「5G」の活用を検討する企業が取り得る手段として、5Gのプライベートネットワークの構築・運用がある。その2大手法である「ローカル5G」と「ネットワークスライシング」の違いを整理する。
コンシューマー向けの「5G」(第5世代移動通信システム)商用サービス開始に続き、今後は企業向けの5G市場も広がってくる。企業は5Gを自社のビジネスに取り入れるために、どのような一歩を踏み出すべきか見極める段階に来ている。
5Gを提供する通信事業者は、おおむね2018年後半ごろに5G用のネットワーク構築に本格的に着手した。調査会社Technology Business Research(TBR)でアナリストを務めるクリス・アントリッツ氏によれば、コンシューマー向けに続き企業向けの5Gサービスが2021年に本格的に始動する。5G用のチップセットやデバイスが出そろい、企業の5G導入が加速する。
「企業向け5Gは、チップセットの開発やネットワークインフラの構築、ビジネスモデルの開発においてコンシューマー市場より1年ほど遅れている」とアントリッツ氏は言う。企業が5Gを導入するに当たっては投資対効果を見極めたり、ネットワークインフラの再構築を検討したりする必要がある。今こそ導入に向けて本格的な検討を開始すべき時期だ。
どのような方法で5Gを導入できるのか――これが企業の5G導入にとっては重要になる。どの導入方法が適するかは、大企業や中堅・中小企業(SMB)など、企業規模によっても異なる。
1つ目の選択肢は、無線局の開設や運用の免許を自社で取得して、5G用のネットワークインフラを独自に構築・運用する「ローカル5G」だ。2つ目の選択肢として、通信事業者の物理的なネットワークを論理的に区分してプライベートネットワークとして利用する「ネットワークスライシング」もある。どちらが適するかは、信頼性、技術の成熟度、コストなどに左右される。
5Gは無線通信技術としては相当のイノベーション(技術革新)を遂げているものの未成熟で、コストが高くつく可能性が否定できない。「工場オートメーションのためにローカル5Gを導入して工場を改修する場合、何億ドルもの初期投資が必要になることもある」とアントリッツ氏は語る。それを考慮すると現状でローカル5Gを導入する企業は、高額投資の余裕があり、5G用のネットワークインフラを自前で構築・運用できるリソースを持つ大企業に限られる。
アントリッツ氏によると、航空機製造のAirbus、自動車製造のFord Motor、農業機械ブランド「John Deere」を展開するDeere & Company、家電製造のWhirlpoolといった大企業が、5Gのプライベートネットワーク構築に着手しているか、または構築を計画中だ。こうした企業は製造工程のオートメーションによる事業変革とコスト削減を目指している。TBRの予想では2030年までに1000組織以上の企業や政府機関が、5Gのプライベートネットワークの導入に踏み切る見通しだ。TBRはSMBが5G導入を本格化させるのは、導入コストが下がり、技術が成熟する頃になると見込んでいる。
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