット氏は説明する。
企業は一般的に、システムがトラブルなく稼働できるかどうかを重視する。そのため新しいCPUを組み込んだデバイスがうまく稼働しなければ問題になる。企業がどのデバイスを調達するかを決める際に、CPUの切り替えを検討材料にする可能性はある。
フェデリギ氏によると、Appleの新しいソフトウェア「Rosetta 2」は、自動的に既存のMac用ソフトウェアを変換して、Appleシリコンで利用できるようにする。初代の「Rosetta」は、同社がIBMのCPU「PowerPC」からIntel Coreシリーズに切り替えた際に、同様の用途で使用された。ほとんどの既存Mac用ソフトウェアは、Rosetta 2によって「開発者側で何も変更しなくても、Appleシリコンで利用できるようになる」とフェデリギ氏は説明する。
Microsoftは「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」といった「Microsoft Office」製品群を、Appleシリコン搭載のMacで利用できるようにするための作業に取り組んでいるという。同様にAdobeも、画像編集ソフトウェアの「Adobe Photoshop」や動画編集ソフトウェアの「Adobe Premiere Pro」を含むクリエイター向けサブスクリプションサービス「Adobe Creative Cloud」を進化させ、Appleシリコン搭載のMacで効率的に稼働できるように開発を進めている。
Appleシリコンで既存のMac用ソフトウェアや企業向けソフトウェアが利用できることは、Macを使う企業にとって「極めて重要だ」とジレット氏は指摘する。今回の切り替えによって、IT担当者が確認すべきことが1つ増え、ソフトウェアの利用に問題が生じる可能性があると同氏は言う。
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