ビジネスユーザーの心をくすぐる新機能
マウスが使える新「iPad Pro」は今度こそノートPCの代わりになるか?
トラックパッドやマウスが使える「iPad Pro」の新モデルは、仕事で使うノートPCを置き換える存在になるのか。アナリストの見解をまとめた。
Appleは2020年3月に発表した新モデルの「iPad Pro」で、トラックパッドやマウスを利用可能にし、周辺機器として新しい専用キーボードを用意した。こうした要素はビジネスユーザーにとって魅力的に映るだろう。ただし新しいiPad Proが企業に普及するかどうかは未知数だ。
同時にAppleは、トラックパッドやマウスの利用を可能にしたタブレットOSの最新バージョン「iPadOS 13.4」を提供開始した。2020年5月に発売するiPad Pro専用のバックライトキーボード「Magic Keyboard」の新モデルは、新たにトラックパッドを搭載する。
調査会社Forrester Researchのアナリスト、フランク・ジレット氏は「iPad Proの新モデルは優れた柔軟性をもたらす」と語る。だがジレット氏は、この改良のおかげでiPad Proが企業に幅広く導入されるとは予想していない。「こうした改良は象徴的で重要だが、普及の大きな原動力にはならないだろう」(同氏)
iPad ProはノートPCに近づいたが……
専門家によると、Appleは以前からiPadをプロフェッショナル向け製品に位置付けてきた。「Appleは“エンタープライズ”志向を公然と打ち出すことは決してしないが、ターゲットとしてビジネスユーザーを重視した形で製品を進化させ続けている」と、独立系アナリストのエリック・クライン氏は語る。
「企業役員の多くがAppleファンであったり、Appleデバイスを持ち歩いていたりすることを、Appleは知っている」とクライン氏は指摘。トラックパッドとマウス対応といった仕様が、ビジネスユーザーへの訴求を目的としていることは明らかだと指摘する。「新モデルのiPadはノートPCの代替機にますます近づきつつある。この路線を進まない理由はない」(同氏)
カメラの高度化やプロセッサの性能向上など、新モデルのiPad Proにおける機能強化も「ビジネスユーザーに恩恵をもたらす可能性がある」とクライン氏は語る。高機能なカメラは、今まで以上に快適なWeb会議を実現する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でテレワークの導入が急速に広がる中、Web会議の重要性が高まっている。一方の高速なプロセッサはアプリケーションのスムーズな切り替えを可能にする。「最近ではプロセッサの重要性は薄れているが、人々が高速で応答性の高いマシンを求めることに変わりはない」と同氏は説明する。
調査会社Gartnerの北川 美佳子氏は、iPad Proは新モデルでさらに進化したものの「汎用(はんよう)のノートPCに置き換わることはないだろう」との見方を示す。ジレット氏はトラックパッドやマウスについて「一部のビジネスパーソンは習慣からこの機能を望む可能性がある」と認める。ただし「既にiPadユーザーは、タッチスクリーンで操作するのに慣れている」と同氏は指摘。タブレットユーザーの間では、トラックパッドやマウスの大きな需要はないとみる。
価格に懸念も
iPad Proの進化には代償もある。新しい11型モデル「11インチiPad Pro」は799ドルから(国内価格は8万4800円から、価格は全て税別)で、新しい12.9型モデル「12.9インチiPad Pro」は999ドルから(国内価格は10万4800円から)。Magic Keyboardは11インチiPad Pro向けが299ドル(国内価格は3万1800円)、12.9インチiPad Pro向けが349ドル(国内価格は3万7800円)だ。ジレット氏は「iPad Proの価格は『Windows』搭載ノートPCの良品とほぼ同等以上であり、『MacBook Pro』より大幅に安いわけではない」と語る。
クライン氏は「現在の経済情勢が、企業における当初の導入の足を引っ張る可能性がある」と指摘する。今は、経済と市場の先行きが不透明な状況にある。そのため、近い将来に大きな需要は望めないというのが同氏の見方だ。だがそれは全てのベンダーについて言える。「苦戦を強いられるのはAppleだけではない」(同氏)
今後の進化
AppleはOSとアプリケーションのエコシステム(経済圏)を持っており「既に同社製デバイスを使っているビジネスユーザーを顧客として維持していくだろう」とクライン氏は予想する。「結局のところビジネスユーザーは、自分のニーズに最も合うデバイスを求めるだろう」とジレット氏は指摘。「使い勝手とポータビリティがどのように組み合わされているかが問われることになる」と語る。
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