「コロナ禍でもやることは同じ」と言い切るエネルギー企業のデータ活用術事例で学ぶデータ活用成功の鍵【前編】

データマネジメントやデータ分析を長年続けているエネルギー企業のEmber Resourcesは、新型コロナウイルス感染症流行下においても、特別なことをせずにビジネスを維持できているという。その裏側とは。

2020年09月15日 05時00分 公開
[Joseph M. CarewTechTarget]

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 最善の手法を採用できない企業は後れを取ることになる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を受け、石油やガスといったエネルギー資源を扱うエネルギー企業は、苦難を乗り切るための方法を模索している。その一社であるEmber Resourcesはデータマネジメントをうまく機能させている。

 Ember Resourcesは、長年にわたってデータマネジメントのベストプラクティスを実践し、成果につなげている。2015年から同社でデータおよび情報分野のマネジャーを務めるロニー・チン氏は、パンデミックの影響を受けた不確実な中では「ある程度の一貫性を維持することとコミットメントが最善の方策だ」と語る。「過去25年間ベストプラクティスに変更はなく、現在のパンデミックに際しても何も変わらない。1年や半年ごとにシステムを変更することは困難だ」(チン氏)

 カナダのアルバータ州で、エネルギー資源である炭層ガス(CBM:コールベッドメタン)の坑井(エネルギー資源を採掘するための井戸)を1万2000基以上運営するEmber Resourcesは、約150人の作業員を擁する。これらの坑井の採掘寿命をできるだけ長く保つためには、常時のメンテナンスが欠かせない。

コロナ禍も乗り切るEmber Resourcesのデータ活用術

 Ember ResourcesはMicrosoftのRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)製品「SQL Server」で構築したデータウェアハウス(DWH)に、複数のシステムのデータを集約させている。そのデータをESRI(Environmental Systems Research Institute)のGIS(地理情報システム)製品群「ArcGIS」を通じて視覚化。それらを基に、Microsoftのビジネスインテリジェンスサービス「Power BI」を使用してレポートを生成し、データを分析できるようにしている。取り扱うデータには、坑井にかかるコストや生産量といった数値がある。

 こうした分析は、チン氏のチームが坑井を継続利用するのか、あるいは廃坑にするのかを判断するのに役立つ。予算作成・承認フォームの自動生成など、業務効率化にも活用している。「予測分析や処方的分析が可能になり、重要なワークフローを合理化できた」と同氏は効果を説明する。

 Ember Resourcesは坑井やパイプラインをはじめ、エネルギー資源を市場に提供するためのさまざまな設備を所有する。同社はエネルギー資源の送出に使うコンプレッサー(圧縮機)から収集したデータを分析して、潜在的な障害を予測している。「広範なパイプラインからデータを収集し、同じように分析することも有効だろう」とチン氏は語る。

 パンデミックによってもたらされた不確実性はEmber Resourcesにとって、業務改善を推し進める機会になった。彼らが保有するデータはオンラインで利用できるため、オフィスの代わりに自宅で仕事をする在宅勤務に現実的な選択肢だ。2020年3月にカルガリーのオフィスを閉鎖する決定を下したとき、同社の全従業員は、ビジネスを継続させるために必要な情報とツールを自宅でも利用可能なことを、数日間で確認できた。

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